「文学横浜の会」

 読書会

評論等の堅苦しい内容ではありません。
小説好きが集まって、感想等を言い合ったのを担当者がまとめたものです。

これまでの読書会

2024年 1月18日更新


「舞姫」、川端康成

担当者 福島(由宇)

「掲示板」に書き込まれた内容

=本書を選んだ理由

 ◆クラシックバレエが好きで、よく見に行きます。  実はペンネーム(由宇)も、とあるバレリ―ナ名に由来しております。

 バレエを表現している文豪ということで知り、本作とめぐり合いま  した。

 新潮文庫では本書解説を三島由紀夫が書いています。短いですが、本質が見事に解説  されており、これだけ読んでも、感想文が書けてしまうくらいの秀逸な摘要になってい  ます。三島と川端の禁断の死とエロティシズムに私は思いを馳せながら解説を読みました。  ぜひ併せてお読みいただければ、と思います。

=皆さまにおききしたいこと

 ◆「芸術と生活」 「美と現実」 もしくは 「経済優位性と文学表現優位性」等、なんでもいいのですが、リアルの壁と一見は対立する軸におかれる芸術や美といったもの・・・。

 ◆それらは、生きるための幻想、悪く言えば必要悪としての役割しかないのでしょうか?   

 私は、本作を「家族という現実」軸とバレエに象徴される芸術、恋愛、エロスなどの軸が葛藤しあいながら、アンニュイ(透明怠惰感)な表現で言語化されていると感じました。

 「嫉妬、嫌悪」といったリアルな感情が表出されながらも、作品として「品(美)」は保っているように感じます。

 私の読み方への指導も含めまして、皆さまの自由なご意見を拝聴したいと存じます。

=ご参考 川端はバレエ(舞踏)について次にように語っています

 ◆遠い古を思つても、人間は歌ふよりも、描くよりも、先づ踊つたにちがひない。
人々は種々の生活の条件に縛られて、美しく動くことを妨げられ、また忘れさ せられてゐるが、肉体はかく美しく表情し運動し得るものである限りを、創造し啓示するのが舞踊であるから、また情熱の溢れ出る姿が舞踊であるから、舞踊家は生命の精髄を直接に現すものと云へるだらう。
                1936年3月

≪まとめ≫

みなさま、ご感想いただき、また読書会(舞姫)会、参画いただきありがとうございました。

愚幹事にもかかわらず、たくさんのご意見、ご指導に感謝いたします。 下記に僭越ながら舞姫(読書)会を総括させていただきます。

◆実に様々様な視点の存在を紹介いただきありがとうございました。
 ・家族崩壊の系譜
 ・戦後のエポック逸話
 ・新聞連載としての役割
 ・川端の女性像論
 ・バレエ劇「白鳥の湖」が想起される。果たしてベースとなりえているのか
 ・三島の解説は、(三島の)他の文調と比しても、秀逸とはいいがたい
 ・八木は醜悪の象徴ではなく、行動力があり、潔く、たくましいともいえないか
 ・谷崎らと並び、(川端は)耽美派といえるだろう
 など。(すべては書ききれませんでした、すみません)

 また幹事の問いかけ(美と現実の対比)についての疑問、不明、などの意見も聞け
 わかりにくかった段、おわびします。

 下記、答えになるとは思いませんが、聞きたかったことは下記の通りです。

 小説は行間で表現される とも言われます。

 行間に読者は何を感じるか?私は「舞姫」において、『日本人の品格』みたいなものを感じました。

 「粋」につながるものです。

 それは、バレエに象徴される美 と 嫉妬などの感情に代表される醜悪これらを対立、葛藤させなながら、

 朽ち果てそうな「美」  と  潔くひらきなおる「醜悪」

 どちらも、日本人的だろう!!!との行間を私は、感じ、品格が浮かびあがっているなあ、と感じました。
 構造的に描かれることとで、「日本人のしたたかな強さ、美しさ」みたいなものが浮かびあがっており秀逸な作品と考えたのです。

 で、そのコントラストについて論があれば、拝聴したかったものです。

 とても皆さまのご意見、ご感想、今後の読書活動に励みになりました。
 ありがとうございました。
 簡単ですが、まとめに変えさえていただきます。

以上、由宇(ふくしま)

◆1月読書会
  日 時: 1月13日(土)17時〜19時
  場 所:神奈川県民センター内、会議室
  テーマ:「舞姫」川端康成 新潮文庫、角川文庫、等)
  担当者:福島さん
  出席者:(リアル)
  遠藤、金田、篠田、寺村(港)、藤原(上終)、野田(十河)、中川(野守)、酒井(里井)、林、
  福島、中根(保坂)、森山(大倉)、岡井、

 ・「掲示板」からの参加(敬称略)1/13現在
  遠藤、池内、里井、上終、港、金田、十河、原、野守、森山、克己、

今後のスケジュール

(1)2月の読書会
   日 時: 2月3日(土)17時〜19時
   場 所:神奈川県民センター内、会議室
   テーマ:「みずうみ」シュトルム、新潮文庫、岩波文庫
   担当者:中根さん

(2)3月の読書会は 3月 2日(土)です。
   テーマ:「水車小屋攻撃」エミール・ゾラ、岩波文庫
   担当者:篠田さん
   <担当者より>
   短編集『水車小屋攻撃』(岩波文庫)の八編ある中の表題作となります。
   各種通販やオークションに出ていますが、手に入りにくい方は、岩波文庫なので、お手数ですが図書館でお借りすることをお勧め致します。

(文学横浜の会)


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