夢歸 | |
明・高啓> |
何事頻頻夢裏歸,
只縁未慣客天涯。
覺來不見家人面,
恰似前朝始別時。
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歸 るを夢む
何事ぞ頻頻 として夢裏 に歸る,
只 だ未 だ天涯 に客 たるに慣 れざるに縁 る。
覺 め來 れば 家人の面 を見ず,
恰 も前朝 始めて別れし時の似 し。
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◎ 私感註釈
※高啓:明初の詩人。1336年〜1374年。明代最高の詩人とされる。字は季迪。江蘇省長州(現・蘇州)の人。元末に呉淞の青丘に隠棲する。詩風は唐宋の格調を保つ。『元史』の編纂に従事する。戸部右侍郎に任ぜられたが、固辞して郷里の上記青丘に隠棲する。しかし、洪武七年(1374年)、魏観の謀叛の罪に連座して腰斬の刑に処せられた。時に三十九歳。
※夢帰:帰ることを夢見て。
※何事頻頻夢裏帰:どうして、しばしば夢の中で帰るのか。 ・何事:どうして。何故。何事(なにごと)。 ・頻頻:〔ひんぴん;pin2pin2○○〕しばしば。しきりに。 ・夢裏…:夢の中で…する。
※只縁未慣客天涯:ただ、まだ旅人(=作者)が、地の涯の旅路に慣れないからだ。 ・只縁:ただ…に基づく。ただ…による。北宋・蘇軾の『題西林壁』に「看成嶺側成峰,遠近高低各不同。不識廬山真面目,只縁身在此山中。」とある。 ・客:旅人。 ・天涯:空のはて。
※覚来不見家人面:目覚めてみれば、家族の姿が見あたらない。 ・覚来:目覚めれば。 ・不見:見受けられない。 ・家人:家族。家の者。 ・面:おもて。かお。つら。
※恰似前朝始別時:あたかも前日の朝に別れた時のままのようである。 ・恰似:〔qia4si4●●〕あたかも…のようだ。あたかも似たり。ちょうど。南唐後主・李Uの『虞美人』に「春花秋月何時了,往事知多少。小樓昨夜又東風,故國不堪回首 月明中。 雕欄玉砌應猶在,只是朱顏改,問君能有幾多愁。恰似一江春水 向東流。」とある。 ・前朝:前日の朝。なお、前代の朝廷の意もあるが、ここでは関係がない。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「帰涯時」で、平水韻下平(帰:上平五微)(涯:六佳)(時:四支)。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●●○,(韻)
●○●●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2022.2.15 2.20 2.23 2.24 |
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