徹底解析! 重箱の隅 第8回
物語は、ククト星でのリベラリストとの合流も果たし、結果的には、彼ら主導で和平がもたれようとしていた。しかし、弱体化の一途をたどった、政府軍も最後の抵抗を見せる事になる。
いよいよ、本編の重箱の隅、最終回か?残りの問題点を列記して行こう。
・カチュアの生みの親は生きているのか?(41)
・疾走する車両から飛び降りて、なんでだいじょうぶなの?(41)
・軍の命令によって、ミューラァの地位はどうなった?(42〜)
・地球軍の陣容など、42話の救出劇を考える
・どうして、これだけでゲリラを壊滅させようとしたの?(44/45)
・休養を命じられた身分で、乗り込めたのはなぜ?(44)
・突如飛び出したミューラァの発言を考える(44)
・最後の最後で飛び出した、重要発言(45)
・交渉相手を「反政府側」に決めた地球軍の意図は?(46)
・カチュアがなぜジミーの一言で決めたのか?(46)
○カチュアの生みの親は、生きているのか?
ククトニアンである事を知ったカチュアは、ククト星に降り立つものの、育ての親はシャトルと運命をともにしてしまっていた。ククト星に行けば生みの親に会えると思っていた彼女にとって衝撃的だったのは、今ククト星自体が、「政府軍VS反政府軍」の戦場になっていて、一般の民間人は、コロニーにいるということだった。
しかし、彼女の産まれ故郷は、ククト星ではない。明らかに、クレアド星である。なぜか?カチュアが、地球人に育てられるためには、当時、地球人とククトニアンが接点を持っていたクレアド星以外に無いからである。しかも、その接点は、「戦場」と言う、かなりハードな状況下でのことである。
そして、ラレドの発言が、耳を劈く。
『地球の軍隊によって、ククトニアンの移住実験プロジェクトプランは破壊され、全滅してしまいました』
『全滅』…。辞書で引くまでもない。ほぼ全員が死亡したと考えられるのである。わずかに生き残った人が、生まれて間もないカチュアを地球人に託したのではないだろうか?
ここが問題である。もし、カチュアの生みの親の、どちらか一方でも生きていれば、地球人に預ける、と言った「他人任せ」をするだろうか?良く似た状況は、旧満州での「日本人孤児」に代表される、一家の離散である。戦争状態で食い扶持を減らすために、当時の中国人の家庭に里子同然でわが子を預ける。これが、孤児たちの悲劇なのであるが、果たして、カチュアの一家もこの状況と似ていたのだろうか?
私の推理はこうである。・カチュアの両親は、カチュアをかばうために、死亡している ・カチュアを見つけたのは、別のククトニアン ・しばらく自分たちで育てようとするが、手に余ってしまう ・たまたまやってきた、地球人の科学者(=カチュアの育ての親)に預けてしまう と言った経路をたどって、カチュアは育ての親のもとにたどり着いた、と言う説である。
この説の前提条件として、「両親は死んでいる」を上げた。何しろ、地球軍は、罪も無い科学者たちに、無差別攻撃を加えている。その犠牲にカチュアの両親がなっている確率は、かなり高いとみていい。もちろん生き残った人もいただろうが、その日の食料にも事欠く状態で、赤ん坊の面倒を見ることなど、不可能だろう。当然、経済的にもゆとりの有る地球人に預けるのが一番納得の行くやり方だろう。
そうなってくると、カチュアの両親は、クレアドで地球軍に殺され、育ての親は、ベルウィック星上空でククト軍に、殺されている事になってしまうのである。哀れ、カチュアの両親たち。
しかし、彼女は、自分の両親が、地球軍の戦火を逃れて、生きている、と信じていたのだろうか?これまた、真相は闇の中である。
○疾走する車両から飛び降りて、なんでだいじょうぶなの?
