Seed
〜 A Story of 'Miracle' 〜

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Scene.2 炎

 最初、それは夕暮れなのだと思った。
 久しく見ていない赤く焼けた夕暮れ。その光に少し似ていたから。
 けれど、その光はそんな優しいものではなくて。
 遠くで鳴り始めたサイレンが、彼女に全てを知らしめる。
 そこでようやく、その赤い光がある方向が日没とはまったく違う方向だと気付いた。
 …天を焦がすその赤光。離れていても、なお肌を炙(あぶ)る熱。
 彼女はそこで初めて、炎が人を殺せるものなのだと事実として理解した。
 危険だとは聞いていたし、それが人の命すら奪える事も知ってはいた。けれど、彼女はそれまで実際に火直接触れるような事がなかったから……。
 

 その日。
 その赤い光がなんであったのかを知った時、彼女はその笑顔を失った──。

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