遊長寧公主流杯池二十五首之九 | |
上官婉兒 |
登山一長望,
正遇九春初。
結駟填街術,
閭閻滿邑居。
鬥雪梅先吐,
驚風柳未舒。
直愁斜日落,
不畏酒尊虚。
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長寧公主の流杯池に遊ぶ 二十五首之九
山に登りて 一に長望すれば,
正に 九春の 初めに遇ふ。
結駟 街術を 填め,
閭閻に 邑居 滿つ。
雪と鬥ひ 梅 先づ 吐くも,
風に驚きて 柳 未だ 舒べず。
直に 斜日の落つるを 愁ひ,
酒尊 虚となるを 畏れず。
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◎ 私感註釈
※上官婉兒:〔じゃうくゎん・ゑんじ;ShàngguānWǎn'ér〕「上官」は複姓の一。664年(麟徳元年)〜710年(景龍四年/唐隆元年/景雲元年)。唐代の女官。唐・中宗の時、昭容の職位に就く。陝州陝県(現・河南省)の人。上官儀の孫で才媛。後に、政変のため殺された。『中国大百科全書 中国文学U』693ページには「Shangguan Wan'er」と載っている。(蛇足になるが、中国映画『武則天』では、則天武后は上官婉兒を「ShàngguānWǎr」と呼んでいた。)
※遊長寧公主流杯池二十五首:長寧公主の流杯池で(曲水流觴の宴で)遊ぶ。 *これはその際の二十五首の九で、二十五首全て、仙境を詠う。 ・長寧公主:中宗(李顕)の娘。中宗と韋后との間に生まれる。 ・流杯池:杯を流す池。曲がりくねった小川状の細長い池。ここで杯を水面に浮かべ、杯が自分の前を流れ過ぎてしまわないうちに詩を作る風雅な遊びをする。もと、陰暦三月三日の風習なので、この二十五首も上巳節の宴の即席の作になろうか。
※登山一長望:山に登って、もっぱら遠くまで見わたせば。 ・一:もっぱら。ひたすら。 ・長望:ずっと遠くまで見わたす。
※正遇九春初:ちょうど春の三ヶ月の初めの陰暦一月(陽暦二月上旬〜三月上旬。)に当たる。 ・正:ちょうど。 ・遇:当たる。また、偶然に出くわす。遇(あ)う。ここは、前者の意。 ・九春:春の三ヶ月で、陰暦一月、二月、三月。九十日間。
※結駟填街術:(大通りには)四頭だての馬車が(馬を連ねて)、街の通りを塞(ふさ)いで(賑(にぎ)わい)。 *後世、北宋・王安石は『張氏靜居院』で「侯於山水間,結駟有通衢。」と使う。 ・駟:〔し;si4●〕(身分が高い人の)四頭だての馬車。 ・填:うづめる。 ・街術:街路。街の通り。
※閭閻滿邑居:村里の巷(ちまた)には、民家で満ちている。 ・閭閻:〔りょえん;lyu4yan2○○〕村里。村里の巷(ちまた)。村里の門。 ・邑居:〔いふきょ;yi4ju1●○〕村里。村里で生活する。ここでは、村里の民家の意になろう。
※鬥雪梅先吐:雪を侵して、梅の花がまず開くが。 ・鬥雪:雪を侵して、早春の花が咲くさま。 ・先:まず。 ・吐:ひらく。
※驚風柳未舒:吹く(寒い)風に驚いて、柳はまだ葉は伸びてはいない。 ・舒:のびる。ひろがる。
※直愁斜日落:夕日が沈む時、ひたすら悲しくなってきて。 ・直:ずっと。ひたすら。 ・斜日:夕日。 ・落:(夕日が)沈む。
※不畏酒尊虚:酒壷が空(から)っぽになることをおそれない(で、飲む)。 ・酒尊:酒器。酒壷。酒樽。 ・虚:空(から)っぽになる。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「初居舒虚」で、平水韻上平七虞。この作品の平仄は、次の通り。
○○●○◎,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
2008.12.26 12.27 |
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