贖罪と犠牲
#scene
セリアズの立脚点は過去の弟との確執にあった。美しい歌声を持つ弟の崇敬と信頼を裏切った事への
罪悪感。その罪悪感から「戦争」に飛び込んだセリアズの視点は、最初から国家観的なものより、
むしろ遙かに個人的なものだった。
彼はどこにあっても自分自身を世界の中心に据えていた。自らを取り巻くその世界に向かって、
弟への贖罪を負った自ら自身として真摯に対峙し続けてきたのだ。
このセリアズという人物像は、もしかしたら「地球に落ちてきた男」の主人公と同じように、
Bowieが彼自身を仮託出来得る存在では無かったかと思う。Bowieの演ずるセリアズはその存在
だけで他を圧倒する個人として描かれているのだ。

美貌と言われていたBowieを大島渚監督のカメラはイメージより遙かにリアリティを以て撮影している。
美しいというよりは精悍に、超人的というよりはむしろ人間的に描いていると言える。
←04 06→