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      滁州西澗 

                 韋應物

獨憐幽草澗邊生,
上有黄鸝深樹鳴。
春潮帶雨晩來急,
野渡無人舟自橫。


******


滁州(ちょしう)の西澗(せいかん)
                       
(ひと)り憐(あはれ)む  幽草(いうさう) 澗邊(かんへん)に 生じ,
上に 黄鸝
(くゎうり)の  深樹に 鳴く 有るを。
春潮 雨を帶びて  晩來 急に,
野渡
(やと) 人 無くして  舟 自ら 橫たふ。

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◎ 私感註釈

韋應物:中唐の詩人。737年(開元二十五年)~804年頃(貞元年間)。謝霊運、陶淵明の伝統を継ぐ自然派詩
人。京兆万年(現・西安)の人。

※滁
州西澗:滁州(ちょしゅうの)西側の谷川。 ・滁州:〔ちょしう;Chu2zhou1○○〕現・安徽省の滁市。安徽省の南京よりの隅のところで南京の西北郊にある。唐淮南東道(現・安徽省滁県)『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)54ページ「淮南道」にある。南京の西北50キロメートルのところにある。 ・西澗:西側の谷川。滁州城の西にある俗称、上馬河といわれるが、詳しいことは不明。 ・澗:〔かん;jian4●〕たに。たにみず。
 
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獨憐幽草澗邊生:(わたしは)奥深い谷間の草が渓流の岸辺に生じて、(……ているのをこよなく愛しており)。 ・獨憐:ひとり愛している。「獨憐」は、「幽草澗邊生,上有黄鸝深樹鳴」の両方にかかっている。 ・憐:〔れん;lian2○〕心がひかれる。いつくしむ。めでる。たのしむ。また、あわれむ。ここは、前者の意。 ・幽草:奥深い谷に生ずる草。 ・澗邊:谷川の岸辺に。渓流の岸辺に。

上有黄鸝深樹鳴:(そして)上の方ではウグイスが木の茂みで鳴いているのを(こよなく愛している)。 ・上有:上の方にいる。 ・黄鸝:〔くゎうり;huang2li2○○〕ウグイス。朝鮮うぐいす。コウライウグイス。 ・深樹:生い茂った木々。木々の繁み。

春潮帶雨晩來急:春の日のうしおは、雨を帯びていて、夕暮れになって流れが急になってきた。 ・春潮:春の日のうしお。 ・帶雨:雨を帯びる。雨催い。白居易の『長恨歌』に「玉容寂寞涙闌干,梨花一枝春
帶雨。」とある。後世、辛棄疾の『鷓鴣天』「送人」「唱徹陽關涙未乾,功名餘事且加餐。浮天水送無窮樹,帶雨雲埋一半山。   今古恨,幾千般,只應離合是悲歡?江頭未是風波惡,別有人間行路難。」 と使う。 ・晩來:夕暮れになってはじまった。おそくなって起こってきた。 ・急:流れが急になる。

野渡無人舟自橫:いなかの渡し場には、だれもいなくて、小さい舟が勝手に横たわっている。 *後世、北宋・寇準は『春日登樓懷歸』で「高樓聊引望,杳杳一川平。
野水無人渡孤舟盡日。荒村生斷靄,深樹語流鶯。舊業遙清渭,沈思忽自驚。」と使う。 ・野渡:田舎の舟渡し場。郊外の渡し場。 ・無人:だれもいない。 ・舟:こぶね。 ・自:自然と。勝手に。 ・橫:横たわっている。

               ***********




◎ 構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「生鳴横」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。

●○○●●○○,(韻)
●●○○○●○
。(韻)
○○●●●○●

●●○○○●○
。(韻)


2007.7.19
     7.20完
2011.2.19補
2014.4.25

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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