〔6〕
(なぜ、なぜ勝てなかった!)
体が震える。友華への裏切り。イノへの裏切り。
そして、自分自身への裏切り。
私は自分が犯してしまった罪の大きさを測りかね、
その恐怖に我が身を震わす。
そんな私を見て、イノの手が止まる。
「明、自分を責めないで。悪いのは全部私なの。あなたじゃない」
(ちがう…イノが悪いんじゃない)
上半身を持ち上げ、イノの手をつかむ。
「ちがう。私がいけないんだ。私が、私が、
自分の欲望に負けたから、イノに、イノに…」
涙が出てきた。私は自分に負けたのだ。
あれだけイノにも、友華にも、かっこのいいことを言っておきながら、
結局、自分が守れなかった。
(友華、許してなんて言えないよ…)
「明、いまさらだけど、私はもうわがまま言わないからね。
こうして、あなたとの思い出を私はもらえた。それで十分。
互いに傷ついたけれど、最後まで優しくしてもらえて嬉しかった。
あなたの愛は、友華ちゃんに渡して。私は今から、あなたの友達に
戻るから…。お願い、泣くのはやめて」
私の耳にイノの声は入ってこなかった。
ただ、自分が行ってしまった行為のために、
今まで築いてきた、自分というものが崩れていくのを感じた。
「私は、偽善者だ。私は優しくなんてない。私は、欲望の固まりだ。
愛するものを裏切ってこんなことをするなんて。
私には人を愛する資格なんてない」
「明、それは違う!」
「何が違う?私は友華に、欲望を抑えてくれって言った。
肉欲に、精神が追いつくまで待とうって。
…にもかかわらず、言った本人が守れなかった。
もう、友華に何も言う権利も、何を求める権利もない。
友華はこんな私を愛すはずがない!
私は友華を、愛することはできない!!
でてって。でていってよイノ。一人に…一人にして!!」
イノは私を一人にしたくない様子だったが、
一緒にいることで、私に負担をかけるだろうと、
静かにドアから出ていった。
しばらく、私は泣くことしかできなかった。
それでも何とか家に帰る。遅くなった私を心配して
母親が玄関まで出迎えるが、ほとんど倒れるように
玄関に座り込んだ私を見て、慌ててベッドに連れてゆく。
私はそのまま、熱をだし、結局、3日間学校を休んだ。
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