邊詞 | |
張敬忠 |
五原春色舊來遲,
二月垂楊未挂絲。
即今河畔冰開日,
正是長安花落時。
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邊詞
五原の春色 舊來 遲く,
二月 垂楊 未だ絲を挂けず。
即今 河畔 冰 開くの日,
正に是れ 長安 花 落つるの時。
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◎ 私感註釈
※張敬忠:盛唐の人。官は、監察御史として張仁愿将軍に従い朔方の攻防に与(あずか)って力があり、開元中に平盧節度使となった。生没年不詳。
※邊詞:国境の詩。辺塞詩。辺疆の詩。
※五原春色舊來遲五原:(異民族からの防衛のための砦のある)五原は(北方にあるため)、昔から春の景色になるのがおそく。 ・五原:関内道塩州にある町の名。現・陝西省西北部で、寧夏回族自治区と内蒙古自治区との接点近くの地で現・定辺。長安の北北西400キロメートル、また、延安の西北200キロメートルの地点。万里の長城に接している町。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)40−41ページ「唐 京畿道 関内道」にある。ここでは作者が前線防衛の任に当たっている砦のあるところである。 ・春色:春の景色。また、酒に酔ってほんのり陽気になった顔色。ここは、前者の意。 ・舊來:昔から。以前から。まえから。従来。 ・遲:(ぐずぐずとして、動作に時間がかかって)おそい。のろい。時間がかかる。速度、進度が滞りがちなさまを表す。
※二月垂楊未挂絲:仲春の陰暦二月(現・三月)になるというのに、シダレヤナギは、まだ芽吹かないでいる。 ・二月:陰暦二月は、陽暦では概ね三月。仲春。 ・垂楊:〔すゐやう;chui1yang2○○〕シダレヤナギ。 ・挂絲:絹糸をかける。シダレヤナギが新芽を出すさまを謂う。 ・絲:柳糸で、ヤナギの新芽。
※即今河畔冰開日:ちょうど今、川辺の氷は溶け始めた(が)。 ・即今:〔そく(そっ)こん;ji2jin1●○〕ただいま。 ・河畔:川のほとり。 ・冰開:氷が溶け始める。
※正是長安花落時:(故郷である南方の)長安では、ちょうど花が散っている時だろう。 ・正是:ちょうど。 ・長安:国都。作者の故郷として、前出・五原に対して使われている。五原の南南唐400キロメートルになる。 ・花落:花が散る。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「遲絲時」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●○○●○○●,
●●○○○●○。(韻)
2009.5.5 |
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