「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2022年09月05日更新


「お伽草子」太宰治 岩波文庫 他

担当者 森山

「掲示板」に書き込まれた内容

1.選んだ理由

 10年ほど前に読んで、なんて面白いんだと思った。簡素な昔話のパロディながら、人の暮らしにある悲喜こもごもが、力強くあたたかい。元のはなしの道徳観や人物像ががらりと変わっているのに、口承文学の聞いて心地よい文体のリズムというか語感が、きちんと活かされていることに感嘆 しました(特にセリフに)。この作品について、見識深く、感性豊かな皆さんの意見をいただき語り合いたいと選書した次第です。

2.お聞きしたいこと


  @少し、ピントのずれた質問ですが、教えてください。
  みなさんはこの4つの昔話「瘤取り爺」「浦島太郎」「かちかち山」「舌切り雀」のもともとのお話をちゃんと知っていましたか? また、子どものころ、だれか大人に読んだり、話したりしてもらった経験はありますか? ご自分のお子さんやお孫さんに話したり読んであげたりしましか?  Aテーマなく、自由な感想をお願いします。

3.作者について 略歴等(Wikipedia他より)

  1909      青森県北津軽郡(現 五所川原市)に生まれる
          父 源右衛門は貴族院議員 11人子女の10番目。
  1925 16歳〜  同人誌などに小説、エッセイなどを発表
  1930 21歳   東京帝大 仏文科入学
           井伏鱒二に弟子入り(?)
  1933 24歳    初めて太宰治の筆名で「列車」を発表
  1935 26歳   「逆行」が第一回芥川賞次席となる
  1939 30歳   石原美知子と結婚 井伏鱒二宅にて挙式
      〜   「女生徒」「富嶽百景」「走れメロス」など優れた短編を発表
  1945 36歳   「お伽草紙」筑摩書房より刊行
  1947 38歳   「斜陽」新潮社がベストセラーとなる。
  1948 39歳   玉川上水で愛人山崎富栄とともに入水 
          当時の警察の発表では自殺 心中となっているが定かではない。

39年の生涯において、左翼活動、4度の自殺未遂、4人の女性(芸者 小山初代、妻 石原美知子歌人 太田静子、美容師 山崎富栄)とのかかわり等々。入退院、薬物中毒を繰り返した。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。

4.作品について

「お伽草紙」は前書きからもわかるように第二次世界大戦末期、空襲止まぬ最中に執筆されたもの。
他に 走れメロス 津軽 人間失格 斜陽など60編余の作品を残した。

お伽草紙/太宰治 読書会報告

読書会での意見・感想

 掲示板にないものを主としてまとめます。
 作品「お伽草紙」についての意見もさることながら、他の作品や交流のあった作家たちの遺した言、作品から見えてくる太宰治という人物像への思いや意見も多々あった。
 最晩年の「人間失格」「斜陽」が代表作というのは先入観で、戦時中に書かれた「御伽草子」はじめ「富嶽百景」「新釈諸国噺」などが本来の作品ではないか。このころのものが最も円熟味を増し、力みのぬけた作品で代表作といえるものではないか。
 併載されている「新釈諸国噺」が秀逸。西鶴に傾倒していたとはいえ、西鶴をこれほどわかりやすく書いたものはない。
 担当がレジュメにまとめた「典型的な自己破滅型の私小説作家」という定義には疑問がある。
 本歌取りの技巧(?)で面白い作品になっている。
 太宰のような文章を書きたいと思う。
 作家としての覚悟を感じる
 随所に、太宰の人生観、女性観がみえてくる
 「瘤取り」宇治拾遺物語にある人間の闇、恐怖というものが消されている。鬼をこのようにおもしろくしていいのか疑問

 問いについて

 子ども時代に、祖父母、両親などから聞かせてもらったという方は3名ほどで少なかった。テレビやレコードからの記憶が残っている方の方が多い。大人になって読み聞かせたという方も少数。
 子どもにとって脈々と語り継がれてきた民話を、肉親の肉声で直に話してもらうのは、何物にも代えがたい幸せな時間だと思います。それは、世界中の子どもの権利であり、それぞれの民族の物語を話して聞かせるのは大人の義務と思っています。どんなにそれに代わる便利なメディアがあっても、家族の中で物語を共有し楽しむ時間はなくしてはいけないものと思っています。

まとめ

 それぞれの読書歴、見識から広く深い意見感想をたくさん投稿いただきありがとうございました。素晴らしい作品に出合えた、読み直して、再読して改めて、作品のすごさを感じた…等の感想がとても嬉しくとりあげてよかったとホッと安心しました。
 会員も増え、読書会の参加者も多くなりました。一人一人が順番に感想を述べていくという進行方法は限界に近くなっていると思いました。意見交換や、まとめの時間があった方が、より充実した会になるのではと思います。

以上 森山 記

 ・出席者(リアル)順不同、敬称略
  阿王、荒井、遠藤、金田、河野、山下憲(上条)、藤原、寺村(港)、野田(十河)、鶴見(山口)
、   清水(いまほり)、佐藤(石野)、中根(保坂)、森山(大倉)、中谷、武内(原)、*高木

 注;高木さんは見学に来られた方です。
 ・「掲示板」からの参加(敬称略)09/04現在
  遠藤、中谷、藤原、清水、寺村(港)、鶴見(山口)、荒井、石野(佐藤ル)、森山、十河(野田)、金田、成合、阿王、林

◆10月の読書会
   日 時:10月 1日(土)17時〜
   場 所:神奈川県民センター内、会議室
   テーマ:「十二月の窓辺(『ポトスライムの舟』収録)津村紀久子:講談社文庫
   担当者;成合さん

(文学横浜の会)


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