永遠(とわ)に美しく……」(92)を見た。

 これは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」等のロバート・ゼメキス監督の映画で、
不死の薬を飲んでしまった人たちを描いた、まあブラックコメディと言える作品だ。
不死になってしまう女性2人を演ずるのは、
「ファール・プレイ」「プライベート・ベンジャミン」等のゴールディ・ホーン。
サスペンスだろうと、軍隊ものだろうと、妙にやかましい口調でわめきたて、
「バード・オン・ワイヤー」では、10歳も下のメル・ギブソンと共演するなど
歳の割に若いと言われ続ける女優だ。一度ファンになると、けっこう味がある。
対するは、(ゴジモスのようだ)アカデミー賞候補の常連の、メリル・ストリープ。
そのために高飛車な印象があるが、「心みだれて」ではコミカルな役柄だったし
「愛と悲しみの果て」では、ロバート・レッドフォードをわき役にする
たくましい女性を演じた。
「ソフィーの選択」のような映画は敬遠するが、これまたけっこう味がある女優。
この2人にはさまれた男優は、「ダイ・ハード」のブルース・ウィルス。
しかし、この人は、「ベイビートーク」の声の出演はともかく、
他の出演作は、ほとんど評判がよくない。
そもそも、「ダイ・ハード」が平凡な(死なないけど)警官の役柄だったせいか。
そして、秘薬を渡す女性に、イザベラ・ロッセリーニ。
イングリット・バーグマンの娘で、「ブルー・ベルベット」等に出演。
と言うわけで、ブルース・ウィルスに、若干の不安を抱かせながら、
音楽もゼメキス映画常連の、アラン・シルベストリだし、
それなりに楽しませてくれるだろうと思って、見た。
(ま、それ以外にもいろいろあるけど)

 舞台女優のマデリーン(メリル・ストリープ)は、
今では「まだ出てたの?」と言われるほど、人気も落ちぶれていた。
作家志望のヘレン(ゴールディ・ホーン)とは、
「マッド(狂人)」「ヘル(地獄)」と呼びあい、友人を装うがけっこう仲が悪い。
(ゴールディ・ホーンが、メイクでブスな女を演じている)
ヘレンは恋人の整形外科医アーネスト(ブルース・ウィルス)の真意を確かめるため
マデリーンの舞台へ連れていく。アーネストは、マデリーンの大ファンなのだ。
案の定、彼は大はしゃぎ。
今まで、嫌がらせのようにマデリーンに恋人を取られてきたヘレンは、
実はこういう訳で会わせたのよと話すと、
バカな。ぼくには君だけだよ、とアーネストは言うが、大方の予想通り、
場面が変わると、マデリーンとアーネストの結婚式に。ヘレンは無茶苦茶悔しがる。
それから7年後。ヘレンはブクブクに太り、思わずごっつぁんですと言いたいほど。
マデリーンを恨み、彼女が映画で、殺されるシーンを繰り返し見ては喜ぶ。
だが、家賃滞納だか何かで、アパートを追い出され、精神病院に入れられる。
そこでは、患者たちが自分の心の内を話すのだが、
ヘレンに順番が来ると、いつもいつもマデリーンの事。
それが入院以来半年も続いているものだから、他の患者はヒステリーを起こし、
思わず医師も忠告。みんなのためにも、彼女の存在は心から抹殺しろと。
ヘレンは、それにヒントを得て、何かを決意する。

 さらに7年後。マデリーンは(14年前にすでにふけてたが)今では50歳。
アーネストの財産のおかげか、豪邸に住むが、ぐうたらな生活。
一方、アーネストも彼女のせいか、アル中になり、
整形外科医どころか、葬式用の死化粧職人に落ちぶれていた。
もっとも、その業界では1、2の腕前で、ペンキを利用して生きているように見せる。
(死体には、普通の化粧ではダメだと彼は言う)
マデリーンの所へ、ヘレンから手紙が。それは出版パーティの招待状だった。
ヘレンへの意地もあって、何とか老けをメイクでごまかせないかと東奔西走。
しかし、何ともならない。そんな時、メイクアーティストが、
金に糸目をつけないなら、いい人を紹介すると言う。だが、彼女はあきらめていた。
アーネストと共に、パーティへ。そこにいたヘレンは意外な姿だった。
同じく50歳だと言うのに、何十歳も若くなっているのだ。
(と言うのは、映画の筋だからの話で、老けメイクとの落差はあるが、
やっぱり驚くほど若くは見えないぞ)
アーネストはコロッと彼女になびき、ヘレンはマデリーンを軽くあしらう。
これはマデリーンにとって、この上ない屈辱だった。
傷心の彼女は、愛人の所へ。だが、彼には別の相手がいる事が発覚。
年相応の相手とつき合えと言われ、泣きながら運転するマデリーン。
バックミラーの自分の顔を見て、ギョッ!とするほどふけているのだ。
その時、メイクアーティストがくれた名刺を思い出し、その住所の屋敷へ行く。
そこでは、マデリーンが来る事がわかっていたかのように、出迎えが。
リスル(イザベラ・ロッセリーニ)と言う女性は、何と70歳。
とてもそうは見えない若さだ。その秘密は秘薬。
だが、これを飲めるのは、選ばれた人物だけだ。
法外な値段を要求され断るマデリーンだが、試しに手に薬をつけると
みるみる肌がきれいになるので、結局金を払う事に。
薬を飲むと、お尻やら胸やらがキュッキュッとふくらむ効果が。
リスルは、この薬によって人前に出られるのは10年間だけと言う。
それを過ぎると、他人が不審がるからだ。
そういう時は、死んだ事にしたり、行方不明になったりする。
グレタ・ガルボもここの客だったと言うのだ。
そして、最後に一言忠告が。体には気をつけろと。何の事かわからず、彼女は帰る。
一方、ヘレンはアーネストと接近。マデリーンと別れるようそそのかす。
彼女は、町中に男をつくっている。だが離婚しては、財産を奪われてしまう。
彼女を薬で眠らせ、酒をまき散らした車に乗せて、崖から落とせば、
誰もが酔っぱらい運転による事故と思うだろう。
だが、アーネストは殺しはごめんと拒否する。

