〔14〕
「明…」
友華が私の腕の中にいる。
生まれたままの姿で私と、友華は互いの体温を感じあっていた。
待ち望んでいた…ハズだった。もっと動悸が高まり、興奮するかと思っていた。
が、実際は、そうなるのが自然なように、二人は流れるがごとく、ゆったりとしている。
お互いに、精神的な結びつきを求めるようになり、
肉体的な交わりは必要としていなかった。
…が、実際は、どこかで全てを愛したいという気持ちがあり、
いつか、その日を迎えることを暗黙の了解としていた。
そして、それはお互いが高校を卒業してからとなんとなく思っていた。
二人は女性専用のマンションの一室にいる。
私はここから電車で15分ほどの大学に通っている。
そして、今度、友華もここから同じ大学に通う。
彼女は、「教師」になることを希望し、
そして、私といることを、強く願い、ここにいる。
もちろん、部屋は別々なのだが。
今日の午前中、友華の引越しを手伝いに行くと、
ご両親が大きな荷物を運んでいた。
私の姿を認めると、運ぶ手を休め、
「明さん、あなたがここにいるので、私達も安心できます。
トモのこと、よろしくお願いします」
と、頭をさげられて頼まれてしまった。
「あっ、明、手伝いに来てくれたの?」
両手に、袋を提げながら、友華が現れた。
「こら、トモ。いきなりそれは失礼でしょう?」
「あっ、ごめんなさい。でも…そうでしょ?」
私は笑って、荷物を運ぶのを手伝い始めた。
最後に会ったのは、冬休み。それ以来である。
ちなみに友華は、ここに引越しが決まるまで、
大学のことは何も教えてくれなかったのだ。
『だって、驚かせたかったし、怒ると思ったし…』
電話で初めてその事実を聞いた時、私は、怒るよりあきれた。
「友華さ、別に友華が自分でそうするって決めたのなら、
私、別に反対しないよ。それに…嬉しいし、一緒なの」
『ホント?』
「そばにいてくれるんだよね」
『うん』
「待ってるよ」
そう話したのが、なんと、一ヶ月前。
まぁ、友華らしいと言えば、友華らしい。
引越業者が入ったので、大きなものは、運んでもらった。
私達は、こまごまとしたもののみを運び、
そして運びこんだ荷物を片付けていった。
午後の早い時間に、引越しはほぼ完了する。
そして、皆で私の部屋で、お茶をしながら休憩をし、
そのまま、一緒に外食をしに行く。
「トモ、明さんに迷惑かけないようにね。
明さんも、トモが何かしたら、遠慮なくしかってくださいね」
と友華のことを託され、二人での新しい生活がスタートした。
友華は、そのまま私の部屋に来ていた。
私も、それを望んだ。
おとずれていた「時」を受け入れる。
二人が望んでいた「時」を。
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