かるーく書いて行きたい。そもそもの事の起こりは、サライダが、ミューラァに気を許したからに他ならないのだが、ここから先があまりにとっぴである。まず、カチュアを人質にし、トラックに遺跡を積みこませ、アジトを強行突破、それを追ったロディは、うまくトラックの背に乗り込む事に成功する。
しかし、車内にとどまっているミューラァの方に軍配が上がり、ロディは、振り落とされてしまう。それを見たカチュアも、疾走するトラックから飛び降りてしまう。
もぅ、ここは、断然、おかしい場面である。ロディとカチュアが、軟体動物か、骨が無いと言うのであれば、あのスピード(逃げるミューラァの事。どう考えても時速80Km/hは出ているはず/しかも精査したところ、運転席のコンソールに「80」の文字が見えた。仮にキロ表示でも、もちろんマイル表示でも相当のスピードが出ていたと考えられる)で飛び降りたとしても、怪我はするはずも無い。
ところが、彼らは、無数のかすり傷は負っていたものの、頭や骨などには、なんの異常も無い様子なのだ。しかも出血している/服が破れるといった、ダメージすら感じられないのである。確かにその後、ミューラァに蹴られるなどして唇から出血はしているが、車両から飛び降りた(振り落とされた)時の傷はそれほどでもない様子なのだ。それは、以後の行動が物語っている(ロディはカチュアの元に駆け寄っている<それもかなりのスピードで>/連れ立って逃げ出そうと出来ている/もちろん以後の行動で傷を治療しているというような描写は認められない)。
なぜ、折れずに済んだのか?運がいいとしか言いようがないのだが、科学的に証明できるほど、充分な知識を持ち合わせていない。しかし、画面上では、どう見たって、どこか折れていると思うのだが…。
それにもまして、「死なずに済んだ」ことの方がすごいか?
○軍の命令によって、ミューラァの地位はどうなった?
42話で、意気揚揚と自陣に戻るミューラァ。だが自分の元いた席には、新任の司令と、その部下である将校がミューラァの帰りを待っていたのである。
帰還の報告をするミューラァ。だが、それにつれない対応をする司令。そして、ミューラァが詰め寄ったその時、司令がついに本音を語る。「君には地球人の血が混じっている、この作戦には向いていない」と。そして、休暇を取るよう「命令した」のである。
司令の命令は絶対であるはずである。軍の統率をつかさどる司令だから、部下に指示/命令できるのである。と言うことは、この時点で、彼・ミューラァは、軍の中でどのような地位にいたというのだろうか?
まず「休暇」を額面どおり受け止めると、役職などの地位はそのままで、本当の休暇中ということになる。しかし実際の画面上では、自分の部隊を奪われ、新任隊長のお手並み拝見、などと、自嘲気味に新任将校にいっているところからして、完全に「窓際」的な地位に格下げになったと見るのが正解である。
とはいうものの、ちょっとおかしな命令ではないか、と思ったのは私だけであろうか?たとえば、遺跡の反作用化が無力化できるシールドが完成したことをミューラァは知らされていない。知っていれば、わざわざ危険を犯してまで敵の手にあった遺跡を奪回しようとは思わなかったはずである。そして命令を忠実に守り、敵の手に渡っていた遺跡を奪回してきたのに功労を与えるどころか、三行半を突きつける…。
そこで浮上するのが、「この司令、相当の悪」という図式である。もちろん、司令の下にくっついている、新任隊長も同罪である。というより、彼らが仕組んだ、ミューラァ隊への「わな」ではないか、とさえ感じてしまう。
功労者が虐げられる、軍の狂った賞罰制度…。ミューラァが軍の狂気に気づくのには、そう時間はかからなかった。
○地球軍の陣容など、42話の救出劇を考える
いよいよ、両親が囚われているとされる収容所が、発見され、うまくご対面か、と思われたそのとき、この収容所に向かって、地球軍が侵略を開始したのである。まさに、一足違い。結果的に、シャトル一機に乗った収容所にいた人々は、宇宙空間に舞い戻って行った。
さて、このときの状況を垣間見てみよう。ロディたちが到着したときには、既に交戦状態になっていた。避難民を乗せるべきシャトル一機は早くも炎に包まれ、守備隊と交戦していた地球軍の機動兵器部隊も、壊滅寸前のところだった。
そこへ、リベラリストとのタッグを組んだロディたちが助太刀、見事に収容所を制圧する。そして、クレアの父親を乗せたシャトルは、クレアのもとから離れて行ってしまうのである。
まず、この42話では、「クレアの父親がいた」と言う事実だけは判明したわけだが、肝心の、クルーたちの両親の存在が不明瞭である。「全員無事」という確約が取れるためには、この時点で、10組もの両親が乗り合わせていないといけないことになる。
しかし、今までの状況などから、こう言った事が推察される。
・クレア…父親は、拿捕当時シャトルのパイロット。母親が同じ便に乗っているとは考えにくい
・スコット…クレアの父操縦のシャトルに乗船。同行している可能性大。
・ロディ…両親の所在不明。ロディたちより早く脱出?
