子供の科学のラジオ>その5
70年代中ごろの子供の科学のラジオは、ほとんどが1〜3石でしたが、同じ2石でもトランジスタの使い方で色々なバリエーションが紹介されていました。
また、実質上は同じ回路でも、実装方法や電池電圧などを変えて、何度か発表されたものもあります。
掲載:子供の科学 1974年11月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年5月 | 成功 |
このラジオだけではありませんが、奥澤氏の記事には質問用として、ご自宅の住所が記されているものがよくありました。返信用切手を入れて質問してください、とありますのでお返事をいただけたのでしょうね。ご迷惑だったでしょうが、一度質問してみたかったと思います。
中には、「ただし住所が変わりそうなので、○月○日までとします」のように、奥澤氏の近況が伝わってくるものもありました(このときは結局ご住所は変わらなかったようです)。
さて、この2年後の1976年3月号で、ほぼ同じ回路の2石レフが発表されています。それがその1でご紹介した、「#3 2石レフ・ポケットラジオ」です。 1976年3月号の回路では、ラグ板の代わりにユニバーサル基板を使い、電池は9Vに変更されています。また、クリスタル・イヤホンのトランス(ST-30)の代わりに負荷抵抗が使われています。その他は大差ありません。 |
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感度は左の9V版のほうが少し良いようです。また、9V版は電源投入時にブツブツ音がすることはありません。ただし、3V版でも都市部の屋外では、ボリュームを相当絞ってもうるさいくらいに鳴ってくれます。 特徴的なこととして、放送に「サー」という結構大きなノイズが乗ります。どちらのラジオもそうです。どのへんが原因なのかわかりませんが、どちらの記事にも「このラジオは安定に働くように設計してあるので」とわざわざ書かれているので、こういったあたりに何か秘密があるのかもしれません。 奥澤氏のこの時期のラジオは、プリント配線版がまず発表され、その後にラグ板が発表されることがよくありましたが、この回路のラジオに関してはプリント配線版の発表が見当たりません。ただし、私の手元に現存している子供の科学は1969年〜1977年までのもので、中には失ってしまったものもありますので、どこかにプリント配線版もあるのかもしれません。もしご存知の方がありましたら、ぜひお知らせください。 |
掲載:子供の科学 1977年4月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年5月 | 成功 |
その後、本誌に似たケースを買って組み直してみました。少々深いのですが仕方ありませんね。本誌のサンプル写真と同様に、インクびんとのツーショットにしてみました(笑)。 参考までに、ケースはダイソーから購入した、SUNMERRY(サンメリー) No.90です。寸法は8.9×8.9×4.5H(cm)です。 |
掲載:子供の科学 1975年11月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年5月 | 成功 |
その後、少し小型のケースに入れ替えて、少しはポケット・ラジオらしくなりました。最近の食品入れは透明や白色の半透明が多くなったので、中身が透けて見えます。記事の感じとはちょっと変わってしまいますね。 このケースもダイソー購入で、「ストレートパック 角S」(フタをしたまま電子レンジOK!)3個入りです。 |
最初にスイッチを入れたとき、うんともすんとも言わなかったのですが、スイッチのつまみを持って前後左右に動かしているうちに突然放送が入りました。古いスイッチを再利用していたので、接点が汚れているんでしょうね。まだつまみを動かすたびにガリガリ言っています。
使用したポリバリコンは外装ケースが取れやすく、接着したバーアンテナが外れることがあったので、このあとバーアンテナをケース内側に配線止めで固定しなおしました。すると、なぜか異常発振が止まらなくなってしまい、どうやっても直りません。チョークコイルと並列に抵抗をつなごうと思いましたが、ちょっと配線が込んでしまうので、R1の100kΩを470kΩに変更しました。
掲載:子供の科学 1973年1月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2009年10月 | 成功 |
ちょっと時代が遡ります(製作の都合で番号が前後しています)。 この時代の子供の科学で紹介されている3石レフの回路は、基本的に2種ありますが、これはそのひとつです。今では消え去ってしまった高周波トランス(RFT)が使われているため、なかなかそのまま組み立てることができませんでした。RFCで代用して回路の一部を変更しようと思ったのですが、運よくジャンクで見つけることができ、製作してみました。 |
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●回路図 「子供の科学」編集部の許可を得てトレス掲載 今回の回路です。段間トランスを廃した2石レフのような構成で、Tr2は増幅作用はしていません。感度は2石レフ〜3石高1と同程度と推測しました。 なお、これは子供の科学の奥澤先生の記事の中で、高周波トランスを使用した最後のラジオと思われます。 |
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参考までに、こちらは「#11 感度がよい3石レフレックス・ラジオ」です。1974年6月号でプリント基板バージョンが、1975年9月号でラグ板バージョンが紹介されています。 |
●おもな部品(他に各種2mmビス・ナット・2mmはとめ・配線用ビニール線等)
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掲載:子供の科学 1973年3月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年6月 | 成功 |
「1月号で,むずかしい3石ラジオをしょうかいしましたので,今月はやさしい3石ラジオをお話しましょう.」《「子供の科学」1973年3月号 P.114より引用》という優しい文章から始まります(1月号の「むずかしい3石ラジオ」は、ひとつ前の3石レフでした)。 回路のことはよくわかりませんが、これはおそらく通常の2石ラジオが基本で、段間トランスをやめてトランジスタにした構成ではないかと思います。Tr2は音声電圧の増幅は担っていません。「#20 感度がよい3石ラジオ」の親せきかもしれませんが、トラ検の#20と違い、ダイオードで検波しています。 外観の特徴は、穴あけを簡単にするためにバリコンのダイヤルをケースの外に出していることです。バリコンのシャフトが短いため、こうするためには基板をケースにできるだけ近づけなければなりません。スピーカーにかぶさる大きさの基板では、ケースから離れてしまうので、このラジオは基板がとても小さく設計されています。それでもスピーカーのフチにかかるので、少しは離れてしまいます。スピーカーもよく手に入る5.7センチではだめで、どうしても5.0センチを入手しなければ、記事と同じにはできません。 |
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●回路図 「子供の科学」編集部の許可を得てトレス掲載 ●おもな部品(他に2mmビス・ナット、はとめ、配線用ビニール線等)
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●プリント基板パターン 「子供の科学」編集部の許可を得てトレス掲載 ダイヤルを外に出すためにはシャフトが長いバリコンが必要なので、この作例ではちょうど良さそうなバリコンを、バーアンテナとともにジャンクのスーパーラジオから取り外して使いました。なお、バリコンの延長シャフトを売っているお店もあるので、そういうものを使えば楽に作れると思います。 スピーカーは、後ろのコイルの出っ張りが小さいものにします。外側にマグネットが出ているものでは、大きなケースを使わないと組めないことがあります。 |
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しかし、部品集めには少々問題が残りました。このラジオのボリュームは500kΩ(S付・平型)なのですが、ただでさえ手に入らない平型ボリュームの500kΩなど、現代においては見つけられないのです。市販ラジオに使われているのは、たいてい5kΩ・10kΩ・50kΩのどれかです。 軸が出っ張っている普通のボリュームでしたら買えますが、ポケットラジオで軸が出っ張ってしまうのも避けたいと思いました。 |
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色々考えて試作も繰り返したのですが、結局は普通のスイッチ付きボリュームを使うことにしました。長さ20mmのビスでうんと後ろ側に引っ込めます。つまみは普通のものをまず取り付け、その頭に穴を開けて平らなつまみをネジ止めしました。回り止めのために両面テープをはさんであります。 取り付けた様子は左の写真のとおりです。もう2ミリほどつまみを引っ込めたかったのですが、ネジの長さが今一歩足りず、仕方なくシャフトを少し金ノコで切りました。 何となく危なっかしく見えますが、特に問題ありません。これでボリュームの問題は一応解決しました。 |
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基板に部品を半田付けし、ケースに入れ組んだところです。 ボリュームが浮いているため、その部分の高さが25mm程度になりますが、もともと乾電池の大きさの関係でケースの深さは30mm以上必要なので、その中に問題なく収まります。使用した厚手名刺ケースは、内寸で高さ31mmほどあります。 基板が小さいので部品の密度が高く、まるで昔の市販ラジオみたいです。 |
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実質2石相当なので、スピーカーを鳴らすラジオとしては少々感度が足りませんが、電波の強い場所を選べばアンテナ線なしでもよく聞こえます。もちろん2石レフレックスや3石高1には二〜三歩及ばない感じです。記事でも、アンテナ線を電灯線に巻き付けて聞くよう指示されており、それでも音が小さければアースするように書かれています。 もし「ビー」と異常発振するときは、50pFのコンデンサーを、100pFか150pFと取り替えます。 このラジオを組み立てた収穫は、平型ボリュームがなくても、奥澤清吉氏の一連のポケットラジオを組めることがわかったことです。しかし、私が持っている子供の科学で、まだ組み立てていない奥澤先生のポケットラジオは、あと1つだけなのです…。 |