 帰宅するマデリーン。彼女は上機嫌だが、アーネストは変化に気がつかない。
アーネストはマデリーンの浮気を知って怒っており、口論に。
あんたなんてインポよ等と言われるものだから、
カッとなって階段の上なのにドンと押してしまい、落ちそうに。
アーネストは悪魔のささやきを聞いて、彼女をそのまま階段の下に落としてしまう。
長い階段をゴロゴロ落ちるマデリーンは、首をゴキッと折って一番下まで。
どう見ても死んでいる。脈もない。
ヘレンへ電話。君の言う通り殺したと言うが、彼女は手順が違うのであわてる。
警察より先にヘレンへ電話した事が発覚したら、不審に思われるのでは。
それならば、ヘレンに電話していた時に、階段を踏み外したと言えばよい。
多少の死亡時刻の差はわからないものだ。
ところが、その時、アーネストの前で大変な事が起きたのだ。
死んだとばかり思っていたマデリーンが立ち上がり、彼らの会話に激怒していた。
しかも、彼女の首は前後逆についているのだ。
彼女は体の調子はおかしくないのだが、前へ進もうとすると後ろへ進むので混乱。
アーネストによって事実を知らされ、ショックを受ける。
2人はあわてて病院へ。医師はまず手首を見る。
手首は少なくとも3箇所で骨折しているが、マデリーンは痛くもかゆくもない。
そして、首は完全に骨折。体温は20度を割り、脈はない。
医学的見地から言えば、彼女は間違いなく死んでいる。これは奇跡だ。
医師はまさしくサジを投げ、逃げ出してしまう。ショックで気絶するマデリーン。
アーネストは別の医師を捜しまわるが、重傷患者が大勢で暇な医師はいない。
そうこうしていると、マデリーンは遺体安置室へ連れていかれてしまった。
アーネストが助け出し、とりあえず帰宅する。

 一方ヘレンは、電話の途中でアーネストが叫びだし、状況は不明のままだ。
屋敷の前で見張っていると、アーネストの車がすごい運転で帰宅。
死体をわざわざ持って帰ってきて、家に運び込んでいる様子だ。
そして、大量のペンキを持ち込む。
それもそのはず、魂は死なないが、肉体は死んでしまったマデリーンは、
どんどん肉体が崩れてしまうのだ。
そこで、アーネストが死化粧の技術で、マデリーンを生きているように見せるのだ。
そんな事とは知らないヘレンは、アーネストを呼び出し、何してるの?等と話す。
そこへマデリーンが。彼女、生きてるわ!
マデリーンは2人の計画に腹を立て、猟銃でヘレンを撃つ。
吹き飛ばされたヘレンは、そのまま噴水の中へ。
アーネストは人殺しだと怒るが、マデリーンにしてみれば、ガス室も平気だ。
2人は、とりあえず死体を処分するために、ビニールを敷いたりしている。
すると、またも大変な事が。腹に穴の開いたヘレンが立ち上がったのだ。
ヘレンは、びしょ濡れよ!と怒るが、それどころではない。
マデリーンは、ヘレンの服につけられたバッチみたいなのを見て気づく。
彼女も、あそこで秘薬を飲んだのだ。
憎しみあう彼女は、シャベルを持って格闘に。首が折れたり、へこんだり。
だが、不死の彼女らには何の意味もない戦いだ。
ようやくそこに気づいた2人は、和解してこれからの事を考える。
とにかく、アーネストの技術がなければ、人前へ出る事はできない。
昔から仲の悪かった2人は、ようやく協力してアーネストの所へ。
だが、アーネストは、今回の事で自分の優柔不断さに気づき、出ていく事を決意。
最後の仕事として、ヘレンの死化粧だけをして。