・ペンチ…両親の所在不明。
・マルロ/ルチーナ…脱出のタイミングなど、全く不明。
ただし、ルチーナの両親のみ、タウト星にいた痕跡有り。
・マキ…かなり早い時期に脱出と予想。所在不明。
・シャロン…母親は星間のダンサー。当時どこにいたか不明。父親も所在不明。
・バーツ…脱出は、一番遅いはず。所在不明。
・ケンツ…両親は所在不明。彼の兄の生死も若干気がかり。
・ジミー/カチュア…既に両親は死亡。
と言うわけで、あのシャトルになんとか乗っている可能性があるのは、スコットの両親と、クレアの父親、うまく行けば、ルチーナの両親と言う非常にさびしい結果になってしまったのである。では、クルーの両親が、全員無事である可能性は本当にあるのだろうか?
痕跡が残っていたのは、ルチーナの両親である(29)。しかし、これ以外に、発見もされず、居場所もはっきりしていないとなれば…?考えられるのは、
@別の場所にも捕虜収容所があった
A捕虜になっていたのはごく限られた人たちだけである
と言う仮説である。
最終話で、バンガードの機上、会話できていたのは、スコット、マルロ、ルチーナ、バーツ、ロディである。そのほかのものたちは、話すところどころか、本当に無事であったかどうかすらわかりにくい。
そこで、Aのような、仮説も出てくるのである。つまり、話題に上らなかった子供たちの両親(ペンチ、シャロン、マキ)は、ククト軍に捕まらずに、なんとか脱出できて無事だ、と言う事である。また、ケンツについては、会話できていたようだが、シャロン・マキと脱出のタイミングがほぼ同一と言う事から、彼の両親も捕まらずに済んだ、と推察される。
別の場所の捕虜収容所の存在は、どうだろうか?あちらこちらに、収容所を作る事は、管理上、面倒な事になるのは、自明の理である。まして、地球人捕虜の数は、どんなに多く見積もっても、500人程度。長引く捕虜生活で、命の火を燃やし尽くした人も何人もいるはずで、2箇所以上も作る事は、考えにくい。それでなくても、反乱分子の収容所があるくらいなのだ。手が回らなくなっていても不思議は無い。
だとすると、全員、もし、ククト星につれてこられたとすると、あのシャトルに乗り切った、としなければ、「全員無事」と言う事にはならないことになる。しかし、これはストーリー的に無理がありすぎる。
まず、29話で、収容されていた部屋の大きさを思い出してもらいたい。そんなに大きかったですか?体育館ぐらいあれば、300人くらいは収容できるはずだが、どう見積もっても100人が限界のような大きさだった。
もし、仮に、「タウト星に、クルーの両親が全員いた」とすると、100人のうち、全体の20%がクルーの両親で占められている。これほど偏りを見せているとは、考えにくい。もし、そうだとしたら、あの壁面は、クルーを気遣うメッセージでうめ尽くされていたはずである。しかし、ルチーナのしか見つからなかった。これは、とりもなおさず、ルチーナの両親はタウト星につれてこられたことの裏づけである。逆の事を言えば、もし仮に、タウト星でうまく対面できていたとしても、会える可能性が一番高いのがルチーナの両親、と言う事でしかない。もしかすると別のルチーナちゃんに当てたメッセージかもしれない(プレシェット家のルチーナ、とは書かれていなかった。ちょっと意地悪で卑屈な考えだが)。つまり、「クルーの両親全員が、タウト星にいたわけではない」と言う事がわかる。
ではククト星にいた、あれほど多数の地球人はどうしたのだろう?推測の域を出ないが、直接ククト星につれてこられたのではないか、と思うのである。となると、あの証言が気になる。そう、ラレドのあの証言である。抜粋してみよう。
『それともうひとつ重大な事があります。実はベルウィック星など、植民星から地球へ向かったほとんどの船が、ククトニアンの軍隊によって、囚われています。
(なんですって!!)
