邂逅と対立
#scene
捕虜収容所長ヨノイは俘虜の裁判でセリアズに出会う。
このBowieの初登場のシーンで描かれる邂逅にはヨノイが心理的にセリアズを自分の存在と同義の
或いはさらに高次元にある、理想的な姿として捕らえようとしているその発端が描かれているように思う。
超然とした俘虜セリアズの大胆な態度に対し、ヨノイは自らが自らに課している「死生観」を
仮託するかのように惹かれて行くのである。

#scene
ヨノイのセリアズに対する沈黙の期待。
衰弱状態にあるセリアズの回復のための看護を命じ、夜陰の病棟に自らセリアズの存在を確認しようとするヨノイ。
それを軍曹ハラと日本語の堪能な連絡将校ロレンスが目撃する。
そのシーンの前に、ハラとロレンスは互いに小さな食い違いを確認し合っている。
「国のために死ぬ覚悟。」「捕虜になるくらいなら自決する。」というハラの死生観と、
「捕虜になっても生存することは国家の利益に反しない。(恥ではない。)」というロレンスの合理的な論理。
当時、国家の姿勢に異常に同調した日本人の「覚悟」の正否が問われるのではない。
ここで描かれているのは戦時国家が個人にもたらした「作用」そのものなのである。
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