聽箏 | |
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唐・李端 |
鳴箏金粟柱,
素手玉房前。
欲得周郎顧,
時時誤拂弦。
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箏 を聽く
箏 を鳴らす金粟 の柱 ,
素手 玉房 の前。
周郎 の顧 を得 んと欲 し,
時時 誤 りて弦を拂 ふ。
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◎ 私感註釈
※李端:中唐の詩人。開元二十年(732年)〜貞観八年(792年)趙郡(現・河北省)の人。字は正己。大暦五年(770年)の進士で、校書郎となったが、病の為に江南に移り、杭州司馬に任ぜられた。衡岳幽人と称して隠者の生活を送った。大暦十才子の一人。
※聴箏:箏の演奏を鑑賞する。 ・聴:(耳をすまして意図的に)きく。「聴箏」で「箏の演奏を鑑賞する」意。なお蛇足になるが、「聞箏」では「(どこかから)箏の音がきこえてくる」意。 ・箏:〔さう;zheng1○〕こと。そうのこと。十三弦琴。盛唐・王維/王涯の『秋夜曲』に「桂魄初生秋露微,輕羅已薄未更衣。銀箏夜久殷勤弄,心怯空房不忍歸。」とある。
※鳴箏金粟柱:「金粟」の飾りのことじのある箏(そうのこと)をならしている。 ・金粟:桂の花。菊の花に形容。金銭と米穀。 ・柱:ことぢ(ことじ)。箏や琴の胴の上に立てて弦を支え(、その位置によって音の高低を調節す)るもの。箏柱、琴柱。弦柱。
※素手玉房前:白く美しい手の女性の部屋の前で奏でられている。 ・素手:白く美しい手。女性の手を謂う。『古詩十九首』之二に「青青河畔草,鬱鬱園中柳。盈盈樓上女,皎皎當窗牖。娥娥紅粉妝,纖纖出素手。昔爲倡家女,今爲蕩子婦。蕩子行不歸,空牀難獨守。」とある。 ・玉房:部屋、家の美称。前出・王維/王涯の『銀箏夜久殷勤弄,心怯空房不忍歸。」とある。
※欲得周郎顧:周郎(≒将軍・王者)の気を惹こうとして。 ・欲得:…を得たいと思い、の意。 ・周郎:三国時代・呉の武将周瑜のこと。当時、呉の国の人は周瑜を周郎と呼んだことを謂う。『三國志・呉書・周瑜/魯肅/呂蒙傳第九』(一二六〇頁 中華書局版327ページ)に「策親迎瑜,授建威中郎將,即與兵二千人,騎五十匹。瑜時年二十四,呉中皆呼爲周郎。」とある。(我が国で喩えると、やまとたけるのみこと(日本武尊/倭建命)のようなものか)。 ・顧:かえりみる。めをかける。いつくしむ。周瑜は音楽に精通しており、演奏に過ちがあれば、それを指摘したと云う。『三國志・呉書・周瑜/魯肅/呂蒙傳第九』(一二六五頁 中華書局版328ページ)に「瑜少精意於音樂,雖三爵之後,其有闕誤,瑜知之必顧,故時人謠曰:「曲有誤,周郎顧。」とある。
※時時誤払弦:時々、(わざと)まちがって弦を弾(ひ)いている。 ・時時:時々。 ・誤払弦:(わざと)まちがって演奏する意。誤って弦を払う意。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「前弦」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2013.6.4 6.5 6.6 |
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