湖州歌 | |
南宋・汪元量> |
青天澹澹月荒荒,
兩岸淮田盡戰場。
宮女不眠開眼坐,
更聽人唱哭襄陽。
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湖州 の歌
青天澹澹 として 月荒荒 たり,
兩岸の淮田 盡 く戰場。
宮女 眠らず 眼を開きて坐 し,
更に聽 く 人の『哭 襄陽 』を唱うを。
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◎ 私感註釈
※汪元量:南宋の詩人。生没年不詳。字は大有。号して水雲。錢塘の人。南宋の宮廷琴師で、南宋の滅亡後、北方に抑留された。その詩集『水雲集』は南宋の滅亡までを忠実にうたいあげ、宋亡国の詩史と呼ばれる。晩年は西湖の畔に隠棲した。
※湖州歌:湖州の歌。宮廷琴師として、南宋の滅亡後、北方に抑留されるが、1276年(徳祐二年/景炎元年)、その出発点・太湖南岸の湖州の情景の詩。これは全九十八首のうちの第三十八首。 ・湖州:現・浙江省湖州市。浙江省の太湖南岸にある。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)59−60ページ「両浙西路 両浙東路 江南東路」にある。
※青天澹澹月荒荒:(昼間の)青空はあっさりとしたさまで、(夜の)月は薄暗く(いつもと変わることがないが)。 ・青天:青空。 ・澹澹:〔たんたん;dan4dan4●●〕あっさりしたさま。さっぱりしたさま。=淡淡。 ・荒荒:〔くゎうくゎう;huang1huang1○○〕うす暗いさま。
※両岸淮田尽戦場:両岸の淮河(わいが)流域の田地は、ことごとく戦場となっていた。 ・淮田:淮河流域の田地。 ・尽:ことごとく。
※宮女不眠開眼坐:宮廷に仕える女性は(緊張のあまり、夜になっても)眼を見開いて坐ったままで。 ・宮女:宮廷に仕える女性。 ・開眼坐:眼を見開いて坐っている。
※更聴人唱哭襄陽:その上さらに(岸の方で人が)『哭襄陽』(襄陽(じょうよう)の陥落を悼む)の歌を唱うのを(聴き耳を立てて)聴いていた。 ・聴:(意識して)きく。(聴き耳を立てて)きく。 ・『哭襄陽』:当時、民間で流行った歌曲名。『襄陽(じょうよう)の陥落を泣いて悼む』。 ・襄陽:〔じゃうやう;Xiang1yang2○○〕旧の地名で、現・湖北省の襄樊(じょうはん;Xiang1fan2)。軍事・交通の要衝で、南宋軍とモンゴル軍とが戦い、長期に亘ってモンゴル軍の南進を押さえていた古戦場でもある。『中国軍事史略』中(軍事科学出版社)中の284ページ〜286ページ「襄樊之戦」に詳しい。『中国史稿地図集』下冊(郭沫若主編 中国地図出版社)の59−60ページの「蒙元統一戦争」にその進軍の様が詳しい。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「荒場陽」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2020.6. 8 6. 9 6.10 |
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