日本刀 | ||
大鳥圭介 |
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鍛冶研磨幾百回, 霜鋒三尺玉無埃。 不疑日本刀犀利, 曾試盤根錯節來。 |
鍛冶 研磨 す 幾百回,
霜鋒 三尺 玉に埃 無し。
疑はず日本 刀 の犀利 なるを,
曾 て盤根 錯節 を試み來 る。
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◎ 私感註釈
※大鳥圭介:江戸末期の幕臣・外交官。天保四年(1833年)〜明治四十四年(1911年)。江戸末期・明治初期の政治家。号は如楓。兵庫の人。緒方洪庵・江川英龍らに蘭学・兵学を学び、慶應二年1866幕臣に挙げられ歩兵奉行となる。戊辰戦争では江戸城開城に反対し、幕兵を率いて脱走、日光・会津などで官軍と戦い、榎本武揚の海軍と合流し函館五稜郭にこもったが翌年降伏、許されてから明治政府に入り、。のち清国・韓国公使となり、して日清戦争の外交工作を劃策した。
※日本刀:日本固有の方法で製作された刀剣。かたな。北宋・歐陽脩の『日本刀歌』に「昆夷道遠不復通,世傳切玉誰能窮。寶刀近出日本國,越賈得之滄海東。魚皮裝貼香木鞘,黄白韋カ鍮與銅。百金傳入好事手,佩服可以禳妖凶。傳聞其國居大島,土壤沃饒風俗好。其先徐福詐秦民,採藥淹留丱童老。百工五種與之居,至今器玩皆精巧。前朝貢獻屢往來,士人往往工詞藻。徐福行時書未焚,逸書百篇今尚存。令嚴不許傳中國,舉世無人識古文。先王大典藏夷貊,蒼波浩蕩無通津。令人感激坐流涕,鏽澀短刀何足云。」とあり、日本・幕末・ 鍋島閑叟の『偶成』に孤島結團意氣豪,西南決眥萬重濤。黠奴若有窺邊事,羶血飽膏日本刀。」とあり、頼山陽の『蒙古來』に「筑海颶氣連天K,蔽海而來者何賊。蒙古來 來自北,東西次第期呑食。嚇得趙家老寡婦,持此來擬男兒國。相模太カ膽如甕,防海將士人各力。蒙古來 吾不怖,吾怖關東令如山。直前斫賊不許顧,倒吾檣 登虜艦。擒虜將 吾軍喊。可恨東風一驅附大濤 不使羶血盡膏日本刀。」とあり、清・秋瑾も日本刀を「日本鈴木學士寶刀歌』「鈴木學士東方傑,磊落襟懷肝膽裂。一寸常縈愛國心,雙臂能將萬人敵。平生意氣凌雲霄,文驚坐客翻波濤。睥睨一世何慷慨?不握纖毫握寶刀。寶刀如雪光如電,精鐵鎔成經百煉。出匣鏗然怒欲飛,夜深疑共蛟龍戰。入手風雷繞腕生,眩睛射面色營營。山中猛虎聞應遯,海上長鯨見亦驚。君言出自安綱冶,于載成川造成者。~物流傳七百年,於今直等連城價。昔聞我國名昆吾,叱咤軍前建壯圖。摩挲肘後有呂氏,佩之須作王肱股。古人之物余未見,未免今生有遺憾。何幸獲見此寶刀,頓使庸庸起壯胆。萬里乘風事壯遊,如君奇節誰與儔?更欲爲君進祝語:他年執此取封侯。」とある。
※鍛冶研磨幾百回:鍛えて、とぎみがくこと、何百回(繰り返したこと)になろうか。 ・鍛冶:〔たんや;duan4ye3●●〕鍛える。金属を鍛えて器物を作る。 ・研磨:〔けんま;yan2mo2○○〕とぎみがく。深く研究する。
※霜鋒三尺玉無埃:三尺の白く光ってするどい刀の美しい刀身には、ちりがない。 ・霜鋒:白く光ってするどいきっさき。 ・三尺:刀身の長さ。90.9cm。 ・玉:美しい石。ここでは美しい刀身を謂う。 ・埃:〔あい;ai1○〕ちり。ほこり。
※不疑日本刀犀利:日本刀が鋭利なことは疑いが無く。 ・不疑:疑わない。 ・犀利:〔さいり;xi1li4○●〕兵器がかたくて鋭い。鋭利である。
※曽試盤根錯節来:(日本刀を振るうことで、)以前に複雑な情況(の解決)をこころみてきた。 *「曽試盤根錯節来」の句は、「試来」(こころみてきた)「曽試来」(以前にこころみてきた)「曽試・盤根錯節・来」(以前に複雑な情況(の解決)をこころみてきた)となる。 ・曽:以前に。かつて。 ・試:やってみる。ためす。こころみる。 ・盤根錯節:曲がりくねった根と入り組んだ節(ふし)。処理しにくい困難なことの喩え。ここでは幕末から維新にかけての混乱期の情勢を指す。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は、「回埃來」。平水韻上平十灰。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
平成27.3.28 3.29 |
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