一応全員無事ではあるのですが、悪魔の星と呼ばれている、ククトの衛星タウトに収容されております。(タウト星...)』
この証言が正しいとするならば、「拿捕された人々は、全員タウトに行っていたが、逃げた人が全員囚われたわけではない」と言う風に解釈できる。しかし、たとえ彼の身分が、和平論者だとしても(私の仮説で、二重スパイの嫌疑も掛けられたが)、「見てきたように」断定できる立場にあったわけではない。彼の情報の大半が聞き伝えである。そう考えると、彼の情報に、100%の信頼性は与えないほうがよさそうである。というわけで、ここではこの証言は、完全でない事と解釈すれば、今までの設定などを全て矛盾なく活かすことができるのである。
次は、地球軍が、ククト星の収容所で行っていた救助活動についてみてみよう。地球軍は、避難民のために、シャトルを2機用意していた。ということは、この収容所に、300人はいた、とするのが、正解だろう。
しかし、一機は使用不可能になり、おそらく、その途上で、犠牲者も何人かは出ているはずである。脱出できたのは定員を少し上回る、200人程度と考える。しかし、ここでも、20/200、つまり、クルーの関係者だけで、10%もいるというのは、うま過ぎである。
こう言った事から、Aの仮説は、案外正しいのでは、と言う結論に達するのである。戦闘に巻き込まれていなければ、当然「無事」なわけで、会話自体も、別の回線を使うことだって可能である。「絵」が入っていなかった事を考えても、それほど無理な話ではない。
いずれにしても、クルーの両親は、『全員が、必ずしもタウト/ククト星にいたとは限らない』という結論を持ってでないと、矛盾が多い事になってしまうのである。
○どうして、これだけでゲリラを壊滅させようとしたの?
奇襲作戦が43話で成功したとはいえ、それはあくまでも、「地上軍」がダメージを受けただけのことであって、ククト軍自体の損失は、それ程でもないと推定されるのである。しかし、地球軍とコンタクトを持とうと宇宙空間に打って出た反政府ゲリラ軍を追撃したククト軍の陣容が余りにショボイのである。
だから、たとえ一機とはいえ、反旗を翻したミューラァのちょっとした攻撃に回避運動を余儀なくされ、また追撃に手間取るといった無様な対応を迫られるのである。
もし本気でゲリラ軍の壊滅を願うのなら、司令は「一人」ではないはずである。この司令だけが、急進派で、ほかが穏健派/自重派とは到底思えない。また、タウトでの戦闘で部隊が壊滅したとはいっても、あれが「大多数」とは思えない。つまり、ククト星内での残存勢力の掃討に必要な部隊を差っぴいても「外」(宇宙空間)に出せる戦力はまだ残っていたはずだ。なのにたったあれだけの陣容で追撃/壊滅を願うなど、虫がいいにもほどがある。
しかも、悪いことに、44話では自軍の兵器をビーム砲で攻撃してしまっている。こんなめちゃくちゃな戦法では、対戦力比では圧倒的でも、ゲリラ軍を倒せるわけがない。
○休養を命じられた身分で、乗り込めたのはなぜ?
