寄楊侍御 | |
|
唐・包何 |
一官何幸得同時,
十載無媒獨見遺。
今日莫論腰下組,
請君看取鬢邊絲。
******
楊侍御に寄す
一官 何 の幸 ぞ 時を同 じうするを得 たる,
十載 媒 なくして獨 り遺 さる。
今日 論ずる莫 し腰下 の組 。
請 ふ君 看取 せよ鬢邊 の絲を。
****************
◎ 私感註釈
※包何:盛唐(末?)の人。生没年不詳。756年(天寶末(=十四、十五)年)頃に在世。字は幼嗣。潤州・延陵(現・江蘇省丹陽)の人。包融の子。弟の包佶とともに詩名があった。天寶七年(748年)に進士となる。この詩は「それから十年」の詩なので、758年頃ということになるが、安禄山の乱(755年(天寶十四年)〜)で、玄宗の政治体制は終わり、肅宗は遥か離れたところで即位し、政治的な大混乱の中にあった。このページような官職の昇進依頼の詩は、当然、安禄山の乱(755年(天寶十四年)〜)直前の平穏な時代の詩とみるべきであろう。
※寄楊侍御:楊という姓の天子のそばに仕える侍従に手紙で(詩文を)送る。 *「同期に任官したあなた(=楊)は、すでに侍御となっているのに、わたしは低い位のままで、十年を過ごし、年をとってしまった。とりたててもらえる人物に巡り逢えなかったからだ。それゆえ、あなたにこの詩文を…」と、取り立ててもらうことの依頼の詩。 ・寄:手紙で(詩文を)送る。 ・楊:作者と同時に任官した楊という姓の人物。 ・侍御:天子のそばに仕える官。侍従。
※一官何幸得同時:何という幸せなことか、(あなたと)同時期に官職に就いた。 ・何:なんぞ。感嘆を示す。また、疑問、反語の意。ここでは、前者の意。 ・得:手に入れる。ここでは「得官」のことになる。なお、「幸得」では、「幸いに。幸いに…を得る」意があるが、「一官何幸得同時」の句は「一官・何幸 + 得・同時」という節奏になるため、「得同時」の意。
※十載無媒獨見遺:(ところが、この)十年の間、なかだちとなって間をとりもってくれる人が無くて、ひとり、とりのこされてしまった。 ・十載:十年。 ・媒:〔ばい;mei2○〕なかだち。仲介。両者の間をとりもつ。 ・獨:ひとり。 ・見:…られる。受身を表す。…る。…らる。 ・遺:のこす。のこる。
※今日莫論腰下組:今は、(わたしの)腰(こし)に下(さ)げた(官位や階級を表すための)くみひも(の色)をあげつらいなさるな。 ・莫論:あげつらいなさるな。 ・腰下:腰(こし)に下(さ)げた…。 ・組:〔そ;zu3●〕くみひも。冠(かんむり)や印章などにつける綬(じゅ)。官位や階級を表すためのもの。官位によって色分けされていた。
※請君看取鬢邊絲:(そのかわり、色は色でも、)耳際(ぎわ)あたりの髪の毛(の白くなったさまを)をどうか見ていただきたい。(年をとってしまったのだ)。 ・請君:どうか…してください。ねえ、あなた。相手にお願いをするときの表現。 ・看取: ・鬢邊:耳際(ぎわ)あたりの髪の毛。 ・絲:〔し;si1○〕いと。きぬいと。ここでは、白髪を指す。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「時遺絲」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2011.7.4 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |