キングスホビーは惜しまれつつも閉店してしまいました。
今月のRMMのインタビュー記事によりますと、C51、C53などの同社のコンバージョンキットは、元シバサキ模型の池末 弘氏の設計によるものとのことです。当時まったく知らずに組み立てていました。
50年前に9mmゲージ・1/150のC59をフルスクラッチされた方ですから、その手によるカマを組み立てられたということで、いまさら感激しております。
なおパシナも設計中だったものの、途中でマイクロエースから発売されて流れたというくだりもありました…。
C51の未組み立てのキットが手元にありますので、どういうものだったか少々ご紹介します。
1998年発売、価格は¥12,800でした。この頃の他社製品といいますと、マイクロエースのD61、C59等になります。
キットの外観は上の写真のようなものです。
表面の写真は組み立て見本で、何度もコピーを繰り返したという感じのものです。
今のデジカメやプリンターならはるかに鮮明なものができたでしょうが、当時はフィルムカメラで撮影したプリントを切り貼りし、まさにそれをコピーして内容物にしていたのではないかと思います。
中身はこんな感じです。
ボイラー、キャブ、前デッキはプレス曲げ済みで、破損防止のためさらに小さなケースに入っています。 ランボード等は真鍮エッチング、細いパーツやテンダー側面は洋白エッチングです。 動力部と合体するときに絶縁スペーサーとして使用するプラ板まで付属しています。別途用意したものは、窓ガラスの透明板ぐらいだったでしょうか。 |
今までに何度か書かせていただきましたが、このキットの特長は説明書がちゃんとしていることです。
十分なページ数を割き、最も欲しい組み立て手順がきちんと説明されており、腕の問題を除けば間違いなくできます。
※以下にご紹介のため引用させていただいた取扱説明書の画像は、すべてキングスホビーの著作物です。
説明書の1ページ目です。 最初に正面図・側面図があり(これ重要)、1ステップごとに組み立て方が詳しく説明されています。 |
途中の様子です。 |
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ちょっと面白い取り付け方の部品もありました。 なお、写真の文章にちょっと写っている「実車ではフランジに丸型と角型の2種が…」というのは、車輪のフランジではありませんよ。 |
このように説明書の作りが理想的なため、組み立て中につまづく要素がほとんどありません。自前のメモも不要でした。
C55の動力は、前端を少しカットしないと入らないので、そのための加工の説明もあります。 写真を使用して説明されていますが、ここが残念ながら当時の写真+コピーのため、少々不鮮明になっています。その後のバリエーション製品では、見やすく改良されていました。 加工箇所は少ないので、下廻りの加工はそれほど面倒ではありません。 |
なおテンダーは、元の側板をカットして妻板と床板だけ残し、洋白エッチングの上廻りを載せるという構造です。簡単にまとまります。
台車はD51またはC58のものを用意するように指定されていましたが、これが当時入手が困難で苦労しました。こういった部品の入手は、今のほうがはるかに簡単です。
さて、説明書の作成だけでもかなり工数がかかっていたと思いますが(でも必要な工数だと思います)、後日のキットでは一部が簡略化されました。
後日、燕牽引機と門鉄デフ機が発売されまして、その説明書の1ページ目です。 |
いえ大丈夫です。組み立ての手順はちゃんと詳しく説明されています。 |
少量多品種のキットが次々と生まれてくる現在、組立説明書の制作に十分なコストをかけることも難しく、 ユーザーも結構なガマンをする必要があるのが現実かと思います。
しかし、組立説明書が親切な製品は結局トクをしています。まず、うまくできなくても「もやもや」感が残りにくいこと。自分の腕の問題ですから(キット自体に問題が多ければアレですが)。 あとメーカーに対する印象は断然よくなります。ちゃんと組み立てられるように配慮してくださっているんだなあと。完成させられないキットほどムナシイものはありません。
でも買う側は「とりあえず買っておこう」という感じで、そのムナシイ山を着々と築いてしまうのですよね(笑)。
種車のC55と、完成したC51(素組み)です。
C51らしさのツボはしっかり押さえられていますし、1/140シリーズのプラ製蒸機と並べても何の違和感もないデザインです。
当時も話題になったキットなので、未組み立てのまま残っているものも結構ありそうです。ただメーカーが閉店してしまいましたので、もし部品の不足や破損があっても自力で何とかするしかありません。