「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2023年12月10日更新


「夜と霧の隅で」、北杜夫

担当者 中川(野守)

「掲示板」に書き込まれた内容

<はじめに>

 作品の時代背景や作者について、ここでは説明いたしません。先入観のない白紙の状態で作品を鑑賞いただき、その上で質問にお答えください。回答は任意です。回答したい質問だけ回答してください。

<Q1> この病院には治療にあたる医師が4人います。
(1)ケルセンブロック、(2) ラードルフ、(3) ヴァイぜ、(4) ゼッツラーです。
 あなたがこの病院の医師なら、誰に近い行動をしますか。
 よろしければ、回答した理由を教えてください。

あなたはケルセンブロックの行動を肯定しますか、肯定しませんか。一つ選んでください。「わからない」「どちらでもない」の選択肢はありません。
(1) 肯定する (「肯定する」、「どちらかといえば肯定する」、「わからないと答えたいが選択肢がないので肯定する」)
(2) 肯定しない(「肯定しない」、「どちらかといえば肯定しない」、「わからないと答えたいが選択肢がないので肯定しない」)

 よろしければ回答を選んだ理由を教えてください。

読書が好きな人として『読み手』の立場で感想、批評などがあれば、書いてください。

文横などで発表する人として『書き手』としての立場で感想、批評などがあれば、書いてください。

 この作品について、何でもご自由に書いてください。

 それでは皆さん、読書会でお会いしましょう。楽しみに待っています。

<12月読書会 まとめ>

(1)作品の概要:第二次世界大戦中の南ドイツの州立精神病院に、ナチス政権から、不治患者を病院から移送する旨の通告があった。これが安死術を指すことは暗黙の常識だった。四人の医師は「不治患者を治療する」という矛盾した命題に、それぞれ違った方法で立ち向かうことになる。医師の苦悩と葛藤を描いた作品。
担当者から会員への質問はからまでの4問。回答は「12月読書会資料(配布用)」(添付)に示す。

(2)高島の作中での役割(事前に寄せられた回答、読書会での発言から)
サブプロットとして登場する日本人「高島」の意味合いについては、「日本人を登場されることで親近感を持って読める」「身近と感じるより違和感がある」の正反対の意見が見られた。作品では描かれていなかった高島の物語、特に妻アンナとの結婚の経緯、発症と自殺の理由は、説明されないまま残されている。

(3)作品から得られた考え、思い(事前に寄せられた回答、読書会での発言から)
ホロコーストが精神病患者にまで行われていたことを知ってショックを受けた。戦争・独裁政権のウクライナ、ガザ地区、ミャンマー等における悲惨な現状と照らして、現代に繋がる人類の課題と感じた。患者としては、苦痛が大きく効果の不明確な治療を受けるより、安死術の方がましだろう。優生思想、マイノリティについての考えは軽んじられない。医師でないので、読んでいて感情移入できない。医師の読後感を聞きたい。人間の精神は、時代によって上下しながらも、変わっていない。現代医学でもありそう。

(4)作品の構成についての評価(事前に寄せられた回答、読書会での発言から)
高い文章力を持った作家。精神科医の強みとドイツ語能力を活かした作品。AIが進化したら書きそうな作品。医学の専門的な記述は理解できない。場面転換が多く、読みづらい。

(5)現代日本への問いかけ(事前に寄せられた回答、読書会での発言から)
「旧優生保護法による不妊手術(断種)」「津久井やまゆり園事件」など障害者、マイノリティへの差別についての警鐘。いろいろ考えさせられる。この作品はリアルに人を傷つけないように描かれ、作家の節度に感服する。自分も、創作に際してはこういう態度を取りたい。

(6)参加者から言及された参考図書、映画(事前に寄せられた回答、読書会での発言から)
「夜と霧(フランクル)」「楡家の人びと(北杜夫)」「レナードの朝(映画)」「アンネの日記(映画)」「白バラの祈り(映画)」:「ひかりごけ(武田泰淳)」
 おわりに、担当者から
多くの回答者・参加者の多様なご意見を読ませて、あるいは聞かせていただき、今後の人生に生かせそうな「気づき」が、いろいろ得られました。感謝しています。皆さんの心にもなんらかの「気づき」を残すことができていれば、担当者として望外の喜びです。
みなさん、ありがとうございました。
配布資料

以上、野守


◆12月読書会
 ・日 時;12月 2日(土)17時〜19時
 ・場 所;神奈川県民センター内、1502会議室 (リアル)
 ・テーマ;「夜と霧の隅で」 (「夜と霧の隅で」北杜夫著 所収 新潮文庫)
   担当者:中川さん
 ・出席者(リアル)順不同、敬称略
  遠藤、金田、篠田、寺村(港)、藤原(上終)、河野 野田(十河)、中川(野守)、酒井(里井)、
  鶴見(山口)、清水(いまほり)、佐藤ル(石野)、中根(保坂)、森山(大倉)、阿王(克己)、

 ・「掲示板」からの参加(敬称略)12/3現在
  克己、池内、上終、港、里井、十河、成合、金田、和田、石野、森山 

◆ 1月の読書会
   日 時: 1月13日(土)17時〜19時
   場 所:神奈川県民センター内、会議室
   テーマ:「舞姫」川端康成 新潮文庫、角川文庫、等)
   担当者:福島さん

(文学横浜の会)


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