對酒不覺暝,
落花盈我衣。
醉起歩溪月,
鳥還人亦稀。
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自ら遣る
酒に對して 暝(ひく)るるを 覺えず,
落花 我が衣に 盈(み)つ。
醉(ゑひ)より起きて 溪月(けいげつ)に 歩めば,
鳥 還(かへ)り 人も亦た 稀(まれ)なり。
◎ 私感註釈 *****************
※李白:701年(嗣聖十八年)〜762年(寶應元年)。盛唐の詩人。字は太白。自ら青蓮居士と号する。世に詩仙と称される。西域・隴西の成紀の人で、四川で育つ。若くして諸国を漫遊し、後に出仕して、翰林供奉となるが高力士の讒言に遭い、退けられる安史の乱では苦労をし、後、永王が謀亂を起こしたのに際し、幕僚となっていたため、罪を得て夜郎にながされたが、やがて赦された。
※自遣:みずから 憂さを晴らす。みずからを慰める。みずからやる。のどかな詩である。しかし、詩題から考えれば、以下のようにもとれる:情況は「不覺」であり、「暝」であり、作者に向かってくるものは「落(花)」で、それのみが作者に「盈」ちてくる。周りは「鳥還」であり、作者を訪ねてくる「人」も、鳥が還ってしまったのと同様に人も亦、「稀」になっている、という心象風景である。 ・遣:〔けん;qian3●〕うさをはらす。はらす。
※對酒不覺暝:酒に向かっていたら、日の暮れるのに気づかなかった。 ・對酒:酒に向かう。 ・不覺:悟らない。気づかなかい。思わなかった。分からなかった。いつの間にか。 ・暝:〔めい(べい);ming4●〕暮れる。日が暮れる。なお、〔めい;ming2○〕では、暗い、幽(かす)かの意。詩の構成からいっても、ここは当然「●」となるところで、その意も「日が暮れる」。白居易の用法は正確であるが、注意を要するのは現代語では〔ming2〕となっていることである。
※落花盈我衣:散ってくる花の花びらが、わたしの衣服にみちていた。 ・落花:散ってくる花。花びらの意になる。 ・盈:〔えい;ying2○〕(次第に多くなって)みちる。(だんだん)みちてくる。みたす。 ・我衣:わたしの衣服。作者・李白の衣服になる。
※醉起歩溪月:酔いから醒めて、月明かりの谷川を散策すれば。 ・醉起:酔いから醒める。 ・-起:…から立ち直る。例えば「病起」は、病気から立ち直る、病気が治(なお)る、の意になる。 ・歩:散歩をする。あゆむ。「踏月」の「踏」でもある。月影を踏む。月明かりの中を散歩する。 ・溪月:〔けいげつ;xi1yue4○●〕谷川に出た月。月明かりの谷川。
※鳥還人亦稀:鳥は、ねぐらに帰り、人影も、稀(まれ)になっている。 ・還:かえる。でかけていったところからもどる。 ・亦:…もまた。「鳥がねぐらに帰って、あたりが静かになる」ということに「人がだれも往来しなくなって静かである」を付け加えて言う。「鳥還」と「人稀」を繋ぐ時にリズムを整えるためにも「亦」を使う。 ・稀:〔き;xi1○〕まれ。まれである。
◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「衣稀」で、平水韻上平四支。平仄はこの作品のもの。
●●●●○,
●○○●○。(韻)
●●●○●,
●○○●○。(韻)
2006.6.18 6.19 |
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