日本語アクセントの決定過程の構造(語のアクセントから文節のアクセントへのプロセス表記)
表記法
1.語のアクセント
名詞および他の固定アクセント詞 名詞および他の固定アクセント詞に付く付属語
動詞
形容詞
名詞および他の固定アクセント詞 (/の後にNまたはFおよび形態(発音)を表記する。どちらか一方の省略可。核があるときは位置を-で指定する。ないときは0または無記。)
普通名詞
/N 0
/N-1
/N-2
/N-3
/N-4
・
・
・アクセントが普通名詞と同様に扱われる語(その他の名詞、形容動詞の語幹、副詞、連体詞、接続詞、感動詞、数詞、数詞+助数詞など)であることを示したいとき
/F 0
/F-1
/F-2
/F-3
/F-4
・
・
・名詞および他の固定アクセント詞に付く付属語 (+の後に形態(発音)を表記する。核があるときは位置を-で指定する。ないときは0または無記。)
1拍語
+○ 0 (下記以外の語) ○は1拍を表す。 エ、オ、カ、ガ、ト、ニ、モ、ワ など
+ダ-1
+ャ 0 または-1
+ノc0 (2拍以上のN-1に付く場合) c0は前の核が消去され「ノ」自身にも核がない意。 ミミノ アシタノ
+ノ 0 (前項以外の場合)2拍語
+○○-2 (下記以外の語)(○+○も含む) カモ、コソ、サエ、ナラ、ノミ、マデ、ヨリ など
+シカ-2~3 -2~3は核が1拍遡って実現される意。
+カラ 0
+ホド 0 以下、0の表記は省略も
+ッテ
+ダケ 0 またはc0
+○ナ
+○ネ3拍語
+○○○-3 (下記以外の語)(○+○○や○○+○も含む)
+ラシイ-2 またはc-2
+ラシク-3 またはc-3
+グライ-3 またはc-3
+ゴトキ-3 またはc-3
+ダロオ-2
+デショオ-2
+ダソオ-2
+カラ○-2 ○が増えても核位置はラ
+ダケ○-2 またはc-2 ○が増えても核位置はケ4拍以上の語 上記の語の連続とみなす。
特殊なもの
+ゴトc (もろともにの意)
+ゴトニc-3
+バカリノc-3
+ダラケc-3
+アタリc-3
+ドコロ○c-4 または-4
+ソオc-2 (ただし/F0に付くときは0 シンパイソオ)
+ソオダc-3(ただし/F0に付くときは-1)
+ソオナc-3 (ただし/F0に付くときは0)
+ソオデスc-4(ただし/F0に付くときは-2)動詞 (/の後にVおよびa式b式の別、原形の場合は原形、語形変化している場合は語幹相当部と[ ]内に変化形名を表記する。原形と語幹相当部は省略可。核があるときは位置を-で指定する。ないときは0または無記。)
原形
/Va-2
/Va-~3
/Va-~1
/Vb
/V (a,bを問わないとき)/Va[テ]-3 ※1
/Va[タ]-3 ※1
/Va[テル]-4 ※1
/Va[タラ]-4 ※1
/Va[タリ]-4 ※1
/Va[テタ]-4 ※1
/Va[テ○]-4 ※1
/Va[チャ]-3 ※1
/Va[中止]-2 ※1 ヨミ ナゲ など
/{+オ/V[連用]} 0 (〜ニナル、〜スル、〜クダサイ オは接頭辞)
/V[マス]-2
/V[マシタ]-3
/V[マセン]-2
/V[マショオ]-2
/Va[ナガラ]-3 または0
/V[ツツ]-2
/V[ナサイ]-2
/V[ナ]-1 (軽い命令。禁止は付属語参照。)
/Va[ソオ]-2 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Va[ソオダ]-3 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Va[ソオデス]-4 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Va[ソオナ]-3 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Va[ソオニ]-3 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Va[ワ]-3/しない ※1
/Va[モ]-3/しない ※1
