「・・・聖さま、痛いで・・・す」
え、痛い?まだ何もしていないのに・・・って違うか。
「あっ、ごめんね、力を入れすぎたか・・・」
祐巳の上に覆い被さる形を保ったまま、
私はあらん想いを込めて祐巳を抱きしめていた。
「嘘です、痛くはないですけど・・・苦しいです」
どうやら全体重を祐巳に預ける体勢になっていたらしく、
顔は笑っているけれど、苦しそうな表情を垣間見せている祐巳。
それを見て私は手を移動させ腕立てふせをするような体勢に変えた。
私の目の前に祐巳がいる。
私の祐巳・・・私だけの祐巳・・・愛してるよ・・・
見下ろす形で私は祐巳を見つめた。
もちろん、そんな私を祐巳も見つめ返してくれている。
これから始まるであろう行為に対する様々な感情が互いを行き来する。
(祐巳も初めてなんだろうけど・・・私もなんだよな・・・でもリードすべきだよね・・・)
まさか予め予行練習なんかできる類のモノでもないし、
かといって、これだけムードが盛り上がったのに、
上手くいかなくてしらけるのも嫌だ。・・・ううう、参ったな〜。
正直、こんな状況にもちこめるなんて考えていなかった。
はっきり言ってしまえば・・・その場の勢い。
なにより、祐巳がこの状況を望んでいたから、応えないわけにはいかなかった。
もちろん、私自身のせいでもある。
心のそこから湧き上がる熱きなにかに突き動かされ、
それこそ何も考えることなく動いたとも言えなくない。
・・・・・・・・・
やるしかない。
愛の営みは人間の本能なんだから、
例え同性であったとしても、学習しなくたって何とかなるだろう。
いや、してみせる!愛しい祐巳・・・イカせてあげるからね・・・
ほんのわずかな間の私の逡巡をしってかしらずか、
祐巳はゆっくりと両目を閉じていった。
どことなく緊張して力が入り気味だった体がリラックスしている。
(祐巳・・・)
両腕を曲げ、祐巳の額に軽くキスをする。
そのまま体を少し下げる形で唇を祐巳の唇の真上に持っていく。
心持ち左に顔を傾け、そのまま唇同士を密着させる。
啄ばむような仕草をすると、わずかに祐巳の上唇と下唇の間に隙間ができた。
その隙間にねじりこむような形で自分の舌を祐巳の口腔へと侵入させる。
(そういやディープキスとやらは初めてだな・・・)
祐巳との行為の真っ最中だけど、面白いもので、
体全体は熱いほどの興奮状態。
もちろん、精神的にもアドレナリン放出し放題。
・・・の割に落ち着いて考えられるだけの余裕がどこかにある。
客観的に自分の行為をとらえられる部分がどこかに残っているらしい。
例えば、今この瞬間、私の舌は祐巳のそれに触れてた。
目を閉じているから祐巳の表情はわからないけれど、
おそらくカチンカチンとまではいかないだろうが、
なにがどうなって今のこの状態になっているのかわからないようだ。
まったくの無反応。面白くはないけれど、祐巳らしいと心の中で苦笑する。
(自分から誘ってきたくせにね・・・ま、祐巳にリードされても困るけれど)
怖がっている訳ではないのはわかっているけれど、
さすがに体に力を入れている人を抱くのは襲っているようで嫌だな。
ん?待てよ・・・襲った方がいいのかしら??
祐巳の口の中を少しだけ遊歩しただけで、
すんなりと舌を抜き出した。
こら、祐巳、そんなに目をぱちくりしないの。
・・・まぁ、瞳を潤ませて私を見るよりはいいか。
そんな目で見られたら・・・本気で襲っちゃうものね。
私は安心させるために微笑むと、
もう一度腕を曲げ直し、祐巳の額に軽くキスをすると、
そのまま右の耳に口を持っていき囁いた。
「祐巳、逃げないと食べちゃうぞ」
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