地球ゴルフ倶楽部 パー3
ヘローコース 7番


和製ゴルフ用語を嗤(わら)え!ーその1


・・・「わたしの父、トーマス・バルフォア教授のゴルフ熱ときたら尋常ならず、用語の起源を求めてオランダ、フランス、デンマークをはじめ、ケルト語圏内のあらましに足を延ばす熱中ぶり。やがて用語にまつわる小冊子まで出版したが、多少気がひけたと見えて本名は使わず、トーマス・フィールドというペンネームで発表した」

・・・ペンネームによって書かれた「ゴルフ用語」の冒頭、教授は次のように述べている。「いかなる理由があろうとも、ゴルフ用語だけは勝手に変更してはならない。言語は神聖なる伝統であり、精神を伝える唯一の手段でもあるのだから」
 ・・・たとえ意味不明であっても、それは先祖伝来の大切な用語、謙虚に敬う気風が強く、何があろうと絶対にいじり回すことだけはしなかった。

かってのスコットランドは四面敵に囲まれ戦火が絶えなかった。やがてゴルフは宿敵イングランドにも広くもたらされたが、たとえ憎っくき敵国のゲームであっても古くからの伝統に敬意を払い規則はもとより用語のひとつさえも大事に扱ってみだりに変えることはしなかった。おそらく500年間というもの、だれひとりとしてゴルフ用語に手は触れていないはずだ。このゲームの由来と精神を知るほどに「禁忌」(タブー)を守ることがゴルファーの誇りでもあった。

ところが、最も伝統に敬意を払ってきたはずの日本で、あろうことか「禁忌」が破られたのである。宿敵イングランドさえ敬意を払ってきた文化遺産が、なんと日本で無惨にも破壊されてしまったのだ。
 たとえば「ミドルホール」がその代表的存在といえる。NHKも3大新聞も、ゴルフの専門家といわれる人たちまでが臆面もなく「ミドルホール」と連呼する。アメリカ人も多くの用語に冒涜(ぼうとく)を加えてきた人種だが、その彼らにしていぶかしげに、「それは、どんなホールなのか?」と尋ねるのだ。

 もちろんイギリスにもこうした言葉は見当らず、従ってルールブックにも存在しない。正しくは2打で乗せること可能であり、2打で届くはずという意味も込めて「ツーショットホール」、または「ツーショッター」という。あるいは正確に「パー4のホール」と呼ぶべきである。
 あまりにみっともないので、ゴルフ中継のアナウンサーに注意したことがある。すると次回の放送で彼はこう言った。「さて、いよいよ問題のミーディアムホールにやって来ました」
 事態はさらに悪化したのである。ロングホール、ショートホールは正しい用語だ。せめて本書をお読みの皆さんだけは、きょうから「パー4のホール」と呼ぼうではないか。

「王者のゴルフ」夏坂 健
1996年1月1日発行
日本ヴォーグ&スポーツマガジン社
より


7番ホール(パー3)あなたのスコアは
・今まで一度もミドルホールという言い方をしたことはない・・・2
・きょうからはパー4に改める・・・3
・気にせずミドルホールと言う・・・4

トップページに戻る。
クラブハウスに戻る。
6番ホールに戻る。
8番ホールに進む。