/Va[ニ]-3/行く ※1
/Va[タイ]-2
/V[タイ○]-3
/Va[タク]-2
/V[タクテ]-3
/V[タクテ○]-4
/V[タカッタ]-4
/V[タケレバ]-4
/V[タガル]-2
/Va[ナイ]-3 ※2
/Va[ナイデ]-4 ※2
/Va[ナイ○]-4 ※2
/Va[ヌ]-2
/Va[ズ]-2
/Va[ズニ]-3
/Va[ナカッタ]-5
/Va[ナケレバ]-5
/Va[ナクテ]-4
/Va[ナクテ○]-5
/Va[ネバ]-3
/Va[ナキャ]-3
/Va[セル]-2
/Va[サセル]-2
/Va[レル]-2
/Va[ラレル]-2
/V[意向]-2 ヨモオ ナゲヨオ
/Va[バ]-3 ※1
/Va[レバ]-3 ※1
/Va[ド]-3 ※1
/Va[レド]-3 ※1
/Va[可能]-2 ヨメル ナゲラレル
/V[マイ]-2
/Va[命令]-2 ※1 ヨメ ナゲロ規則:核の指定数字が語の拍数より大きくても/を越えて遡らない。 あれ見て /Fアレ0/Vaミ[テ]-3~2
※1 原形が/Va-~3である場合は核が1拍前へ移動する。 帰って /Vaカエッ[テ]-3~4
※2 核が「ラ」の音便「ン」に当たる場合は1拍前に移動する。 分んない /Vaワカン[ナイ]-3~4
/Vb[テ]
/Vb[タ]
/Vb[テル]
/Vb[タラ]-2
/Vb[タリ]-2
/Vb[テタ]-2
/Vb[テ○]-2
/Vb[チャ]-1
/Vb[中止] ナキ アゲ
/{+オ/V[連用]} 0 (〜ニナル、〜スル、〜クダサイ オは接頭辞)
/V[マス]-2
/V[マシタ]-3
/V[マセン]-2
/V[マショオ]-2
/Vb[ナガラ] 0 または-3
/V[ツツ]-2
/V[ナサイ]-2
/V[ナ]-1 (軽い命令。禁止は付属語参照。)
/Vb[ソオ] (推量。伝聞は付属語参照。)
/Vb[ソオダ]-1 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Vb[ソオデス]-2 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Vb[ソオナ] (推量。伝聞は付属語参照。)
/Vb[ソオニ] (推量。伝聞は付属語参照。)
/Vb[ワ]-2/しない
/Vb[モ]-2/しない
/Vb[ニ]/行く
/Vb[タイ]
/V[タイ○]-3
/Vb[タク]
/V[タクテ]-3
/V[タクテ○]-4
/V[タカッタ]-4
/V[タケレバ]-4
/V[タガル]-2
/Vb[ナイ]
/Vb[ナイデ]-3
/Vb[ナイ○]-3
/Vb[ヌ]
/Vb[ズ]
/Vb[ズニ]
/Vb[ナカッタ]-4
/Vb[ナケレバ]-4
/Vb[ナクテ]-3
/Vb[ナクテ○]-4
/Vb[ネバ]-2
/Vb[ナキャ]-2
/Vb[セル]
/Vb[サセル]
/Vb[レル]
/Vb[ラレル]
/V[意向]-2 ナコオ アゲヨオ
/Vb[意向]-2+ト または+トc
/Vb[バ]-2
/Vb[レバ]-2
/Vb[ド]-2
/Vb[レド]-2
/Vb[可能] ナケル アゲラレル
/V[マイ]-2
/Vb[命令]-1 ナケ アゲロ形容詞 (/の後にAおよびa式b式の別、原形の場合は原形、語形変化している場合は語幹相当部と[ ]内に変化形名を表記する。原形と語幹相当部は省略可。核があるときは位置を-で指定する。ないときは0または無記。)
原形
/Aa-2
/Ab 0 (断定の述語として下向きイントネーションが加わったときは -2 と同様となる。)
/A (a,bを問わないとき)変化形
/Aa[ク]-3
/Aa[クテ]-4 または-3
/Aa[カッタ]-5 または-4
/Aa[ケレバ]-5 または-4
/Aa[ソオ]-2 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Aa[ソオダ]-3 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Aa[ソオナ]-3 (推量。伝聞は付属語参照。)
