この日、JR栗橋駅で初めてお施主さんとお会いし、車で現場に着きました。いろいろとお話を聞き、内外を見せていただき、敷地の周辺も見て回って、帰りに加須駅へと向かって歩き始めて振り返って撮った写真です。まっすぐな道の突き当たりが敷地で、この風景を変えることになるという気持ちが高まってきました。この写真は、建築のデザインを発想する原点になったものです。
ここの集落は、北側を屋敷森に守られた民家が南面し、東西に隣接して連なっています。加須は利根川の南岸に位置し、川筋の変化や氾濫による地形の変化を繰り返してきました。集落は、そんな川の営みで生じた帯状のわずかに高い土地に連なって発生してきたのです。利根川の河口から直線で120キロも離れているのに、標高は12メートルしかありません。関東平野は、北に行くにつれてだんだん高くなっているというイメージが、覆されました。そんな、ほとんどまったいらの土地なので、少しでも高い土地に、家々は寄り添って建てられました。それでも、いったん堤防が切れると、広範囲に洪水が発生してしまうので、古い家にはたいがい「水塚(みづか)」があり、その上に蔵を建てて大切なものを守っています。
|