Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


旅夜書懷

杜甫

細草微風岸,
危檣獨夜舟。
星垂平野闊,
月湧大江流。
名豈文章著,
官應老病休。
飄飄何所似,
天地一沙鴎。



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旅夜りょ や  おもひを書す       

細草さいさう 微風の岸,
危檣 き しゃう 獨夜どく や の舟。
星 垂れて 平野 ひろく,
きて 大江たいかう ながる。
名は に 文章もて あらはれんや,
官は まさに 老病らうびゃうにて むべし。
飄飄へうへうとして 何の似る所ぞ,
天地の いち沙鴎 さ おう



                      ****************

◎ 私感註釈

※杜甫:盛唐の詩人。712年(先天元年)〜770年(大暦五年)。字は子美。居処によって、少陵と号する。工部員外郎という官職から、工部と呼ぶ。晩唐の杜牧に対して、老杜と呼ぶ。さらに後世、詩聖と称える。鞏県(現・河南省)の人。官に志すが容れられず、安禄山の乱やその後の諸乱に遭って、流浪の一生を送った。そのため、詩風は時期によって複雑な感情を込めた悲痛な社会描写のものになる。

※旅夜書懷:旅先での夜に、思いを書きしるした詩を作る。 *この作品は、身の回りや近景の描写には、作者の心情を反映した、繊細で寂寥感溢れる表現をし、天地自然、遠景の描写には、雄渾な表現を使う。
風岸
夜舟
 
平野
大江
(これは、『杜甫詩選』張忠網(中華書局)211ページの論述を図示したもの。)
 ・旅夜:765年(永泰元年)に作者が忠州から雲安に向かう途中の舟の中で宿泊したときのもの。晩年の流浪の旅路での作品。 ・書懷:胸の思いを書きしるす。

※細草微風岸:こまかな草が微(かす)かな風にそよいでいる岸辺の。 ・細草:細い草。また、葦。 ・微風:そよ風。かすかに吹く風。

※危檣獨夜舟:高い帆柱のある舟で、独り寂しく夜を過ごしていた。 ・危檣:高い帆柱。両宋・張元幹は『石州慢』で「雨急雲飛,瞥然驚散,暮天涼月。誰家疏柳低迷,幾點流螢明滅。夜帆風駛,滿湖煙水蒼茫,菰蒲零亂秋聲咽。夢斷酒醒時,危檣C絶。   心折,長庚光怒,群盗縱横,逆胡猖獗。欲挽天河,一洗中原膏血。兩宮何處?塞垣只隔長江,唾壺空撃悲歌缺。萬里想龍沙,泣孤臣呉越。」 と使う。 ・危:高い。 ・獨夜:ただひとりで自分だけ起きている夜。白居易に『杪秋
獨夜』「無限少年非我伴,可憐C夜與誰同。歡娯牢落中心少,親故凋零四面空。紅葉樹飄風起後,白鬚人立月明中。前頭更有蕭條物,老菊衰蘭三兩叢。」がある。  ・舟:小船。作者のいるところ。

※星垂平野闊:空から星が降ってきて、平野は広々とし。 ・星垂:地の涯まで星空が見えるさま。 ・闊:〔くゎつ;kuo4●〕(門内が)ひろい。(見わたして)幅広である。

※月湧大江流:月は、湧(わ)き起こって、長江(ちょうこう)は流れている。 ・湧:わき出る。わきあがる。あふれる。盛んに出る。吐く。普通、月の動きは「出」「上」等と表現するが、「湧」とするのは作者が動的な表現を狙って、一連の「垂」「闊」「流」とともに「湧」を使った。 ・大江:長江を謂う。

※名豈文章著:名声というものは、はたして、文章力で著(あら)われるものなのだろうか。 ・名:名声。 ・豈:〔き;qi3●〕どうして。あに。疑問・反語の助辞(字)。 ・文章:文学。 ・著:あらわす。

※官應老病休:(やはり名は、政治上であげるものではあるが)官の職位は、老(お)いや病(やま)いで、止まってしまった。 ・官:官職。官位。杜甫の最終の官は節度参謀、検校工部員外郎。 ・應:当然…であろう。まさに…べし。 ・老病:〔らうびゃう(らうへい;lao3bing4●●)〕年をとって病身であること。 ・休:やむ。

※飄飄何所似:風に吹かれて彷徨(さまよ)っているさまは、何に似ていようか。 ・飄飄:〔へうへう;piao1piao1○○〕風に吹かれて軽く上がるさま。彷徨(さまよ)うさま。ひるがえるさま。風が物を翻すように吹くさま。東晋・陶淵明の『歸去來兮辭』に「歸去來兮,田園將蕪胡不歸。既自以心爲形役,奚惆悵而獨悲。悟已往之不諫,知來者之可追。實迷途其未遠,覺今是而昨非。舟遙遙以輕颺,
飄飄而吹衣。問征夫以前路,恨晨光之熹微。乃瞻衡宇,載欣載奔。僮僕歡迎,稚子候門。三逕就荒,松菊猶存。攜幼入室,有酒盈樽。引壺觴以自酌,眄庭柯以怡顏。倚南窗以寄傲,審容膝之易安。園日渉以成趣,門雖設而常關。策扶老以流憩,時矯首而游觀。雲無心以出岫,鳥倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。」とあり、唐・高適の『燕歌行』に「漢家煙塵在東北,漢將辭家破殘賊。男兒本自重行,天子非常賜顏色。摐金伐鼓下楡關,旌旆逶迤碣石間。校尉衷藻瀚海,單于獵火照狼山。山川蕭條極邊土,胡騎憑陵雜風雨。戰士軍前半死生,美人帳下猶歌舞。大漠窮秋塞草腓,孤城落日鬥兵稀。身當恩遇恆輕敵,力盡關山未解圍。鐵衣遠戍辛勤久,玉箸應啼別離後。少婦城南欲斷腸,征人薊北空回首。邊庭飄飄那可度,絶域蒼茫更何有。殺氣三時作陣雲,寒聲一夜傳刁斗。相看白刃血紛紛,死節從來豈顧勳。君不見沙場征戰苦,至今猶憶李將軍。」 とあり、中唐・張仲素は『塞下曲』で「朔雪飄飄開雁門,平沙歴亂捲蓬根。功名恥計擒生數,直斬樓蘭報國恩。」と使う。 ・何所似:何に似ているだろうか。 ・何所-:どこ。どんな。何。後に動詞を附けて、行為の目標または帰着するところを謂う。

※天地一沙鴎:(それは)天地の間を飛ぶ砂浜にいる一羽のカモメにだ。 ・天地:天と地。あめつち。天壌。世の中。 ・沙鴎:〔さおう;sha1ou1○○〕砂浜にいるカモメ。


               ***********




◎ 構成について

 韻式は、「AAAA」。韻脚は「舟流休鴎」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。

●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○●●●,
●●●○○。(韻)
○●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
○●●○○。(韻)

2008.9.30
2009.8. 3



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