訪樵者 | |
明・孫一元> |
遠尋山中樵,
不識山中路。
隔林伐木聲,
遙憶林深處。
不晤竟空歸,
日墮西陵樹。
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樵 者を訪 ぬ
遠く尋 ねんとす 山中の樵 (を),
識 らず 山中の路(を)。
林を隔 て伐木 の聲,
遙 かに憶 ふ 林 深き處(を)。
晤 らかならず竟 に空 しく歸れば,
日は墮 つ西陵 の樹(に)。
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◎ 私感註釈
※孫一元:明代の人。1484年〜1520年。字は太初。太白山人と号す。関中(現・陝西)の人と自称する。また安化王の孫とも自称し、安化王の反逆に対する目を避けるため山々に入ったという。また、老子の本を好み、山に入ったともいう。
※訪樵者:(俗世を超越した者である)きこりを訪(たず)ねる。 ・樵:〔せう;qiao2○〕きこり。森林の樹木を斧などにより伐採することによって生計を立てている林業労働者。ただし、詩詞では半仙、隠逸、俗世を超越した者…といった位置づけが伝統的にある。
※遠尋山中樵:山の中で(働いている)きこりを、遠くまで出かけていって尋ね(たいと思ったが)。
※不識山中路:山中の路が分からない。
※隔林伐木声:林を隔てて、立ち木を切る音(が聞こえて来る…)。 ・伐木:立ち木を切る。 ・声:音。「丁丁」とか…。
※遥憶林深処:(立ち木を切る音が聞こえて来る)林の奥深いところを遥かに心で思う。 *中唐・賈島に『尋隱者不遇』「松下問童子,言師採藥去。只在此山中,雲深不知處。」がある。
※不晤竟空帰:明(あき)らかではないので、ついに空(むな)しく(本来の場所である、元の所に)かえる(ことにしたが) ・晤:〔ご;wu4●〕明(あき)らか。 ・竟:とうとう。ついに。 ・空:むなしく。 ・帰:(本来の場所、元の場所に)かえる。
※日堕西陵樹:太陽が、西側の丘の樹木の上に落ちてきていた。 ・堕:〔だ;duo4●〕おちる。くずれる。はいる。 ・陵:おか。大きなおか。 ・西陵樹:西の方の大きな丘に生えている(松や柏の)木。南斉・錢唐(錢塘(杭州))の才媛の妓女・蘇小小〔そせうせう;Su1Xiao3xiao3○●●〕が作った詩は『玉臺新詠』に『歌一首』(『蘇小小歌』『西陵歌』)「妾乘油壁車,カ乘馬。何處結同心?西陵松柏下。」による。
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◎ 構成について
韻式は、「aaa」。韻脚は「路処樹」で、平水韻去声六御(處)・七遇(路樹)。この作品の平仄は、次の通り。
●○○○○,
●●○○●。(韻)
●○●●○,
○●○○●。(韻)
●●●○○,
●●○○●。(韻)
2020.7.13 7.14 |
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