詩詞世界　碇豊長の漢詩　燦爛陽光之歌　文化大革命期の詩歌　陳企霞　給Ｌ・Ｍ

　　　　　　　　　　給Ｌ・Ｍ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　陳企霞

　
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このページも簡体字を使ってみました。下記のものが、旧来の繁体字です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　給Ｌ・Ｍ

播撒荊棘的種子，
要收穫瑰的花朶。
大地報以沈默，
給它的是刺。

描繪嶄新的圖畫，
用的是素淨的白紙。
龍飛蛇舞；蛟騰鳳起,，
誰能説這是塗鴉！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｌ・Ｍに与える

あなたはイバラの種を播き，
バラの花を収穫しようとした。
大地は　あなたに報（こた）えるに　沈默を以てして，
それに与えた物は　トゲだった。

あなたは嶄新な絵を描き，
用いたものは　真っ白な紙。
ぴんぴん　くねくね，
いったい誰が　へたくそだ　と言えようか！

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◎　私感注釈：

※この作品は『名人與冤案－中國文壇档案實録』第二巻

。陳企霞の息子・陳恭懐によって書かれた「父親陳企霞其人其詩」より採録。

※陳企霞：（一九一三～一九八八）五十年代中期、「丁陳反党集団」と見なされ、五七年、右派とされ、下放労働となった。六二年大学教員の職に就く。七九年名誉回復。

※給LM：LMに渡す。　・給：…に　（差し出す）。　・ＬＭ：誰のことかよく分からない。個人的な友人か。一番ありきたりな解は、“Ｍ”は毛澤東（Mao Zedong）だろう。マルクス（馬克思　Makesi）も考えられるが…。“Ｌ”は誰になるのか。レーニン（列寧　LieNing）か。

※

播撒荊棘的種子：あなたは、イバラの種を播いて。　・

：あなた。＝

。　・播撒：まく。　・荊棘：イバラ。荊棘。　・種子：タネ。

※要收穫瑰的花朶：薔薇の花を収穫しようとした。　・要…しようとする。　・收穫：取り入れる。　・

瑰：薔薇の俗語。バラ。　・花朶：花。

※大地報以

沈默：大地はあなたに答えるのに、沈黙をもってし。　・大地：大地。ここでは比喩的に使われている。　・報：こたえる。むくいる。　・以：…をもって。…で。　・沈默：沈黙。

※給它的是刺：それ（植物）に与えたのはトゲであった。　・給：…に…する。　・它：それ。ここでは、植えた植物を指す。　・的是…のは…である。　・刺：トゲ。

※描繪嶄新的圖畫：斬新な絵を描こうと。　・描繪：絵を描く。　・嶄新的圖畫：斬新な絵。

※用的是素淨的白紙：真っ白な紙を使った。（使ったのは、真っ白な紙だった。）　・用：もちいる。　・素淨（的）：色彩があっさりしている。　・白紙：白い紙。

※龍飛蛇舞；蛟騰鳳起,：雄渾な筆勢に、エセの筆遣い。　・龍飛蛇舞：筆勢が飛び跳ねているさま。筆勢が雄渾なさま。後出の“蛟騰鳳起,”とともに筆勢の雄渾な様を謂うが、本来の成語は“龍飛鳳舞”。それに比べて、「龍飛」「鳳起」の吉祥字はよいとしても、「蛇舞」「蛟騰」は、問題である。筆勢はよくとも、字が躍っている等の貶義があろう。“龍飛鳳舞”は、筆勢が雄渾で生き生きとしていることの形容。　・蛟騰鳳起,：筆勢が雄渾なさま。“龍飛鳳舞”から捩る。

※誰能説這是塗鴉：誰がへたくそな文字といえようか。　・誰能説：だれが言うことができようか。誰も言えまい。　・説：言う。　・這是：これは…である。　・這：これ。文語の「此」に近い。　・塗鴉：仮名釘流の文字。へたな文字。

◎　構成について：

　　自由詩。表現内容と語彙重視で、平仄は顧慮していない。韻を踏んでいるか、どうか微妙。韻式は特になし。この作品の平仄は次の通り。

●○●○●●●●，
●○●○○●○●。
●●●●●○○，
●○●●●。

●○●●○●○●，
●●●●●●●●。
○○○●；○○●●，
○○●●●○○。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

２００２．　９．２３
　　　　　　９．２４完
２００７．１０．２０補