花枝缺處青樓開,
艶歌一曲酒一杯。
美人勸我急行樂,
自古朱顏不再來。
君不見外州客,長安道。
一回來,一回老。
******
長安道
花枝 缺くる處 青樓 開き,
艶歌 一曲 酒 一杯。
美人 我に勸む 行樂を 急にせよ,
古(いにしへ)自(よ)り 朱顏 再びとは來らず。
君 見ずや 外州の客,
長安の道。
一回 來(きた)り,
一回 老(お)ゆ。
◎ 私感註釈 *****************
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。晩年仏教に帰依する。
※長安道:楽府。吹曲辭の名の一。長安の道。「長安の繁華街の道辺」の意。儲光羲にも『長安道』「鳴鞭過酒肆,服遊倡門。百萬一時盡,含情無片言。」がある。「長安の街路(の遊郭のあるところ)」の意で使われている。楽府『長安道』では、白居易のここの作品のように長短句。填詞ではない。「長安道(ちゃうあんだう)」という地名ではない。現代の北京には中心を東西に走る道を「長安街(Chang2an1-jie1)」というのがあるが…。
※花枝缺處青樓開:(並木の)花の缺けているところに妓楼がある。 ・花枝:花が咲いている木の枝。花朶。 ・缺處:缺けているところ。 ・青樓:妓楼。妓女、遊女を置いて客に遊興させる店。
※艶歌一曲酒一杯:なまめかしい歌声が流れて、酒宴が始まった。なまめかしい歌が一曲(流れて)、酒は一杯(を乾す)。 ・艶歌:なまめかしい歌。
※美人勸我急行樂:美しい女性は、わたしに(人生は楽しめる時に)さっさと楽しんでおきなさいな、と勧(すす)めてくる。 ・美人:ここでは美しい女性のこと、妓女、遊女をいう。 ・勸我:わたしに(…と)勧(すす)める。 ・急:いそぐ。動詞。 ・行樂:楽しむこと。遊びの楽しみ。
※自古朱顏不再來:昔より(例外なく)、若い時は二度とはやって来ないものだ。若い時は一度きりであると決まっている。 ・自古:昔から。いにしえより。 ・朱顏:年齢の若い時代を謂う。若者。紅顔。 ・不再來:二度とは来ない。 ・不再…:二度とは…ない。一度きりの意。
※君不見外州客:ご覧なさい、外地からやってきた(長安の街頭の)旅人(の姿形を)。 ・君不見:あなた、ご覧なさい。詩をみている人(聞いている人)に対する呼びかけ。樂府体に使われる。「君不見」「君不聞」がある。使用法は、七言が主となる詩では「君不見□□□□□□□」とする場合が多いものの、「君不見…」の後(青字部分)は必ずしも一定でない。岑参『胡笳歌送顏真卿使赴河隴』「君不聞胡笳聲最悲,紫髯濠瘡モ人吹。吹之一曲猶未了,愁殺樓蘭征戍兒。」 顧況「君不見古來燒水銀,變作北山上塵。藕絲挂身在虚空,欲落不落愁殺人。」、李白の『將進酒』「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復迴。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金樽空對月。」、杜甫の『兵車行』「君不見青海頭,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾。」、白居易『新豐折臂翁』「君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」など。などがある。 ・外州客:地方から上ってくる旅人。外来の人。 ・外州:地方。外地。 ・客:旅客。旅人。よそ者。人。
※長安道:長安の街路。
※一回來,一回老:(地方から定期的にのぼってくる馴染みのお客さんは)一回来るたびごとに、一回ずつ老(ふ)けてしまっている(ではないか)。時というものは、片時も停まることなく、過ぎていくものなのだ。 ・一回:一度。ここでは「一度(来る)たび毎に」の意。 ・老:ふける。老いる。
◎ 構成について
韻式は「AAAbb」。韻脚は「開杯來 道老」で、平水韻上平十灰、上声十九皓。次の平仄はこの作品のもの。
○○●●○○○,(A韻)
●○●●●●○。(A韻)
●○●●●○●,
●●○○●●○。(A韻)
○●●●○●,○○●。(b韻)
●○○,●○●。(b韻)
2006.3.27 3.28 3.29 |
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