/A[カロオ]-2規則:核の指定数字が語の拍数より大きくても/を越えて遡らない。 映画良かった /Nエーガ0/Aaヨ[カッタ]-5~4
/Ab[ク]
/Ab[クテ]-3
/Ab[カッタ]-4
/Ab[ケレバ]-4
/Ab[ソオ] (推量。伝聞は付属語参照。)
/Ab[ソオダ]-1 (推量。伝聞は付属語参照。)
/Ab[ソオナ] (推量。伝聞は付属語参照。)
/A[カロオ]-2動詞・形容詞およびその変化形に付く付属語 (+の後に形態(発音)を表記する。核があるときは位置を-で指定する。ないときは0または無記。)
+ネ
+ナ (推量、詠嘆)
+マデ-2
+マデ○-3
+ソオ-2 (伝聞。推量は動詞・形容詞の変化形参照。)
+ソオ○-3 (伝聞。推量は動詞・形容詞の変化形参照。)
+ヨオ-2
+ヨオ○-3
+トキ-2
+べキ-2 またはc-2
+マイc-2
+シカ-2~3
+ゴトキ-3
+ゴトシ-3
+ラシク-3 またはc-3
+グライ-3 またはc-3
+グライ○-4 またはc-4
+ドコロ-3 またはc-3
+ドコロ○-4 またはc-4
+ナ-2 (禁止)
+カ-2 ※3
+カ○-3 ※3
+ガ-2 ※3
+サ-2 ※3
+シ-2 ※3
+ャ-2
+ノ-2 ※3
+ノ○-3 ※3
+ン-2 ※3
+ン○-3 ※3
+カラ-3 ※3
+カラ○-4 ※3
+ナラ-3 ※3
+ニワ-3 ※3
+ナド-3 ※3
+デス-3 ※3
+ッテ-3 ※3
+ケレド-4 ※3
+カシラ-4 ※3
+ダロオ-4 ※3
+デショオ-4 ※3
+ヨ 0 または-2 ※3
+ゾ 0 または-2 ※3
+ト 0 または-2 ※3
+ダケ 0 またはc0
+ダケ○-2 またはc-2
+ラシイ-2 またはc-2規則:核の指定数字が拍数より大きい場合は+を越えて遡る。 するから /Vbスル0+カラ-3
※3 核が /Vb[ナイ],/Vb[タイ],/Ab の語末の「イ」に当たる場合は1拍前に移動する。 知らないから /Vbシラ[ナイ]0+カラ-3~4
2.文節のアクセント
文節のアクセントは自立語のアクセントに付属語のアクセントが加わったものである。
名詞文節のアクセントは一般に規則Nα+付属語β→{N+付属語}(α-付属語の拍数)andβ
(α,βは核位置を示す0または負の整数。ただしα=0のとき(α-付属語の拍数)=0とする。以下同じ。)
で与えられる。この過程を簡潔に
/Nα+付属語β
と表記する。
例 アナタ-2+ダカラ-3→{アナタダカラ}-5and-3 を
/アナタ-2+ダカラ-3 と表記する。
動詞(形容詞)文節ではまず自立部が
V(A)x→変化形α
(xはa式・b式の別)
で与えられ、文節は一般に
変化形α+付属語β→{変化形+付属語}(α-付属語の拍数)andβ
で与えられる。これらの過程を簡潔に
/V(A)x[変化形名]α+付属語β
と表記する。
例 Vbアゲル→アゲタ0、アゲタ0+カラ-3→{アゲタカラ}0and-3 を
/Vbアゲル[タ]0+カラ-3 と表記する。
複合語・派生語の構造表記について
例:「朝日新聞社行きの」
普通は
/アサヒシンブンシャ-3+イキc+ノ でよいが、分析の説明のためには{},~を使用して
{{{/アサヒ-3~0/シンブン0~-4}+シャc-2~3}+イキc}+ノ または
{{/アサヒ-3~0{/シンブン0+シャc-2~3}}+イキc}+ノ などと複合語構造、核変更過程を示すことができる。
/ :自立語(アクセント節の開始)
Va:起伏式動詞
Vb:平板式動詞
Aa:起伏式形容詞
Ab:平板式形容詞
[]:変化形名
N :普通名詞
F :その他の固定アクセント詞(形式名詞、形容動詞の語幹、副詞、連体詞、接続詞、感動詞、数詞、数詞+助数詞など)
+ :付属語、接辞、造語成分
- :核位置
or:両様あり
0 :核なし(0は省略可)
~ :核の移動・変更※ (~の前の数字は省略可)
c :+の前の核の消去
{}:語構造※ 核が「ン」・「ッ」・伸ばす音・連母音の後半・無声化した拍などに当たるため、また語の拍数過少・その他の理由で移動・変更されたことを示す。