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冬初出遊

            
            
        南宋 陸游

蹇驢渺渺渉煙津,
十里山村發興新。
青旆酒家黄葉寺,
相逢倶是畫中人。




    **********************


          冬初出遊

蹇驢(けん ろ ) 渺渺(べうべう)たる  煙津(えんしん)(わた)り,
十里の山村  (きょう)(はっ)して 新たなり。
青旆(せいはい)酒家(しゅ か )  黄葉(くゎうえふ)の寺,
()()ふは (とも)()れ  畫中(ぐゎちゅう)の人。

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◎私感訳注:

※冬初出遊:冬の初めの外出。

※蹇驢渺渺渉煙津:脚の悪いロバで、水がはてしなくけむる靄(もや)に包まれた渡し場を(歩いて)わたり。 ・蹇:〔けん;jian3●〕あしなえ。びっこ。ちんば。まがる。なやむ。 ・驢:〔ろ;lǚ(lyu2)○〕ロバ。ウサギウマ。馬より小さく耳が長い。 ・渺渺:〔べうべう;miao3miao3●●〕水のはてしなくけむるさま。遥かでかすかなさま。遥かで遠い。果てしない。盛唐・劉長卿の『平蕃曲』に「渺渺戍煙孤,茫茫塞草枯。 隴頭那用閉,萬里不防胡。」とあり、宋・蘇軾の『水調歌頭』快哉亭作「落日繍簾卷,亭下水連空。知君爲我、新作窗戸濕靑紅。長記平山堂上,欹枕江南煙雨,渺渺沒孤鴻。認得醉翁語,山色有無中。」とあり、北宋・寇準の『江南春』に「
渺渺,柳依依。孤村芳草遠,斜日杏花飛。江南春盡離腸斷,蘋滿汀洲人未歸。」とあり、北宋・晏幾道の『鷓鴣天』に「醉拍春衫惜舊香,天將離恨惱疏狂。年年陌上生秋草,日日樓中到夕陽。   渺渺茫茫。征人歸路許多長。相思本是無憑語,莫向花箋費涙行。」とある。 ・渉:〔せふ;she4●〕(川を歩いて)わたる。 ・煙津:靄(もや)や霞(かすみ)に包まれた渡し場。

※十里山村発興新:(そこの)十里ほどの(ささやかな)山村に、新たな興味を起こした。 ・十里:5キロメートル四方程度の小さな村里を謂う。 ・発:起こす。発する。 ・興:〔きょう;xing4●〕心に趣(おもむき)を感じる。たのしむ。よろこぶ。なお、〔こう;xing1○〕は、おこす。ここは、前者の意。

※青旆酒家黄葉寺:(それは何についてなのかというと)青い旗のかんばんの酒屋(さかや)や黄葉になっているお寺で。 ・青旆:〔せいはい;qing1pei4○●〕酒屋のかんばんの旗。=青旗、青帘。 ・酒家:酒屋(さかや)。 ・黄葉:もみじ葉。秋になって葉が黄色く変わる葉。

※相逢倶是画中人:(道で)出逢う人々は、いずれもみな絵の中に出てくる人物である(かのようだ)。 ・相逢:めぐりあう。 ・倶是:ともに…だ。いずれも…だ。みな…だ。 ・画中人:絵の中に出てくる人物。





◎ 構成について

韻式は「AAA」。韻脚は「津新人」で、平水韻上平十一真。次の平仄はこの作品のもの。

     ●○●●●○○,(韻)
    ●●○○●●○。(韻)
    ○●●○○●●,
    ○○●●●○○。(韻)
2011.5. 8
2015.5.14




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