地球ゴルフ倶楽部 パー4
ヘローコース 13番


マイケル・ボナラックの叱責(しっせき)


 最近、あなたは他人から叱られたことがあるだろうか。
 上質の叱責は、なにものにも代え難い成長のための促進剤だが、哀しいかな、トシとともに本気で叱ってくれるありがたい人がいなくなって、いつしか進歩のない人間へと変質し果てる。そう、他人の叱咤(しった)から遠ざかるにつれ、人生の終着駅も近づくというわけだ。

 そこで手遅れになる前に、われわれ一同ガン首そろえて、アマの名選手マイケル・ボナラックに小気味良く叱られてみようじゃないか。

「きみのゴルフは、クラゲみたいなものだ。ぷかぷかしているだけで、どこにも緊張感というものがない。よくもそれでゴルファーをやってますと人に言えたものだ。単にゲームの上っ面をなでてるだけ、本気で学ぶ姿勢がどこにも見当たらない」

「はっきり言おう。きみのゴルフは目的をもたないがゆえに進歩もしない。次のゲームの予定が決まったところで、あわてて少しばかり練習して、それで終わりだ。己の進歩の乏しさを嘆く前に、まず一人前の人間らしく、はっきりした目的意識を持ちたまえよ。立派な大人は、例外なしに立派な目的意識を持っているものだ」

「いやしくもゴルフを始めたならば、たとえばこの1年で90を切る、3年以内にシングルハンディになる、クラブ選手権、アマチュアの競技会に出場する、なんでもいい、目標を高く掲げて、不退転の決意をもって真剣に練習と取り組むべきだ」

「すっかり聞き飽きて、もう二度と耳にしたくないゴルファーの言い訳がある。おそらくきみも、過去に何度か口走ったことがあるはずだ。”本当にゴルフはむずかしいよ”というセリフだ。腰を据え、寝食忘れて練習に打ち込んだ経験もないくせに、言うことだけは一人前。本当のむずかしさを体験した人は、魚屋がサカナ臭いと言わないように、むずかしいなどとは愚痴らないものだ。口に出す前に、むずかしさを克服する努力を続けるのが真のゴルファーというものだ」

「ルールとマナーを勉強したまえ。スコアを口にするのは、それからだ」

「調子いい日もあれば、まったくボールに当たらない日もある。きみの人格が問われるのは調子の悪い日だ。不機嫌、言い訳、八つ当たり、投げやり、そして自嘲的な態度。まわりの人間は、そんなきみにうんざりしている。二度と一緒にプレーしたくないと思い、きみを軽蔑している。ゴルフでは、自己中心的な行動を絶対に慎まなければいけない」

 たまには頭をゴツンとやられるのも勉強の内、エリを正そうではないか。これは、マイケル・ボナラックがハンスバリック校のゴルフ部に出向いたとき、甥の学生に対して話したその語録を「スポーツ・フィロソフィ」誌が掲載した一部である。

 さて、もし一介のアマチュアとしてゴルフの頂点を目指すならば、全英アマ選手権に出場し、世界各国からえりすぐられた名選手達を相手に、ぶっ通し9回のマッチプレーのすべてに勝利をおさめなければならない。まさに過酷なデスマッチではあるが、しかし勝者にはそれなりの見返りも用意されている。まず全英オープン、全米オープン、マスターズ、ワールドシリーズから招待状が送られてくる。さらに、プレーができるあいだは、自国のアマ代表チームの一員として対外試合に参加し続ける特権も与えられる。
 ゆうまでもないことだが、全英アマを制した瞬間、ボビー・ジョーンズ、ハロルド・ヒルトンといった伝説の人たちと肩を並べて、燦然たる銀製のトロフィーに自分の名前が永遠に刻まれることになる。

 マイケル・ボナラックは、1934年生まれ、過激な言葉とは裏腹に、いたって冷静なプレーぶりで知られているが、ゴルフの腕は半端じゃない。このすさまじい全英アマに1961年から5回も優勝、とくに1968年から70年にかけての3連勝は、アマゴルフ史に長く残る偉業である。・・・

・・・「なろうと思って、私は全英アマのチャンピオンになった。大事なのは目標だ。みなさんにも、もっと視線を上げてもらいたい。決して遅くはない、なにかになろうと決心し、目標を持って欲しいものだ」

「ゴルファーを笑え!」
夏坂 健著
1992年9月15日発行
新潮社より
「ゴルファーを笑え!」
夏坂 健著
1997.3.30発行
新潮文庫


13番ホール(パー4)あなたのスコアは、
・1日たりともクラブを握らない日はない(ほぼ毎日練習する)・・・3
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・週に一度は練習場に行く。・・・5
・プレーの2,3日前には練習場へ行く。・・・6

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