〔20〕

「明、今夜って初夜…なのかな?」
「そう思おうよ」
今まで何度も私に裸を見せているはずなのに、
どうやら、今夜は特別な日になるということからか、
私の部屋のベッドの上で、クッションを抱え、恥じらいを見せている。
そんな友華を愛しいと思いつつ、昼間の出来事を思い出していた。

私達は今日、学内にある礼拝堂で誓いをした。
もちろん、お互い同意の上でだ。
結婚ができない私達。「ならせめて…」と思い、
私は礼拝堂での誓いを思いついた。

春休みの間も、学内の中央に位置する礼拝堂は解放されていた。
友華の手を握り、走って大きな扉の前までたどり着くと、私達は無言のまま息を整えた。
そして、ゆっくりと、大きな木の扉を二人の手で開いていった。

そこは私達が訪れるのを知っていたかのように、誰もいなかった。
ステンドグラスを通って射しこむ光が作り出す幻想的な空間が私達を迎えてくれた。
とても静かではあったが、誰をも受け入れる、そんな印象を受けた。
二人きりの礼拝堂。そこで私達は、お互いを最愛のものであることを確かめあった。

そして夜を迎えた。友華は前夜と同じように、お風呂を自分の部屋で済ませると、
私の部屋にやってきた。目的はただ一つ。
長い、長い道のりだった。回り道もした。立ち止まることもあった。
それでも、お互い同じ線路の上を歩んでいこうと決めたのだ。

「…明」
「なに?」
私のほうを真剣に見つめる友華。
少し俯き、囁くような声で私に言ってきた。
「私ね、初めてなの…」
「?」
同じように真面目に友華の姿を見ていた私の視界の中で、
友華の姿が大きくなってくるのがわかった。

「ガバッ!」と、正面から私の体に抱きついてきた。
顔を互いの肩に乗せ、体に腕を回し、体温を確認しあう。
まだ濡れている髪の毛からは、友華のお気に入りのシャンプーの香りがする。
以前よりも大人になった体からは、友華の香りがしている。
少しの間、無言のまま愛しき存在を確かめ合うと、
再び顔を見合わせた。

ニッコリと友華は微笑むと、先の言葉を続けた。
「…だから優しくしてね!!」
「と、友華?」
いきなりそんなことを言われては、戸惑ってしまう。

「飯野先輩言ってたよ。明、初めてとは思えないくらい上手だったって」
「…」
「明って、経験豊富なの?」
「そ、そんなわけないでしょ!!」
真っ赤になってあせる私。思わず部屋の中ということを忘れ、大声をあげて叫んでしまった。
「し〜っ、明。いくらここの壁が厚くても、そんなに大声あげたら聞こえちゃうよ」
唇の前で一本指を立てると、「静かに!」と言われてしまった。

「ぼそぼそ…」
「えっ、な〜に?聞こえないよ」
大声をたててしまった恥ずかしさと、
事実を伝える恥ずかしさで、私の体は小さくなっている。
当然、話す声も、力なく、小さなものになる。

聞こえないと言われたら仕方がない。
口を友華の耳元に近づける。
「後にも、先にもイノだけなの…」
そう、あの部室での一件だけが、私の唯一の経験。
「じゃあ、もともとの素質が良いんだ」
「…」
恥ずかしさに頭の中が真っ白になってきた。
考えたことなかった…良し悪しなんて。

ただ、友華も恥ずかしさを隠す為に、
そんな話をしているということはわかった。
だって、体が少しこわばっているし、
震えが体から伝わってきている。
昨晩、お預けした形になってしまったから、
余計に緊張を増長させてしまったのだろう。…よし。

再び耳元に口をもっていくと、友華に囁いた。
「友華、私を好きにして」
言葉を聞くやいなや、顔を離し、私の顔を不思議そうに見つめる。
「明?」
「友華が私にしたいこと…愛したいようにしていいよ」
目の前にいる愛しき存在に、優しく微笑みかける。

「でも私、初めてだから上手にできないよ…」
「友華がしたいようにしてくれればいいの。
それできっと私は感じることができるから」
私からしてもらえると考えていたのか、
友華は明らかに戸惑いの色を見せている。

「私が先に友華に愛してもらいたいの。聞いてもらえる?私のお願い?」
「わかった…でも、本当にどうしていいかわからないよ」
「誰だって初めてのときがあるんだから、気にしないの」
「…じゃぁ、服を脱がさせて」

二人とも立ち上がる。
私の体から着ている物を全て友華の手によってはずされた。
友華の体からは、私が一枚一枚脱がせていった。
そして、お互いの全てをさらけ出すと、目を閉じ、唇を重ねていった。


次に進む 前に戻る 戻る トップに戻る