42話で、新任の司令に、突如の休養命令を出されてしまった、ミューラァ。それ以後、ククト星では、出撃する機会すら与えられず、閑職を縦にしていた。
しかし、バイファム打倒という信念は益々盛んになり、ついに、44話で、司令が指揮する、ジェダたちを追撃する艦隊に無断で乗り込んでしまうのである。
そもそも、部隊からはずされた人物が、その地位がかなりのものであったとしても、部隊に復帰、もしくは許可を得て乗船することができるものだろうか?彼は、無断で乗ってしまったのは間違いのないことで、このこと自体も驚きだが、乗せてしまった、軍にも、落ち度がないとは言いきれない。
しかし、もし、ミューラァを快く思っていない司令たちが、彼が乗り込んでくることを黙認し、宇宙空間に出たいといってくるに違いないと読み、彼の熱意に押される形でその要求を受け入れた後に、暗殺に似た形で彼を抹殺する…。こう考えていたとすれば、彼はまんまと司令の術中にはまったことになる。その後、司令が「許可なく出撃したな」などと居直っており、この説は案外正しいかもしれない。
○突如飛び出した、ミューラァの発言を考える。
44話で、第2陣として、ようやく宇宙空間に飛び出すミューラァ。彼の目標は、ロディの騎乗する、バイファムただ一つであった。宇宙戦を繰り広げる二人。実は、初めての宇宙での対決になっているのである(初めて見えたのは、31話。以後、ロディとは、32話、37話、38話、39話で戦闘シーンがある。しかし、いずれも地上=ククト星での出来事である)。
つばぜり合いに持ちこむ、ロディ。だが、ここで、ミューラァがとんでもない事を口走る。要約すると、『我々ククトニアンは、地球人の成長の過程をつぶさに見てきたが、地球に侵略の手をのばそうとはおもっていない』と言った内容の事である。
この事、実のところ、今までストーリーをつぶさに見てきてものなら、「なんで、こんな事、突然言うの?」と言う事なのである。ずばり言わせてもらうが、このせりふは全くいらなかったのである。
なぜか?今回の戦争の元を正せば、明らかに地球軍が口火を切っているのである。時は12年前(2046年ころ)、クレアド星にククトニアンが、移住実験プロジェクトを立ち上げ、しばらく経ってから(ここは推測の域を出ないが、1乃至2年後としたい)、地球軍が攻めてきた、と言うのが、事の起こりだからである。クレアド奪還に動いたククト軍は、実に、10年近くも地球人が住み着いてから、動いた、と考えられる。
しかし、「10年」も、クレアドに地球人がいたとは考えにくい事実がたくさんある。まず第一に、遺跡の発見である。10年間、誰の目にも触れずに遺跡が鎮座していたとは考えにくい。10年後に突然話題に上ったと言う事がおかしいのである。もう一つは、宇宙空間での、準備の悪さである。あれほどの大群を見落としてしまうのは、どう考えても、レーダー設備の不備だとしか考えられない。
では、ククト軍の襲撃は、クレアド星に地球人が移住してすぐの出来事だったのか?そう考えると、納得いくことも多い。例えば、軍が大半を掌握した直後に、民間人の入植が行われたと仮定すれば、軍の準備期間に6から8年、その間に、基地の整備や防空施設の設営などが可能となる。そして、その後に民間人がクレアドに入ったとすると、遺跡の発見が遅れ、研究対象にクレークたちが目の色を変えるのも無理は無い。もっと早くに入植が行われていれば、突然の様に、その中止を申し入れると言うのもおかしなことである。
これらの事から、ククト軍が、クレアドに攻めてきたのは、「地球軍が、クレアドをククトニアンから奪って、約10年後、民間人の入植が始まって、数年後」と言う事がはっきりする。
では、どうして、ミューラァがいった、発言が飛び出してくるのか?地球人が、あまりに感情的になってしまっているということが言いたかったのだろうか?
