ちょう変小説
台湾の不思議な石

あれは私がタイペイに着いて、二日目の事だったと思う。私が街を歩いていると
一人の男が近づいて来て、「日本の方ですか?」とたずねてきた。「そうですが・・・」
と答えると「面白い物をお見せしましょう。」と言うので退屈しのぎに付き合ってみる
かと、その男の後を付いて行くと、古びた五階建て位のビルに入った。やはり、だい
ぶくたびれたエレベ-タ-に乗り、たしか、三階で降りたと思う。降りた正面にある部屋
のドアをその男がノックすると、中から愛想のいいおやじが出て来て、私達を中に招
き入れた。そこには、どこにもある様な応接セットが置いてあった。うながされて、そ
のおやじの正面のソファ-に腰を沈めた。でも、おやじはただニコニコ笑って私を見つ
めているだけだった。「なんだ、このおやじは?」と、いぶかしく思っていると、なんと突
然、中央のテ-ブルに置いてあるピカピカに磨いてある漬け物石くらいの大きさの石が
「こちらは陳さん・・・、こちらは、日本からいらした魚住さんです。」って言うではないか。
驚いたのなんのって。世の中にこんな不思議な石が有るなんて。私はびっくりして、
「こ、この石は何て言うんですか?」と聞いたよ。すると、そのおやじが教えてくれたんだ。
もう何十年も前の事だから、はっきりおぼえていないが、たしか、・・・「これが台湾で有
名な紹介石です。」とか言っていたかな。確かに、不思議な石だった。     [完]


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第1話