住吉の長屋

 長居スタジアムを後に、西へ2キロ程と行くと住吉地区です。ここに、日本の現代住宅のなかで最も有名な住宅のひとつ、安藤忠雄設計の「住吉の長屋」があります。長居まで来たからには、ひと目見ておこうと、ギラギラとオレンジに輝く夕日に向かって歩きました。
 大阪の下町というイメージは何となく持っていたのですが、訪れてみると、まだ、いわゆる長屋がチラホラと残っていました。その狭い敷地割りが、この住宅の発想の基にあることが理解できました。そして実際にこの住宅の前に立ってみると、その低さが、隣接する建物との間に、スケールのギャップを生んでいるように感じました。というのは、この建物のスケールは、かつての長屋のものなのです。それが、建設時から30年を経て、周りの建物が高くなり、マンションなども混じるようになって、この建物がかつてのスケールを凍結しているように見えるのです。安藤さんのコンクリートが美しい表面をもっているのは有名ですが、ここでも全く古びることなく、まるで新築のように見えるのに、スケールだけがかつての長屋の時間の刻印を押されているような・・・そんな不思議さを感じてしまいました。 

下の写真は、周辺に残っていた長屋です。

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