つまり、地球軍の立場を言えば、こうである。
『くそぉ、こっちが苦心惨憺手に入れたクレアドを奪いやがって。これほどまでにやる気であれば、連中、地球も獲りにかかるぞ。そうなったら大変だ。地球のありとあらゆる兵力を集結させて、打倒・異星人、これでいくっきゃ無い!!』
早とちり、とも受け取れる考え方であるが、そんな考えを持たせたのも、クレアドを奪還したときの兵力が、あまりに圧倒的だからである。だからなのかも知れないが、ローデン亡き後、あまりに早く、大部隊の地球軍が到着しているのも、頷ける話しである。
逆に、ククト軍のスタンスを書いてみよう。
『まぁそりゃ、元々俺たちが手をつけた星だからさ、力ずくで奪っては見たけどょ、あそこまでする事も無かったかなぁ、って、思ってるところ。捕虜も抱えてうっとおしいし、なにより、不穏分子がいるのが、ちょっとねぇ…。確かに戦ったら勝てるとは思うけど、地球にはあんまり興味ないし…。』
つまり、ミューラァの言い分が、軍の見解だとすると、ククト軍は、地球がほしいのではなく、「攻めてきている」と認識したからジェイナスを、クルーたちを攻撃した、と言うのが正解だろうと思うのである。
それにしても唐突な発言。又私を混乱させる一言であったことは間違いない。
○最後の最後で飛び出した、重要発言
45話は、私の中では、「最終回一話前」という、ある意味、最後の最後のストーリーを形成している、一番重要な位置にあると思っている。
しかし、ここでも、ちょっとおかしな脚本ミスが見つかってしまう。最も、これはおそらく、私だから見つけられたもので、他の方はおそらく素通りだろう。
それでは、この回のあらすじをまず紹介しておこう。地球軍とのランデブーが目前に迫り、リベラリストの船の中ではお祝いムードが高まっていた。まさにその日、ルチーナの誕生日であることがわかり、誕生日のお祝いをしようということになったのである。実は、この準備のあいだ、カチュアとロディのツーショットがあり、最終話に向けた一つの伏線になっているのだが、ここでは論及を避ける。
キッチンでクレア達がケーキ作りに没頭しているさなか、トラブルメーカーのケンツがしゃしゃり出る。そして、自分の誕生日が『来月の九日』と宣言して、ルチーナの誕生会に便乗を試みる。まあ、この部分ではOKが出たわけであるが、次のシーンでいきなりポカミスが出る。シャロンが会場にサンドを持っていく、その帰り際、スコット達に、こんなことを言ってしまうのである(せりふ部抜粋)
『あいつの誕生日、一週間も先なのに自分のも一緒に入れちゃいやがんの』
ハイ!地球時間で一週間とは、「7日」ですよね。では、「来月の九日」の一週間前は、「来月の2日」?!月いっしょやっちゅーねん!というわけで、よくよく脚本を読んでいたら気づきそうなポカミスを発見してしまった次第である。
しかし、本当に挙げたかった論点はここではない。これもあわや主役になろうとしたケンツが壇上に立って言ってしまう口上に隠されていたのである。
『顧みますれば、第一次クレアド戦役からはや半年…』
ということは何か?10月にクレアドが襲われて、今がちょうど6ヶ月目と言うことなのかいな?!13話までで約3ヶ月掛かっていたストーリーが、何とその倍以上のスピードで話が進んでいたことになる。
この件については、断固「考察」しなくてはならないねたである。ちなみに、どうなったのか、については、以下の考察をご参照いただきたい。
○交渉相手を「反政府側」に決めた地球軍の意図は?
