送方外上人 | |
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唐・劉長卿 |
孤雲將野鶴,
豈向人間住。
莫買沃洲山,
時人已知處。
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方外 の上人 を送る
孤雲 野鶴 を將 る,
豈 人間 に住 まらんや。
沃洲山 を 買ふこと莫 れ,
時人 已 に知れる處。
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◎ 私感註釈
※劉長卿:盛唐の詩人。709年?(景龍年間?)〜780年?(建中年間?)。字は文房。河間(現・河北省)の人。進士に合格して官吏となるも下獄、左遷された。ために、詩には失意の情感や離乱を詠うものが多い。五言詩に優れていることから「五言(の)長城」と称された。
※送方外上人:仏教の高僧(=霊K上人)を見送る。『送上人』ともする。 *「超俗」を願う相手の、「俗な」行為を揶揄した詩。 ・送:見送る。 ・方外:仏道。仏教。世の外。世の雑事にわずらわされない所。 ・上人:仏教での高僧に対する敬称。ここでは、霊K上人のこと。作者・劉長卿に『送靈K』「蒼蒼竹林寺,杳杳鐘聲晩。荷笠帶斜陽,青山獨歸遠。」がある。
※孤雲将野鶴:世捨て人(=孤雲:作者・劉長卿)が、超俗の人(=野鶴:霊K上人)を見送る(ことになるが)。 ・孤雲:〔こうん;gu1yun2○○〕ただひとつの離れ雲。孤独の人。世を捨てた人の喩え。ここでは、霊K上人のこと、或いは劉長卿自身を謂う。 ・将:送る。また、…と。…ともに。 ・野鶴:〔やかく;ye3he4●●〕野にすむツル。仕官しないで俗世間から超然としている人に喩える。ここでは、霊K上人のことを謂う。
※豈向人間住:(霊K上人は、)俗世間に留まって(いたい)のか? ・豈:〔き;qi3●〕どうして…か。反語・疑問の助字。 ・向:…で。…に。≒於。 ・人間:〔じんかん;ren2jian1○○〕俗世間。人の住んでいる世界。 ・住:すむ。とどまる。
※莫買沃洲山:(古来、仏教の聖地と謂われた)沃洲山(よくしゅうざん)(の地所)を買いなさるなよ。 ・莫:…なさるな。…なかれ。禁止・否定の助字。 ・沃洲山:〔よくしうざんWo4zhou1shan1●○○〕仏教や道教の聖地。在浙江新昌県の東10キロメートルの山地で、天台山脈と四明山脈の間にあって天姥山に通じている。晋代の高僧の支遁が、曽てここに沃洲寺を建て、ここに鶴を放って馬を飼っていたといわれ、道家では、第十二福地とされている。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)24−25ページ「北宋 両浙路 江南東路」にある。新昌の南南東20キロメートルに沃洲山がある。また、『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)55−56ページ「唐 江南東道」の新昌寨の東南すぐに、沃州寨と四明山と天台山脈がある。
※時人已知処:今の人は、(沃洲山とは俗な場所として)よく知れわたっている(ぞ)。 ・時人:〔じじん;shi2ren2○○〕その時代の人。当時の人。当代の人。 ・已知:(奥深い聖地ではなくて、開けた俗な場所として)とっくに知られている。=既知。
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◎ 構成について
韻式は、「aa」。韻脚は「住處」で、平水韻。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●,
●●○○●。(韻)
●●●○○,
○○●○●。(韻)
2012.7.30 |
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