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太華生長松,
亭亭凌霜雪。
天與百尺高,
豈爲微飆折。
桃李賣陽艷,
路人行且迷。
春光掃地盡,
碧葉成黄泥。
願君學長松,
慎勿作桃李。
受屈不改心,
然後知君子。
韋侍御黄裳に贈る
太華に 長松 生じ,
亭亭として 霜雪を 凌(しの)ぐ。
天 百尺(ひゃくせき)の高さを 與ふるも,
豈(あ)に 微飆(びべう)の爲に 折れんや。
桃李 陽艷を 賣り,
路人 行きて 且(まさ)に 迷はんとす。
春光 地を 掃(は)き 盡(つ)くさば,
碧葉 黄泥と 成る。
願はくは 君 長松に學びて,
慎(つつし)みて 桃李と 作(な)る勿(なか)れ。
屈を 受くれども 心を 改めず,
然(しか)る後に 君子なるを知る。
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◎ 私感註釈
※李白:盛唐の詩人。
※贈韋侍御黄裳:この作品は、韋黄裳が昇州刺史から蘇州刺史・浙西節度使となって行く時に、李白が贈ったものか。何故だか分からないが、韋黄裳は落ち込んでいたのだろうか、とても激励している。『舊唐書・本紀・肅宗』に「甲辰,以昇州刺史韋黄裳爲蘇州刺史、浙西節度使。」 ・韋侍御黄裳:韋は姓、侍御は官職、黄裳は名。 ・侍御:天子の側に仕える官。
※太華生長松:華山には高い松が生え。 ・太華:〔たいくゎ;tai4hua4●●〕華山。五岳の一。陝西省華県の西、渭南県の東、長安と洛陽の間に聳(そび)える高峰。大華山。西岳。「華」は五岳の華山の意では〔hua4●〕、普通、広く〔hua2○〕。 ・生:生(は)えている。 ・長松:〔ちゃうしょう;chang2song1○○〕老松。大きくなった松。現代語ではハイマツの一種。「長」は「大きくなる」の意では〔zhang34●〕、形容詞「長い」の意では〔chang2○〕。『論語』子罕篇の「歳寒,然後知松柏之後凋也。」での困難な環境にも耐え得、不屈の気節を表す松を謂う。
※亭亭凌霜雪:高く聳(そび)え立って、霜や雪をしのいでいる。 ・亭亭:〔ていてい;ting2ting2○○〕高く聳(そび)え立つさま。また、遠く遥かなさま。ここでは、前者の意。 ・凌:〔りょう;ling2○〕おしのける。しのぐ。 ・霜雪:霜と雪。霜や雪。厳しく困難な環境の譬喩。
※天與百尺高:天が百尺もの高さを与えたが。 ・天:天(が)。造物主(が)。神(が)。生まれながら(に)。 ・與:与える。 ・百尺:〔ひゃくせき;bai3chi3●●〕とても高い表現。25〜30メートル程の高さ。
※豈爲微飆折:どうして微風で折れようか。 ・豈爲:どうして…のこととなろうか。 ・微飆:微風。 ・飆:〔へう;biao1○〕風。つむじ風。ここでは、前者の意。 ・折:おれる。
※桃李賣陽艷:モモやスモモは、わべが艶(あで)やかであることをひけらかして。 ・桃李:モモとスモモ。モモやスモモ。 ・賣:宣伝する。売り物にする。ひけらかす。得意になる。 ・陽艷:〔やうえん;yang2yan4○●〕うわべが艶(あで)やかである。派手やかである。
※路人行且迷:道行く人をしばしば迷わそうとする。 ・路人:道行く人。往来する人。行人。赤の他人。 ・行:行く。 ・且:しようとする。まさに…んとす。同時進行を表す。かつ。短時間を表す。しばし。ここでは、最前者の意。 ・迷:道に迷う。
※春光掃地盡:春の気節が、地を払ってすっかりなくなった時。 ・春光:春の景色。春の風光。暖かい春の日ざし。 ・掃地:すっかりなくなる。地を払う。また、地面を掃(は)く。ここでは、前者の意。 ・盡:しつくす。すっかり。
※碧葉成黄泥:緑色の(美しくみずみずしい)葉は、(落ちて)大地の黄色い泥となる。 ・碧葉:〔へきえふ;bi4ye4●●〕緑色の(美しくみずみずしい)葉。 ・成:…となる。ここでは、葉が散って、腐葉土となること。 ・黄泥:大地の黄色い泥。
※願君學長松:願わくは、あなたは高い松に学んでほしい。 ・願君:あなたにお願いするが、(あなたは)…。 ・學:みならう。まなぶ。
※慎勿作桃李:どうかモモやスモモのようには、ならないでほしい。 ・慎勿:どうか…しないようにしていただきたい。慎んで……なかれ。 ・作:(…と)なる。 ・桃李:ここでは、陽艷で浮華の物として使われている。
※受屈不改心:いじめられることがあっても、心を変えないことだ。 ・受屈:いじめられる。虐待を受ける。屈辱を受ける。無実の罪を冤(こうむ)る。 ・不改心:心を変えない。
※然後知君子:(そういう試煉を経て)しかる後に、あなたが君子であるという値打ちが分かるのだ。 *「受屈不改心,然後知君子」前出『論語』子罕篇の「歳寒,然後知松柏之後凋也」。 ・然後:そうした後。 ・知:わかる。 ・君子:立派な人士。
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◎ 構成について
韻式は、「aaBBbb」。填詞に似た換韻のしかたである。韻脚は「雪折 迷泥 李子」で、平水韻入声九屑、上平八齊、上声四紙。この作品の平仄は次の通り。
●●○◎○,
○○○○●。(韻)
○◎●●○,
●●○○●。(韻)
○●●○●,
●○○●○。(韻)
○○●●●,
●●○○○。(韻)
●○●◎○,
●●●○●。(韻)
●●●●○,
○●○○●。(韻)
2005.7. 3 7. 5 7. 6 7. 7完 2013.7.31補 |
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