暮上故城 | ||
西島蘭溪 |
||
獨上故城路, 人耕殘壘平。 晩風吹不斷, 歸犢向雲鳴。 |
獨 り故城 の路を上 れば,
人耕 して殘壘 平 かなり。
晩風 吹きて斷 たざれば,
歸犢 雲に向かひて鳴く。
*****************
◎ 私感註釈
※西島蘭渓:江戸時代後期の儒者。安永九年(1781年)〜嘉永五年(1853年)。江戸の人。名は長孫。字は元齢。蘭渓と号す。本姓は下条氏。西島柳谷の養子となり改姓。学問を林述斎に学ぶ。養父の跡を嗣ぎ、江戸・芝で教える。詩学に通じ、書を能くした。
※暮上故城:日暮れに古くなった城塞へ)のぼる。 ・暮:日暮れ。 ・上:(高い所へ)のぼる。 ・故城:古くなった城塞。
※独上故城路:独(ひと)りで、古くなった城塞への路をのぼれば。 ・独-:(供を連れないで)独りで。
※人耕残塁平:人の手で、崩れさた砦(とりで)が平らになっている。 ・残塁:崩れた砦(とりで)。 ・残:すたれた。また、のこる。ここは、前者の意。 ・塁:〔るゐ;lei3●〕とりで。土を重ねて造った小城。
※晩風吹不断:夕暮れの風が吹いてきて、(断ち切ろうと思っても)断ち切れない(でいると)。 ・晩風:夕暮れの風。 ・吹不断:吹いてきて(断ち切ろうと思っても)断ち切れない、意。「〔動詞〕+不断」(…することを断ち切ろうとしても断ち切れない)。南唐後主・李Uの『烏夜啼』に「無言獨上西樓,月如鈎。寂寞梧桐深院 鎖C秋。 剪不斷,理還亂,是離愁。別是一般滋味 在心頭。」とある。
※帰犢向雲鳴:(本来の居所であるねぐらに)かえる子牛が、雲に向かって鳴いた。 ・帰:(本来の居所である“ねぐら”に)かえる。 ・犢:〔とく;du2●〕こうし。牛の子。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「平鳴」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○●,
○○○●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
令和3.10.15 10.16 |
トップ |