< 福祉機器を考える >
★ 製品か自作か
先ず、製品を使うか、自作するか、といった判断が必要です。それぞれに長所短所がありますので、先ずそれを考える必要があります。 この点は、大森先生の「障害児教育支援技術情報ホームページ」や、角先生の「障害のある子どものための手作り教材・教具」等で議論されており、大変参考になります。 簡単にまとめると次のようになります。
製品は、安定性・耐久性がありますので安心して使えます。しかし、一人ひとりの状況に必ずしも合いません。それと、一般にコスト高です。
一方、自作すると、状態に合った機器の作製が可能で、その気になると安くできます。しかし、壊れやすい、信頼性に欠ける等の短所もあります。
従って、判断に当たっては、以下の点に考慮しなければなりません。
- 製品で工夫の余地はないか?
- 確実性、安全性はどの程度要求されるのか? 命にかかわる、緊急性が高い(ナースコール等)? 失敗したらやりなおせるか(テレビのリモコン等)?
- 技術力はあるか?
- 価格は?
★ 必要な機器
コミュニケーション支援のためにはどのような機器が必要になるでしょうか。
例えば、電池で動くおもちゃにはスイッチがついています。そのおもちゃから離れたところに置いたスイッチでおもちゃを動かすことを考えましょう。
そのためには、先ず手元のスイッチが必要です。押しボタンスイッチ、鍵盤のようなスイッチ、リモコン、棒状のスイッチ等様々なものが使われます。
次に、スイッチとおもちゃをつなぐ必要があります。一つには線でつなぐ方法があります。ラジオやステレオで使われるミニプラグのついたケーブルを使うことが多いようです。おもちゃ側は少し細工をしてミニプラグのジャックを取り付けたり、乾電池アダプタ(BDアダプターやトイケーブル等と呼ばれる)という薄いスイッチをおもちゃにセットしてある電池の隙間に差し込んで、電流を流したり止めたりするようにします。
スイッチとおもちゃが遠くに離れていたり、動き回るために線をつなげないことがあります。その場合は、テレビのリモコンのように赤外線を使ったり、非常に弱い電波を使うなどして、スイッチの信号を伝える送信機・受信機が使われることもあります。
それで充分でしょうか。おもちゃを動かそうとすると、スイッチを一旦押したら1分間動作するようにしたい、あるいは、スイッチを押す度におもちゃが動いたり止まったりするようにしたい、というような場合があります。そのような時に、一定の時間動かすための装置、ラッチアンドタイマーと呼ばれる装置があります。
以上のことを整理しますと、福祉機器(コミュニケーション支援用の機器)は次のようなもので構成されます。
- スイッチ:押しボタン、棒タイプ、紐、動き検出、傾斜検出、
- 接続機器:ミニプラグ/ジャック、無線送受信、赤外線送受信等
- 信号の処理:タイマー機能としてラッチアンドタイマ、ゲームパッド等ボタンの変換器、それに、誤操作対策等
- 制御対象:動くおもちゃ、オルゴール、電子楽器、テレビ、ゲーム機等
★ 設計の指針
なお、ここで製作する装置に関する基本的な方針は以下の通りと考えています。
指針1. コミュニケーション支援機器は、「スイッチ」、「接続・処理(送受信機、ラッチアンドタイマ等)」、「制御対象機器、おもちゃ」等を組み合わせると、下のいずれかの構成となる。どの様な構成にでもできるような互換性を確保する。
- スイッチ+送信機+受信機+ラッチアンドタイマ+制御対象機器
- スイッチ+ラッチアンドタイマ+制御対象機器
- スイッチ+制御対象機器
指針2. 接続条件については、試作機では以下のように統一している。
- 端子:ミニプラグ/ジャック
- 電気特性:出力は原則的に機械的なスイッチと等価(但し電流制限あり)、入力は、TTL等価
夫々の機器について、
を参考にしてください。