地球ゴルフ倶楽部 パー4
ヘローコース 3番

朱鷺(とき)色のミュアフィールドにて


・・・そのときだった。ミュアフィールドの上空に垂れ込めていた雲が不意に割れて、一条の鮮烈なレンブラント光線が差し込み、複雑な起伏が露呈されて息を呑む大パノラマに変身したのである。・・・ゆっくり歩きながら「バリー・バーン」の岸辺まで行くと、紅蓮から真紅に、真紅から朱鷺色に、朱鷺色から淡橙色に刻一刻と変わってゆくフォース湾の夕景色に見惚れ、立ちすくんだ。

・・・たとえば太古、ゴルフの創世記に立ち会った男たちは、これから行うゲームについて簡潔な申し合わせをした。「自分に有利なふる舞いはしない」「いかなる事態に遭遇しようとも、あるがままにゲームを続行すること」申し合わせは「掟(おきて)」であり、いのちを懸けて守るものである。当然のこと、信義に基づいて行動すれば審判など不要。「いや、審判を置かず、自己裁定でプレーするからこそ、このゲームは誇り高く、かつ興味尽きないのだ」創世記の男たちは、自己申告を大いなる誇りとした。他人は騙(だま)せても、自分は騙せないとする哲学に誰もが忠実だった。・・・


・・・1901年、いま私が立つミュアフィールドで行われた全英オープンに出場したジェームズ・ブレイドは、最終日の大事な局面、石垣の彼方にOBを打った。それでも臆することなくピンを攻め続けて、ようやく迎えた最終18番、ピンまでの距離約200ヤード、多少のアゲンスト、ライも申し分ない状態で珍事が発生する。ウッドの3番を手にした彼は、長身を利して鋭く打ち抜いた。次の瞬間「バキッ!」と不気味な音が響いてシャフトが真っ二つ、ヘッドだけがクラブハウスの方向に飛び去った。「ボールはどこだ?」彼の問いに、ライバルのハリー・バードンが答えた。「大丈夫。いまグリーンに向かって飛んでいるところさ。おや、ピンから5ヤードのあたりに着地したぜ。これでどうやらお前さんの勝ちだね」

 それから46年経過した1947年、再びミュアフィールドに招かれた彼は、すでに銀髪の老人だった。思い出深い18番グリーンの横に立って、彼は、感慨深く呟いた。「長い人生の中で、私が最も幸せに思うのは偉大なるゴルフと出会ったこと。唯一自慢できるのはゲームで欺瞞を犯さなかったこと。私は弱い人間だが、いつの場合も13カ条の中の不滅の一文が、くじけそうな気持ちを支えてくれた」不意に彼は、流れて行く雲に向かって朗々たる声を張り上げた。「Must be played where it lies! 」(あるがままにプレーしなければならない!)

・・・いつしかコース全体に冷気が忍び寄り、朱鷺色のフィナーレも早や終宴に近い。クラブハウスの窓には友人の哄笑するシルエットが影絵の如く映り、胸が痛いほど満ち足りた私は、最高の日を酒と友情で仕上げるため、一歩ずつ階段を上がっていった。


風に吹かれて7 夏坂 健 「Choice vol.100 1997.9」ゴルフダイジェスト社より

「ゴルフの風に吹かれて」新潮社
2000年11月20日発行 ニュース・トピックスへ







規則13-1 球はあるがままの状態でプレー
  規則に別の規定がある場合を除き、球はあるがままの状態でプレーしなければならない。
  本条の違反はストロークプレーでは 2罰打。

3番ホール(パー4)あなたのスコアは、
・ゴルフを始めた時から、ノータッチがあたりまえとしてプレーしている・・・3
・ビギナーの頃は動かしたこともあったが、今はノータッチでプレー・・・4
・ローカル・ルールで6インチ(キ)・プレースがあれば動かしている・・・5
・ルールに関係なく動かしている・・・6


トップページに戻る。
スタートハウスに戻る。
2番ホールに戻る。
4番ホールに行く。