「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2020年09月09日


「夜想曲」カズオ・イシグロ

担当(杉田)

 面白い小説は何かと迷った? 選んだのはカズオ・イシグロの「夜想曲」だった。

 カズオ・イシグロはチェーホフを尊敬しており、この小説も落ちなどはなく、チェーホフ流だ。しかし、この小説は掘り下げのきいた登場人物を取り合わせ、ユーモアと喜劇で、洒落た話に仕上げている。

 前回の読書会はサマーセット・モームで盛り上がった。皮肉屋のモームはこの作品をどう評価するだろう。モームはチェーホフを評して、「優れた作家ではあるが、人物造形があまく、暗い話で、洒落た物語は書けない」と批判した。当時の英国でも、チェーホフ人気が高く、モームは気にいらなかった。

 実は課題として、チェーホフの「谷間」を取り上げたいとも思っていた。谷間の村の人間たちの不思議な世界は悲劇に満ちているが魅力に溢れている。

 さて、夜想曲であるが、妻に逃げられ気落ちする青年を、人生はまだこれからだよ、と応援する小説でもある。

 軽蔑していたセレブに「人生は一人の人間を愛することより大きい」と勇気づけられ、青年は感心し、頼ろうと期待する。最後まで、ユーモアと喜劇で、人生の憂愁を奏でる。

 カズオ・イシグロはこの作品を完成させたとき、自分の才能に自信を持ったと思う。村上春樹に言及する人もおられた。二人とも才能に溢れている。才能は皆が味わうもの、次回作が待ち遠しい。

 読書会では、原文で読まれた方、短篇小説の作り方の典型としてとらえた方がおられ大変参考になった。通じて、面白さが、実は何層にも連なっていることを知り、読書会の醍醐味を感じた事を感謝いたします。

ウェブ読書会参加者;清水、石野、藤本、山口、成合、和田、川島
リアル読書会参加者;浅田、金田、篠田、遠藤、山下、杉田
リアル読書会見学者;小沢、河村、中根

以上 杉田 記

「掲示板」に書き込まれた内容

◆次回の予定;
  日 時; 10月 5日(土)
      「掲示板」上で行います。
  テーマ;ゴーゴリ作「外套」
  担当者;川島さん

  なお、金子さんの自費出版本「負けるが勝ち MAID IN JAPAN」
  についての感想も書き込んで貰えれば嬉しいです。

(文学横浜の会)


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