******
一樹寒梅白玉條,
迥臨林村傍谿橋。
不知近水花先發,
疑是經冬雪未銷。
早梅
一樹の寒梅 白玉の條(えだ),
迥(はる)かに臨む 林村 谿橋に傍すを。
水に近きところ 花 先きに發(ひら)くを 知らざれば,
疑ふらくは是(こ)れ 冬を經て 雪 未だ 銷(き)えざるかと。
*****************
◎ 私感註釈
※張謂:中唐の詩人。721年(開元九年)〜780年(建中元年?)。字は正言。河内(現・河南省沁陽県)の人。天宝年間の進士。
※早梅:寒中に咲く梅。寒梅。この作品は、戎cのものともする。その場合詩句は「一樹寒梅白玉條,迥臨村路傍溪橋。應縁近水花先發,疑是經春雪未銷。」ともする。
※一樹寒梅白玉條:一本の寒中に咲く梅の花の白い玉(ぎょく)を着けたような枝ぶり(が)。 ・一樹:一本の木。とある木。また、木いっぱいに。 ・寒梅:寒中に咲く梅。詩題の『早梅』に同じ。 ・白玉:白色の美しい玉(ぎょく)。 ・條:枝。分れ出た枝。
※迥臨林村傍谿橋:(白玉のような梅が)遥か遠くに、谷川の橋の傍(そば)に見えている。 ・迥臨:〔けいりん;jiong3lin2●○〕遠く…に臨み。 ・迥:〔けい;jiong3●〕遥か。遠い。 ・林村:木や竹が叢がり生えている人里。 ・傍:かたわらに。そばに。 ・谿橋:〔けいけう;xi1qiao2○○〕谷川の橋。 ・谿:〔けい;xi1○〕谷川。=渓(溪)。
※不知近水花先發:流れに近いところの花から先んじて咲くということを知らなかったら。 ・不知(…と)分からない。 ・近水:流れに近いところ。 ・花:梅の花。 ・先發:先んじて咲く。 ・發:花が咲く。
※疑是經冬雪未銷:疑うことには、冬が過ぎても、雪が未だ消えないで残っているのかと(思ってしまう)。 ・未銷:まだ溶けない。 ・疑是:疑うには。疑うことには。疑はしいことには。本来は、動詞、形容詞。 ・是:名詞(句)の後に附く。それ故、「疑是經冬雪未銷」は、「『疑』ふことには『經冬雪未銷』である」になり、「疑」の部分の読みは名詞化して、伝統的に「『疑ふ』らく」としている。漢語語法に合致した正確な読みである。李白の『靜夜思』「床前明月光,疑是地上霜。舉頭望明月,低頭思故ク。」 (明・李攀龍の『唐詩選』では、「牀前看月光,疑是地上霜。舉頭望山月,低頭思故ク。」)や、李白の『望廬山瀑布』「日照香爐生紫煙,遙看瀑布挂前川。飛流直下三千尺,疑是銀河落九天。」に使われている。 ・經冬:冬が過ぎる。 ・未銷:まだ溶けない。 ・銷:消える。≒「消」。
***********
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「條橋銷」で、平水韻下平二蕭。なお、「秩vは韻脚ではない(上声)。次の平仄はこの作品のもの。第二句の平仄があまりにも…先秦漢魏詩ではあるまいに、と思う場合は、伝・戎cの「迥臨村路傍溪橋」と見る。すると「●○○●○○○」となり、解決する。
●●○○●●○,(韻)
●○○○○○○。(韻)
●○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2005.12.17 12.18 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |
メール |
トップ |