細聽彈琴 | |
劉長卿 |
泠泠七弦上,
靜聽松風寒。
古調雖自愛,
今人多不彈。
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細らかに琴の彈ずるを聽く
泠泠たり 七絃の上,
静かに 松風の寒きを 聴く。
古調 自ら愛づと雖も,
今人 多くは弾ぜず。
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◎ 私感註釈
※劉長卿:盛唐の詩人。709年?(景龍年間?)〜780年?(建中年間?)。字は文房。河間(現・河北省)の人。進士に合格して官吏となるも下獄、左遷された。ために、詩には失意の情感や離乱を詠うものが多い。五言詩に優れていることから「五言(の)長城」と称された。
※細聽彈琴:琴の音を鑑賞する。また、裏の意としては、古琴の音に托して、昔ながらの気質に心を寄せていることを謂う。 ・細聽:つまびらかに聴く。 ・彈琴:琴を演奏する。琴を弾(ひ)く。
※泠泠七弦上:(隠者の弾く)七弦琴からの清らかな音は。 ・泠泠:〔れいれい;ling2ling2○○〕水や風の音の清らかなさま。音声の盛んなさま。清らかで涼しいさま。 ・七弦:〔しちげん;qi1xian2●○〕七弦琴。古琴。
※靜聽松風寒:松風の寒々とした音を聞くかのようだ。 ・靜聽:静かに耳をすませて聴く。 ・聽:(自分から)きこうとしてきく。よくきく。蛇足になるが、「聞」は(自然と)聞こえる。(自然と)耳に入ってくる。 ・松風:松を吹きわたる風の音。 ・寒:寒々しい。
※古調雖自愛:この古い(琴の)調べ(や、昔気質の人情)に、わたしは心が惹かれるが。 ・古調:古い(琴の)調べ。昔ながらの世間の気風。昔気質(の人情)。この語には、この双方の意が込められている。 ・雖:…ではあるが。(…と)いえども。 ・自愛:自分は好きである。
※今人多不彈:今の人は、あまり弾(ひ)かなくなった。(今の人は、(古い人情を)あまり辨(わきま)えなくなった。) ・今人:今の人。当世の人。 ・多不彈:多くの人はもう弾(ひ)かなくなった。多くの人はもうあまり辨(わきま)えなくなった。双方の意が込められている。蛇足になるが、「彈」:〔たん(だん);tan2○〕は「談」〔だん;tan2○〕とその義が通じていそうだが、全く別系統(古音では、「彈」は「tan」系統で、「談」は〔だん;「tam」系統)で異なるもの。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「寒彈」で、平水韻上平十四寒。この作品の平仄は、次の通り。
○○●○○,
●○○○○。(韻)
●◎○●●,
○○○●○。(韻)
2008.9.30 10. 1 |
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