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      渭上題三首之三 
              
                  温庭 
煙水何曾息世機,
暫時相向亦依依。
所嗟白首磻谿叟,
一下漁舟更不歸。



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渭上の題    
煙水 何ぞ 曾(かつ)て  世機を 息めん,
暫時 相
(あ)ひ向ひて  亦(ま)た 依依たり。
嗟く所は 白首 磻谿
(はんけい)の叟,
一たび 漁舟を 下りて  更に 歸らざるを。

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◎ 私感註釈

※温庭:晩唐の詩人。元和七年(812年)〜咸通十三年(872年)。音楽に詳しく、艶麗優美な詩詞を作る。本名は岐。字は飛卿。太原の人。李商隠と共に「温李」と称される。

※渭上題:渭水の畔での詩作。これは三首連作のその三。

※煙水何曾息世機:水面にたちこめた靄(もや)は、今までずっと世の中との交渉を止めさせたということはない。 ・煙水:靄(もや)のたちこめた水面。広い水面が煙ったように波立っているさま。≒煙波。「煙波」としないのは、「煙水」(○●)は詩句の「●●」とすべきところで使うものであり、「煙波」(○○)は詩句の「○○」とすべきところで使うものであるため。当然ながら、平仄のみならず語調上でもこうするのが相応しいと作者が判断したためである。この連作『渭上題』のその一では「呂公榮達子陵歸,萬古
煙波遶釣磯。」と「煙波」としているが、そこは「○○」すべきところなので、適切な配置になる。 ・何曾:どうして…(った)ろうか。どうして…であろうか。今までずっと…したことはない。 ・息:やすむ。いこう。 ・世機:世の中との交渉。

※暫時相向亦依依:しばらくの間、向かっていても、やはりまたぼんやり立ち籠めてくる。 ・暫時:〔ざんじ;zhan4shi2●○〕しばらく。しばし。少時。 ・相向:(対象に)に向かう。 ・亦:…もまた。やはり。 ・依依:〔いい;yi1yi1○○〕遠くてぼんやりしているさま。恋い慕うさま。離れるに忍びないさま。ほのかなさま。枝のしなやかなさま。

※所嗟白首谿叟:なげかわしいことは、(あの)白髪(しらが)頭の谿で釣りをしていた太公望呂尚だ。 ・所嗟:なげかわしいこと。なげくところ。 ・所-:動詞の前に附き、動詞を名詞化する。 ・嗟:〔さ、しゃ;jie1(jue1)○〕なげく。動詞。 ・白首:白髪(しらが)頭。 ・磻谿叟:(谿の畔に住んでいた)太公望呂尚を指す。呂尚は渭水の畔で釣りをしていて、文王に見出されてその師となり、文王、武王をたすけて殷を滅ぼした。周(西周)政治家。周の祖「太公(文王の父)が待ち望んでいた(賢者)」という意味で、太公望と呼ばれる。武王を佐(たす)けて、殷の紂王を滅ぼし、功によって斉(現:山東省の一部)に封ぜられた。 ・磻谿:〔はんけい;Pan2xi1○○〕陝西省寶鷄県南東を流れて渭水に注ぐ川。太公望呂尚が釣りをしていた所。『史記・齊太公世家』に「呂尚蓋嘗窮困,年老矣,以漁釣奸周西伯。西伯將出獵,卜之,曰『所獲非龍非彲,非虎非羆;所獲霸王之輔』。於是周西伯獵,果遇太公於渭之陽,與語大説,曰:『自吾先君太公曰『當有聖人適周,周以興』。子真是邪?吾太公望子久矣。』故號之曰『太公望』,載與倶歸,立爲師。」とある。

※一下漁舟更不歸:ひとたび釣り舟を下りて(半隠士の漁父であることを捨てて、栄達の道を歩み去り)戻ってこない。 ・一:ひとたび。 ・下:おりる。 ・漁舟:釣り舟。ここでは、太公望といわれた呂尚のことになる。なお、漁父や樵は、隠士に準ずる位置にある。唐・孟浩然の『望洞庭湖贈張丞相』に「八月湖水平,涵虚混太C。氣蒸雲夢澤,波撼岳陽城。欲濟無舟楫,端居恥聖明。坐觀垂釣者,徒有羨魚情。」と詠われる。 ・更:さらに。その上に。 ・不歸:戻ってこない。





◎ 構成について

 韻式は「AAA」。韻脚は「機依歸」で、平水韻上平五微。平仄はこの作品のもの。

○●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2006.11.5
     11.6
     11.7
     11.8

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