最終回。感動のフィナーレが待ち構えているわけだが、脇筋として、地球軍とジェダたちによる交渉の模様が約1分ほど描写されていた。
スコットのナレーションでは、この交渉は「和平に向けたもの」という内容だったとされ、詳しいことは知る立場にないと述べている。ここで注意してもらいたいのは、地球軍と交戦しているのは反政府側ではない、ということである。もちろん、あの時点で、勝敗は決しておらず、流動的だったと考えられる。であるにも関わらず、停戦/和平の交渉ごとを、まだ旧政府軍を掌握できていない反政府側(臨時政府とでも言いますか…)が行っているのは、あまりにも性急過ぎる事態である。
ククトと地球連邦軍との約半年に及ぶ戦争は、現在の政府軍の、クレアド襲撃に端を発している。結果罪もない人々を殺戮し、捕虜としてタウト/ククトに移送するなど、かなりやりたい放題してきている感もある。とはいえ、クレアド襲撃自体は、ククトニアン移住実験プロジェクトを壊滅させた、当時の地球軍のほうが先である。このことに反政府側が言及してくる可能性はかなり高い。
これらも含めて、交渉でどのような内容が語られたか。交渉のテーブルに付く前の双方の思惑を吐露するせりふから類推してみる。
反政府側:ジェダ
問題は、地球側が最終的に何を要求するかだ・・・
地球側:ギャラクレー
あれこれ詮索するより、まず会うことだ。(略)ともあれ、この先、奴らと対応できるよう、パイプを作っておくのが常道というものだろう。
明らかに地球側は、反政府側の出方を伺いつつ、被害者としての立場を前面に押し出そうとしているのがよくわかる。相手とか敵さんなどという言葉より、やや汚い「奴ら」という言葉で反政府側を捉えていることからも、少なくとも相手を見下している様子は伺える。他方、反政府側は、地球側に何を言われるか、真意を測りかねている様子がはっきり描写されている。加害者は政府軍であり、そのあたりの落としどころをどこに持っていくかを思い悩んでいたと推察される。
加害者である政府軍でなく、あえてまだ新政権を担う所にまで達していない反政府軍側と対話を始める意図としては、反政府側のほうが、地球側としても御しやすいと判断したこと、これに尽きると思われる。会合のシーンを見てみると、地球側は、ジェダの読み上げる内容をただ黙って聞いているだけ。すり合わせなどは一切行わず、一通りの意見陳述が終わると、文書を手渡して握手し、こうお互いいいあって会合を閉めた。
地球「この会合をきっかけに、双方がよき関係に向かうことを期待します」
ククト「こうして会合を設けただけでも大いなる前進です。感謝します」
地球「この戦争を一刻も早く終結させたいのは私どもも同じです。記念すべき今日の成果を直ちに上層部へ送りましょう」
ククト「よろしく。お互い、あの子供たちに対して、恥ずかしくないだけのことはしたいものです」
地球「まったくです」
いわゆる、「玉虫色」といえる会合だったわけだが、地球側が意外に声が弾んでいるのがよくわかる。かなりの条件をククト側が提示したと見られるのである。ただし、内容などは、完全に脇筋であり、子供たちの最終話/最後の一幕にすら絡まない内容であることもまた確かである。
○カチュアはなぜジミーの一言で決めたのか?
