Nゲージ蒸気機関車2022年のメモ>2022.10.10

KATO 9600(20歳)

KATO 9600

KATOの9600が発売されたのは2002年のことで、気が付けば20年経ちました。
それまでのKATOの縮尺1/140・旧型モーターの蒸機製品群とは装いの異なる、新系列の先駆けのような製品です。


2002年に登場し、2009年に1度再生産されたきりですが、まだ現行商品かと思います(今も在庫があって買えるというわけではありません)。

品番2014 9600
20年経っても各部表現は現在の製品に見劣りしません。

9600 公式側

当時のマイクロエースの9600は8,600円(+税)だったのに対し、KATOは8,200円(+税)でした。数々の新機構が盛り込まれていることを考えると根性を感じます。

9600 非公式側後方上方から

九州型風の前に寄った炭庫です。

テンダーのライトも点灯します。これはKATOの蒸機では少数派です。

9600 非公式側

動輪は実物通り左側先行になっています。

車輪は黒色車輪になっており、動輪スポークはすべて抜けています。先輪・テンダー車輪のスポークは抜けてはいませんが、先輪のスポーク形状はそれまでの製品よりも精密になっています。2009年の再生産では先輪の厚みも薄くなりました。

初回発売の2002年時点では、すでにマイクロエースとトミックスからプラ製品の9600形が発売されていましたが、それらよりも一回り大きいサイズになっています。
形状は巧みにデフォルメされているようですが、全長は縮尺1/145〜1/144ぐらいかと思います。プラ模型の縮尺で1/144はよくあるため、このサイト内でもそう書いていたりしますが、設計上は1/145かもしれません。ボイラーの太さは1/142程度と太めになっています。

発売当時の反響としては、概ね好評ではあっても熱狂的というほどでもなかったでしょうか。プラ成型や組み立て精度は他社製品から頭一つ抜けていたと思いますが、縮尺面などで若干の物足りなさを訴える意見もある中で、静かに迎えられていた印象でした。

前面

ライトは黄色っぽいLEDによる点灯式です。ライトのパーツは当時発売されていたC57(旧製品) 180号機と同じものです。

2種の端梁パーツ

端梁パーツには解放テコ両側式・片側式の2つが付属しており、簡単に交換することができます。
端梁につかみ棒とステップも一体化されており、最近の製品のようなぐらつきが少なく、きちんと装着されます。

つかみ棒の先端は前から見ると猫足のようになっているのが面白いです。

ボイラー上部

別パーツとモールド表現を巧みに使い分けて表現されたボイラー上部です。
ランボードは最近の製品と異なりボイラーと一体になっています。ランボード上の模様の表現はまだありませんが、ランボード側面や下部の配管はカッチリと表現されています。

パーツ分けされている煙室部分をボイラーよりも強いつや消しとし、焼けた感じのアクセントを付けています。

ハンドレールとハシゴの分離

国内向けのKATOの蒸機では初めてかと思いますが、ハンドレールは別パーツになっています。

これは取り付けステーにあらかじめ金属線が差し込まれて塗装されており、それをユーザー自身がボイラーに差し込んで取り付けるものでした。その際、装着済みのハシゴをいったん取り外す必要がありました。

このユーザー取り付けが不評だったのか、2009年の再生産時にはハンドレール取り付け済みに変更されています。なお9600よりも前に発売されていた米国型のHeavy Mikadoでは、ハンドレールステーもすべてランナーから切り離して1個ずつ金属線に差し込む必要がありました。それに比べれば9600はずいぶん簡単になっていたものです。

9600のAssyパーツにハンドレールが単体で存在しているのはこのような経緯です。

キャブのはめ込みガラス

側面ガラスははめ込みで、ガラス側に窓枠がモールドされています。

ニス塗りの木枠を表現しているのでしょうけども、テカテカの明るい茶色が丸みのある縁に載って大変目立ちます。ちょっと電車のHゴムのガラスを風変わりにしたような印象でしょうか。KATOの9600を印象付けるアクセントにはなっているので、好き好きかもしれないです。

窓枠に少しつや消しの色を塗ってみると、また違う雰囲気になるかもしれません。

テンダーの分離

旧系列の蒸機では底のネジを緩めないとテンダーを分離できませんでしたが、9600では後方に引っ張って外せるようになっています。
最近の製品に比べると手ごたえはかなりきついです。通常、脱着する必要はありません。

なおテンダーの前面手すりは実際に浮いた状態でモールドされています。最近の製品である8620も同型のテンダーですが、8620では縮尺が少し小さいからか、手すりはテンダーの壁とつながっており間は抜けていません。

動力部

上廻りを外したところです。

それまでのSM-5等とは異なる小型モーターが採用されています。私はこのモーターが使われているのを9600しか知りませんが、他にも採用例はあったのでしょうか。

割と大きめのフライホイールが1個装着されており、これもKATOの国内向けの蒸機では初めてかと思います。ただ効果はあるのかないのか、よくわかりませんでした。

動輪にサスペンション構造はなく、旧系列の蒸機に近い感じです。レールに追随するよう動輪にバネが微妙に仕掛けられている最近の製品には、集電性能は一歩及ばないかと思います。
2009年の再生産品ではテンダー内の集電バネの曲げ方が微妙に変更されているように見えます。テンダーからの集電を安定させる目的かもしれません。ただ私が確認できたサンプル数が少ないので、今のところ一印象にすぎません。

キャブ内 バックプレート

モーターがボイラー内に半分ほど入り込んでいるため、キャブ内には何とかバックプレートが付いており、後方にはわずかながら室内空間もあります。
窓が開いていることと併せ、室内が少しでも表現されているのは効果がありますね。

分解した上廻り

ちなみに先ほどの動力写真を撮る際に分解した上廻りです。

今やっても壊しそうになる箇所があってヒヤヒヤします。かつてハンドレールを外し忘れたまま煙室を抜き取ろうとして、ハンドレールを曲げてしまった痕跡が今も残っています。

初回製品から1か月ほど遅れ、同じ2002年に品番2015 9600デフ付が発売されました。

デフ付追加

デフレクターが付いていることと、付属のナンバープレートが異なること以外は、先に発売されたデフなしとまるっきり同じです。
堂々とした姿の大型デフレクターです。

このあとはバリエーションが追加されることはなく、これら九州タイプ2種体勢で現在に至ります。
生産は知る限り2002年の初回と、2009年の再生産のみです。2009年には先のハンドレール取り付け済みのほか、後部用のナックルカプラーが付属しました。前面用の重連用カプラーは引き続きアーノルドのみで、重連用ナックルカプラーはありません。
2009年の再生産品はかなり店頭在庫が長持ちしていたように感じます。これは地域やお店によって相当差があると思いますが。

8620と並んだところ

大正生まれの仲間である8620と。
この写真を撮ったときに一番気付いたのは両者の重さの差です。9600も軽くなっていますが約65gなのに対し、8620は48gで重さを感じません。最近の模型は形態の再現性が最も要求されるので軽くなってしまい、そのぶん牽引力が犠牲になりがちかもしれません。

パッケージ

9600のケースの中敷は、それまでのウレタンから薄いブリスターのトレイに変更されています。5年後に発売されたC62東海道形もこのタイプの中敷でした。

9600は構造や縮尺面から、他のKATOの蒸機の流れとは異なる独立した存在にも見えますけども、振り返ってみますと前後の製品とちゃんと連続性が感じられます。この時期の製品の変化が非常に大きかったということかもしれません。

ともかく9600は満20歳でして、まったく月日の流れるのは早いです。


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