上級編
二条良基の『僻連抄』(1345 ?)による最古文献による分類は15。 平付の句(ひらつけのく)、四手(よつで)、景気(けいき)、心付(こころづけ)、詞付(ことばづけ)、埋句(うづみく)、余情(よせい)、相対(あいたい)、引違(ひきちがい)、隠題(かくしだい)、本歌(ほんか)、本説(ほんぜつ)、名所、異物、狂句(きょうく)。ただしこれは付けの態度、表現、題材による分類が混在したもの。その後宗祇(-1502)の分類を経て、宗牧(-1545)が『四道九品』(しどうくほん)で、付けの態度を中心に添(てん)、随(ずい)、放(ほう)、逆(ぎゃく)の4つに大別したのが画期的だったがあまり普及しませんでした。 蕉風の付合(つけあい)に至った過程については、『去来抄』の説、「先師曰く、発句はむかしよりさまざま替り侍れど、付句は三変也。むかしは付物を専らとす。中頃は心付を専らとす。今は、移り、響、匂ひ、位を以て付くるをよしとす。」が革命的で、今日芭蕉を讃える源泉となっています。 つまり貞門時代が物付(ものづけ)、談林時代が心付(こころづけ)、いまの蕉門時代が余情付(よじょうづけ)または匂い付けと奥行を広げたことになります。
小町+伊勢→貫之、踊→盆、というように前句のことばや物によって付ける。
前句のあらわす全体の意味や心持ちに応じて付ける、すなわち句意付けです。 <余情付> 移り(うつり)、響(ひびき)、匂ひ(におい)、位(くらい)の付けは、すべて広くいえば心付に含まれるが、談林風の心付が前句の意味内容に応じたものであったのに対して、蕉風のそれは前句の気分、余情、風韻を把握し、それに応え合い、響き合うものを付ける、これが余情付です。 付句を付けるというのは、まず付合(付けの種類)を物付にするか、句意付にするか、余情付にするかを決め、次に付心(つけごころ、付けの手法・態度)を決め、付所(付けの狙いどころと手がかり)を探してから、瞬時考えて句を作るという感覚的で、時には禅に通ずる暝想的な作業であり、その結果が付味(付けの効果)になります。
<付心と付所>付心と付所の分類としては、各務支考( -1731)提唱の七名八体(しちみょうはったい)説が合理的です。
●八体
1)其人(そのひと)
2)其場(そのば) 前句の人のいる場所を描写して付ける。下の付句の付心は会釈。
3)時節(じせつ) 前句の状態の時節を手がかりに付ける。下の付句の付心は会釈。
4)時分(時分) 前句の状態の昼夜、朝暮あるいは時刻を手がかりに付ける。ただし、この前句 自身が時分の句なので、ここでは時分では付けられない。
5)天相(てんそう) 日、月、星、雨、風、陰、晴などを手がかりに付ける。付心は多く遁句。
6)時宜(じぎ) 俳諧で時宜というのは、その世、その時の風俗にかない、その座その折の 時のよろしきにかなうものをいう。そういうものを付ける。付心は多く会釈。
7)観想(かんそう) 観想はもともと仏教語だが、俳諧では人世、世相に対する喜怒哀楽の情を 観じること。これを述べて付ける。付心は多く有心。ただし、下の例では 前句自身が観想なので、これに観想で付けることはできない。
8)面影(おもかげ) 故事や古歌などを使ってそれをおぼろげに表現しながら付ける。下の例は源氏の 明石入道の面影。
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