ついに感動の最終回。しかし、まだどうしても解せないのは、地球に行くことと、ククト星に行くことを天秤にかけ続け、土壇場まで態度を保留していたカチュアの本心である。
前話(45)では、ロディとのツーショットで一応の解決を見ようとしたわけであるが、カチュアがこだわりつづけたのは、「産みの両親に会いたい」という1点である。しかし、すでに何度も述べているように彼女の生まれ故郷は、ククト星では断じてない。百歩譲ってククト星であったとしても、両親とともにクレアド星に来ていることは明らか(カチュアだけ、なんかの間違いでクレアドにいたとは100%ありえない話)である。そして彼女の生みの親が生きている可能性だが、「移住実験プロジェクトは全滅」というラレドの証言、そしてかなり後でサライダが語った、「本国に帰還したものもいる」発言を照らし合わせても、その可能性はきわめて低く、また、DNA鑑定をするといった手順を経ないと生存確認は取れないということも出来る。
つまり、「ククト星にいる」というより、「生きている」と信じているカチュアに、疑問符がつくのである。もちろん生きているならククト星のコロニー以外には考えられない。
だが、はたして、「ククト星行き」を決定付けたジミーの一言−−カチュアは、ママに会わなくて本当にいいの?−−が、ほかの、地球行きをおしまくった他のクルーの言葉より重みがあるのか、といったら、そうとはいえない。自らは既に両親のいないジミーに言われたからか?一緒に脱出してきた仲だからか?
クルーに暇を言った、最後のメッセージから、解析するしか手立てはなさそうである。
『みんな、ごめんなさい。わたし、デュボアさんたちと一緒に行きます。わたし、みんなと別れるのつらいけど、今地球へ行ったら自分の生まれたところへ二度と戻れないような気がするの。@そして、私もみんなと同じように、本当の両親に逢いたい。Aあえるかどうかわからないけど、とにかく悔いを残したくないんです。みんなと面と向かって話したら、やっと決心した自分の気持ちがダメになっちゃいそうなので、これをおいていきます。みんなの事忘れないわ。ジミーは止めたんだけど、どうしても私に付いてくるって。でも、きっと、又会えるわ。必ず会えるわ。だから、さよならは、私いわない。今まで本当にありがとう、みんな。』
下線@から分かることは、カチュア自身は「自分の出身地はククト星」であると信じて疑っていない向きがある。そして、下線Aでも、「自分の両親は生きている」と思い込んでいる。結局、この部分しか、判断のしようがないのである。
ここまで両親にこだわるカチュア。そのあと、彼女が両親に会えたかどうかは定かでない。
ジミーのひとことで本当に決めたのか?ということが頭の片隅にずっと残っていた小生は、最後の事象考察の対象としてカチュアを上げた。結果は、自分でも納得のいくものに仕上がっている。→事象考察Jへ。
<エピローグ>
当方が解析を始めたのが、覚えがある限りで、1990年代前半くらいである(少なくとも、阪神・淡路大震災よりかなり前に骨格的な部分は作り始めていた)。もはや、このアニメーションに関して言えば懐メロならぬ『懐アニ』の部類に入るはずであり、これを食い入るようにみていた青少年は、はっきり言ってかなりのおっさん/おばはんになっていると推察される(ロディと同年齢なら、なんと、彼は42歳・・・微妙に当方の年齢に近いOrz)。
そんな当方もいまだに推敲や新規ねたの発掘をやめないでいるのは、このアニメの持つ、不思議な魅力である。何度みても飽きないのだ。余談だが、もう一本、資料となる映像があれば徹底解析したいのが『太陽の牙 ダグラム』である。このアニメを、大人になって再度見るとどんな風に映るのか、検証してみたいのである。事ほど左様に、この時代の日本サンライズの作品は、奥行きが深く、かといって堅苦しくない作品もあり(バイファムは、初のゴールデン進出番組であり、万人受けする内容でなくてはならないという要請があったのは間違いない)、感動できる作品に仕上げられるだけのスタッフが山のようにいたことを示している。
2011/6で脱稿・完成を宣言したものの、見直すとチョコチョコ『ネタ』が転がっているのだ!しかし、際限なく揚げ足を取ることにいささか疲れた。最終話のリベラリストと地球側の対談シーンの解析を持って新規ネタ取りを行わず、この「徹底解析 重箱の隅」の記述を完成させることとしたのである。
どんなアニメにも完全無欠なものはない・・・。改めて、そう思う。