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日照香爐生紫煙,
遙看瀑布挂前川。
飛流直下三千尺,
疑是銀河落九天。
廬山の瀑布を望む
日は 香爐を 照らし 紫煙 生ず,
遙かに看る 瀑布の 前川に 挂くるを。
飛流 直下 三千尺,
疑ふらくは 是れ 銀河の 九天より 落つるかと。
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◎ 私感註釈
※李白:盛唐の詩人。詩仙と称される。
※望廬山瀑布:廬山の瀑布を望む。これはその二首の中の第二首になる。 ・廬山:江西省九江の南にある。香炉峰はそこの北西に位置している。 ・瀑布:滝白布を垂れたような、幅のある滝。蛇足だが、日本で使われる「滝」「瀧」は、急流の意。「たき」は「瀑」「瀑布」になる。
『聯珠詩格』巻九より 『歴代絶句類選』二
卷之二第一葉
天明六年
※日照香爐生紫煙:太陽の光が香炉峰を照らして、紫色がかった雲煙が湧き起こり。 ・日照:太陽の光が…を照らす。この詩句に基づいてか、現在、盧山東北部に日照峰がある。 ・香爐:香炉峰のこと。廬山の北西部の峰。また、香を焚く、香炉のこともかけて謂っている。かけことば。 ・生:うまれてくる。(雲煙が)湧き起こる。また、(香炉から香煙が)立ち上る。 ・紫煙:紫色がかった、もや。山から立ち上る、薄紫の雲、ガス、水蒸気。また、香炉から立ち上る香煙のことでもある。かけ詞。日光が当たったから薄紫に輝いて見えるのか、超俗的な雰囲気を出すために使ったものか、その両者か。
※遙看瀑布挂前川:遥か眺めやると、前方にある川に、滝が掛かっている(かのようである)。ここは今まで「遙かに看る 瀑布の 前川を 挂くるを。」と訓み、「遥か眺めやると、滝は、前の川を掛かけている(かのようである)。」ととる。 ・遙看:遥か(遠方を)眺めると。この句で、作者は、初め遠方からの叙景であるということが分かる。 ・瀑布:滝。白布を垂れたような、幅のある滝。 ・挂:かかる。滝の水が落ちるさまをこう表現している。対応する日本語の文語「かく」は、他動詞形のみ。 ・前川:前の方に見える川。その前方にある川。日本では、『聯珠詩格』で見るように(写真:右)この句は「遙看瀑布挂長川」の方が流布されている。その場合は「遙かに看る 瀑布の 長川を 挂くるを。」で「遥か眺めやると、滝は、(恰も)長い川を掛かけている(かのようである)。」ととれる。勿論、「遥か眺めやると、長い川に、滝が掛かっている(かのようである)。」ともとれる。何如。
※飛流直下三千尺:飛ぶような滝の流れが真っ直ぐに、三千尺 おちてきて。 ・飛流:飛ぶような滝の流れ。名詞。飛泉。 ・直下:真っ直ぐにおちる。まっすぐに、下りてきて。動詞。読み下しは、日本語の語調と伝統の読みを尊重してこうしたが、ここは動詞で『聯珠詩格』(写真:右)のように「直(ち)に下る」とするのが語法上相応しい。 ・三千尺:厖大な長さの表現。ただし、「三千尺」のところは○○●となるべきところで、○○に該る数詞は「三」と「千」しかない(「一」「二」「四」「五」…「百」などは●)ので、自ずと「三千」という表現になっただけで、数値に特段の意味はない。「三千」は〔さん ぜん〕〔san1 qian1〕と畳韻に近い語調の美しさがあり、多用される。盛唐・李白の『秋浦歌』に「白髮三千丈,縁愁似箇長。不知明鏡裏,何處得秋霜。」とあり、中唐・白居易の『夢亡友劉太白同遊彰敬寺』に「三千里外臥江州,十五年前哭老劉。昨夜夢中彰敬寺,死生魂魄暫同遊。」とある。
※疑是銀河落九天:まるで、銀河が天から落ちてきたのかと疑った。 ・疑是:疑うことには。まるで…かと疑う。「疑是〔山陰夜中雪〕」「疑是〔武陵春碧流〕」「疑是+〔……〕」という具合に、「疑是」の後に見紛うものをもってくる。 ・銀河:天の川。 ・九天:天の最も高いところ。おおぞら。九霄。九重天。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「煙川天」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○○●○,(韻)。
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2003. 8. 2 8. 3完 10. 4補 2009. 4. 1 2011.11. 2画歴代 12.18 |
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