 翌朝。2人の女性は、何とかアーネストを引き留めようと考える。
そのために一番なのは、彼にも薬を飲ませる事だ。
そこで最後に一杯どう?等と言って、グラスを渡す。
(買った薬は全部飲んだから、睡眠薬で眠らせ、
リスルの所へ連れていくと言う事だと思うが)
だが、アーネストは興奮して今までの生活を反省して話すものだから、
グラスから酒がこぼれる。最後の少しも、断酒すると言う決意から捨てられる。
怒った2人は、アーネストを殴り、気絶させる。
アーネストが気づくと、そこはリスルの屋敷だった。
彼女はアーネストの技術を認め、タダで薬をあげると言う。
不死の薬に魅力を感じるが、ポケットに入れて飲まず、逃げ出す。
屋敷では、「死んだはず」の人々が集まってパーティをしている。
ちょっと見ても、マリリン・モンローや、プレスリー等のそっくりさんが。
そこを通過して、別の部屋へ行こうとするアーネストを発見するマデリーンら。
アーネストは古城のような屋敷を逃げ回り、屋根を伝って逃げようとする。
だが、マデリーンらがかけつけると、足をすべらせたアーネストは、
樋に引っかかって、宙ぶらりに。
マデリーンらは、薬さえ飲めば、落ちても平気とそそのかすが、彼は拒否。
樋が壊れて下へ落下。だが、運よくプールがあったため、彼は助かる。
表へ出たアーネストは、ジェームズ・ディーンが乗ろうとする
彼が死んだ時に乗ってたスパイダーとか言う車を奪って立ち去る。
そして37年後。アーネストの葬式が行われる。
彼は、50歳からが人生の始まりと称して、それ以前を秘密にし、
天才科学者だか何だかで大成功。また断酒の会というのも発足した。
式には、2人の女性が。以前のアーネストを知っている2人は、笑いが止まらない。
とは言いつつも、泣いてしまったヘレンは、ペンキが落ち、
「20番のペンキはどこ?」等とバカな事を言っている。
騒々しいので、外へ出た2人の顔は、失敗したプラモデルのように、ゴツゴツだ。
再び激しい口論となり、押しあった彼女たちはそのまま階段を転げ落ちてしまう。
陶器のように、2人の体は粉々に。
頭だけになった2人はまだ死なず、車どこに駐車したかしら等と話すのであった。

 と言うわけで、この映画は、永遠の生命と言うよりは、
永遠の美を求める事が、いかに滑稽であるかを描いた作品と見た。
そういうテーマとしては、きちんと描けているとは思うが、
この映画の白眉と言うべき、不死具合が描かれるのは、かなり後半に入ってからで、
それまではけっこう退屈に思える。
その割に、不死になってからは、すぐ2人が和解してしまう。
ブルース・ウィルスが屋敷の中をウロウロするシーンも、ムダに長く感じられた。
そして、前述したように、2人の女優が、何て若いの!と驚くほど
若くは見えなず、リスルにさえそれが感じられて、メイクの限界を感じさせる。
女性には深刻な事だと言われると、そこまで……と思うが、
美人の方がいいには違いない。
ブルース・ウィルスは、2人の主役の前には立つ瀬がなく、
いいとか悪いとかそういうのはナシ。
アラン・シルベストリの音楽は、全編「サイコ」か何かのような
ヒッチコックスリラーを思わせる曲。
 

ドンファン(95)

 引退の近い精神医ジャック(マーロン・ブランド)は、自殺未遂を起こした
ドンファン(ジョニー・デップ)と称する男の治療をする事に。
彼は幼い頃から女性を惹きつけ、家庭教師ドンナ・フリアと恋に。
彼女の夫と父が決闘するハメになり、父が殺され、ドンファンは夫を倒して去る。
アラビア王室の奴隷になり、1000人の女性がいるハーレムに。
そこも去り嵐でエロス島へ漂着。ドンナ・アナと言う女性と恋に落ちるが、
彼女は1500人も愛したと言うドンファンにショックを受け、立ち去ったと言う。
彼の話を聞くうち、ジャックは妻マリリン(フェイ・ダナウェイ)への愛が再燃。
ドンファンの本名はジョニーで、メキシコへ行った事もないと判明。
ドンファンは自殺のフリをしたと認め、正常だとして放免される。
彼はジャック夫妻とエロス島へ。そこには彼を待っていたドンナ・アナがいた。

 と言うわけで、現代に現れたドンファンの話と言うわけだが、
彼のホラ話ほど現実での展開が面白くない。
周囲が影響を受けたり、ドンナ・アナは本当にいたりで、よくわからない。
音楽はマイケル・ケイメン。

TV放送 97/01/10 BS05 21:00-22:40