掲載:子供の科学 1973年9月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年6月 | 成功 |
このラジオは基本的な2石式で、ここまででご紹介した奥澤氏のラジオの中では唯一、段間トランスが使われています。感度をよくするため、検波回路を同調コイルに直接つないで高い電圧をかけようとしています。この場合hFEの大きなトランジスタを使わないとかえって感度が悪くなるとのことで、いつもの2SC372ではなく、2SC1000が使用されています。 ボリュームは500kΩ平型(S付)ですが、手に入らないため普通の形のものを買い、前の3石ラジオ(#32)と同じ方法で取り付けました。今度はバリコンのダイヤルを内側に入れるため、基板も7〜8ミリケースから離せるので、ボリュームのシャフトを切り詰めなくてもつまみは出っ張りません。 |
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ずいぶん多くの入門ラジオを組み立ててきましたが、手持ちの子供の科学のなかで、奥澤清吉氏のプリント配線のラジオはこれが最後となってしまいました。もう手作業の基板作成にもすっかり慣れて、楽しく作ることができます。 2石ラジオとしては少々部品が多く、トランスも2個あるので基板サイズは大きくなっています。このラジオのように、スピーカーに基板がかぶさるタイプのものは、スピーカー径が5.0センチでないとうまくできません。5.7センチでもできないことはありませんが、スピーカーの一部がダイヤルや基板取り付けネジの位置に重なったりして入れ組みに苦労します。 |
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バーアンテナは秋葉原で見つけたジャンクで、幸いバーアンテナホルダーも見つけることができました。ホルダーはたまに見つかることがあるのですが、コアの大きさにぴったり合ったものが入手できるかどうかは偶然です。 配線が終わればすぐ鳴りました。ただし、後述しますが、記事のとおりに組んでも鳴りません。 |
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●回路図 「子供の科学」編集部の許可を得てトレス掲載 ●おもな部品(他に2mmビス・ナット、はとめ、配線用ビニール線等)
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●プリント基板パターン 「子供の科学」編集部の許可を得てトレス掲載 基板の24mmのスピーカー穴は、手持ちのリーマーでは太さが足りずに開けられなかったため、円周に沿ってドリルでいくつも穴をあけ、それをつないで切り抜きました。 スピーカーは、後ろのコイルの出っ張りが小さいものにしないと、基板がかぶせられません。 電波の弱いところでは、バリコンのA端子にアンテナ・リードを付けて、電灯コードなどの外側に5回くらい絡ませます。それでも小さいときはマイナス線にアースをつなぎます。 |
本誌記事の基板パターンに、1箇所のランドの抜けと1箇所の結線の抜け(赤い矢印)がありました。
また、図11(部品のさしこみ)で、4.7kΩと300kΩの抵抗が入れ替わっていました(青い矢印)。いずれも上の図では訂正してあります。
どれでもそうですが、基板を作る前に回路図と照らし合わせて、パターンに疑問な点がないか確認しておくと、あとの作業が楽です。
掲載:子供の科学 1975年12月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年7月 | 成功 |
掲載:子供の科学 1977年8月号 | |||
製作時期 | 結果 | 失敗原因(推定) | |
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初回 | 2006年7月 | 失敗ぎみ | 発振傾向、性能が十分出ていない模様 |
初回 | 2006年7月 | 成功 | トランジスタを2SC458に変更 |
今回、バーアンテナは5Pの立ラグ板にビニルテープで固定して取り付けました(余分なラグは外してあります)。ちょうど同じような方法でバーアンテナを固定している市販ラジオを見たことがあります。
このページの作例は1973年から1977年までの記事を元にしていますが、この間に本誌からアマチュア無線の連載記事が消えていることに気付きました。「小学生でも合格できる」などというハム講座の広告がよく出ていたものでした。今はインターネットや携帯電話で遠方と、しかも自分が気にいる相手とだけ、簡単にコミュニケーションができますから、無線に興味を持つ人は少ないのかもしれません。しかし、無線の用途が電話やインターネットで完全に置き換えられてしまったわけではありませんね。
私自身はアマチュア無線はしませんが、昔は「電波」というのは少年にとって先進的で格好いい存在で、「電波を操る」というのは憧れのひとつだったに違いありません。目に見える電線に縛られてはいない電波は、それはスマートで未来的なものでした。
ラジオというのは一般には受動的な電波の使い方ですが、地球の裏側からはるばる届くかすかな短波放送を受信したりするのには、天体望遠鏡ではるか彼方の星雲を捕らえるようなロマンがあったことでしょう。