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      代鄰叟言懷
              
                  白居易 
人生何事心無定,
宿昔如今意不同。
宿昔愁身不得老,
如今恨作白頭翁。



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 鄰叟(りんそう)に 代りて 懷(くゎい)を 言ふ       

人生 何事ぞ  心 定まる 無き,
宿昔
(しゅくせき) 如今(じょこん)  意 同じからず。
宿昔  身の 老ゆるを 得ざるを 愁へ,
如今  白頭翁
(はくとうをう)と 作(な)るを 恨む。

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◎ 私感註釈

※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。

※代鄰叟言懷:となりの老人に代わって思いを述べる。 ・代:代理をする。肩代わりをする。後出・劉希夷に『
悲白頭翁』がある。 ・鄰叟:となりの家の(男の)老人。 ・叟:〔そう;sou3●〕老人の尊称。後出「白頭翁」の「翁」〔をう;weng1○〕と同義。 ・言懷:思いを述べる。感懐を言葉に出して言う。

※人生何事心無定:人が生きていくのには、どうして(このように)心が定まることなく揺れ動くのだろうか。 ・人生:人が生きていく。人が生まれてからというもの。人の生。 ・何事:どうして。なにゆえ。何事(なにごと)。 ・無定:定まらない。揺れ動くことをいう。陶潜の『飮酒二十首』其一に「衰榮無定在,彼此更共之。邵生瓜田中,寧似東陵時。寒暑有代謝,人道毎如茲。達人解其會,逝將不復疑。忽與一觴酒,日夕歡相持。」とある。

※宿昔如今意不同:昔と今とは、その(揺れ動く心の)意味するところは、同じではない。 ・宿昔:昔。昔から今までの間。ここでは、若い時代を指している。 ・如今:今。ただ今。現在。ここでは、歳を取ってしまった現在のことをいう。 ・意:意味。そのこころ。 ・不同:同じではない。違う。

※宿昔愁身不得老:昔は、(まだ若造で、自分の風貌、外観、態度といった)肉体的条件が老成していないことを悲しく思い。 ・愁:悲しく思う。愁える。 ・身:肉体。 ・不得:…を手に入れられない。…られない。 ・老:老い。老成。蛇足になるが、漢語(中国語)での「老」は屡々好い意味で使われる。

※如今恨作白頭翁:今は、(反対に)白髪の老人となったことを怨めしく思う。 ・恨:怨めしく思う。 ・作:…となる。 ・白頭翁:白髪の(男の)老人。唐の劉希夷『
白頭』「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,清歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫~仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」は、『代悲白頭翁』ともいう。曾ての紅顔の美少年でもある。






◎ 構成について

 韻式は「AA」。韻脚は「同翁」で、平水韻上平一東。次の平仄はこの作品のもの。

○○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
●●○○●●●,
○○●●●○○。(韻)

2006.3.23
     3.24
     3.25

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