岳州守歳 | |
|
唐・張説 |
桃枝堪辟惡,
爆竹好驚眠。
歌舞留今夕,
猶言惜舊年。
******
岳州 守歳
桃枝 は 惡を辟 くるに堪へ,
爆竹 は 眠りを驚かすに好 し。
歌舞 今夕 を留め,
猶 ほ言ふ舊年 を惜 しむと。
****************
◎ 私感註釈
※張説:〔ちゃうえつ;Zhang1 Yue4〕盛唐初めの人。667年(乾封二年)〜730年(養老十八年)。洛陽の人。則天武后に登用され鳳閣舎人となったが、張易之のために欽州(現・広東省)に流された。後、中宗の時に呼び戻された。玄宗の時代に、中書令に至り、燕国公に封ぜられた。晩年に左遷されて、相州刺史、岳州刺史となった。この詩は岳州刺史の時のもの。
※岳州守歳:(岳州の刺史として、)岳州で大晦日(おおみそか)の夜、寝ないでゆく年を送った。 ・岳州:岳陽の旧称。また、洞庭湖東岸一帯。作者が刺史として赴任した地。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57−58ページ「江南西道」にある。 ・守歳:〔しゅさい;shou3sui4●●〕大晦日(おおみそか)の夜、寝ないでゆく年を送ること。
※桃枝堪辟悪:桃の木の板で作った魔除(まよけ)のふだは、厄(やく)除(よ)けの任に当たることができ。 ・桃枝:=桃符。ももの木で作った二枚の板で、元旦に門にかかげる魔除(まよけ)のふだ。桃の木の板に百鬼を食べるという二神・神荼(しんと)、鬱塁(うつりつ)の像や吉祥の文字をかいたもの。 ・堪:任に当たることができる。また、もちこたえる。こらえる。がまんする。たえる。ここは、前者の意。 ・辟:〔へき;bi4(pi4)●〕払い除く。よける。斥(しりぞ)ける。=避。 ・辟悪:厄(やく)除(よ)け。魔除(よ)け。
※爆竹好驚眠:爆竹(の破裂する音)は、(大晦日を寝ないで起きて過ごす時の)眠気(ねむけ)覚(ざ)ましに好い。 ・爆竹:ばくちく。青竹を火の中に入れて炸裂させ、その破裂する音で妖怪や悪鬼の類を驚かせて退(しりぞ)けるもの。梁・宗懍の『荊楚歳時記』にある。なお、北宋以後は火薬を用い、今に至る。唐・來鵠の『早春』に「新暦才將半紙開,小庭猶聚爆竿灰。偏憎楊柳難ツ轄,又惹東風意緒來。」とあり、中唐・劉禹錫の『畬田行』に「風引上高岑,獵獵度青林。青林望靡靡,赤光低復起。 照潭出老蛟,爆竹驚山鬼。夜色不見山,孤明星漢間。」とある。 ・眠:ねむる。ここでは「眠気を催して眠り出す」ことを謂う。
※歌舞留今夕:歌い踊って、今宵の行くのを押し留めて。 ・歌舞:歌と舞(まい)。歌ったり踊ったりすること。
※猶言惜旧年:なおまだ、旧年度が懐かしいと(言葉に出して)言っている。 ・猶:いまだに。なおまだ。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「眠年」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●,
●●●○○。(韻)
○●○○●,
○○●●○。(韻)
2015.1.4 1.5 1.6 1.7 |
次の詩へ 前の詩へ 抒情詩選メニューへ ************ 詩詞概説 唐詩格律 之一 宋詞格律 詞牌・詞譜 詞韻 唐詩格律 之一 詩韻 詩詞用語解説 詩詞引用原文解説 詩詞民族呼称集 天安門革命詩抄 秋瑾詩詞 碧血の詩編 李U詞 辛棄疾詞 李C照詞 陶淵明集 花間集 婉約詞:香残詞 毛澤東詩詞 碇豐長自作詩詞 漢訳和歌 参考文献(詩詞格律) 参考文献(宋詞) 本ホームページの構成・他 |