〔7〕
「明先輩、熱を出したと聞きましたけど、もう大丈夫ですか?」
友華が私の体を心配して電話をかけてきたのは、
休んだ3日目の夜だった。本当なら、出たくなかったのだが、
ほとんど熱は下がっていたし、親に心配をかけたくなかったので、
電話に出た。
「友華、明日、話がある」
「先輩、いきなりどうしたんです?」
「お昼休みに、部室で待ってる。来て」
「わかりました。お昼にですね。今夜はしっかり寝て、
体力つけてくださいよ!」
そういわれて、電話を切る。
(別れ話…しないと)
その日は何も考えたくなかったので、
ベッドに入り、無理矢理寝てしまった。
それでも、朝、早く起きてしまい、友華に、
どう話すべきか考えていた。
お昼休み。いつも一緒にお昼を食べているメンバーに、
用事があるといって、部室に向かう。私のほうが先かと思ったが、
友華はすでに、部室の前で待っていた。
私の姿を認めると、本当に嬉しそうな顔を見せた。
(その笑顔が好き…でも、もうその笑顔は…)
「明先輩、まだあんまり体調よくないんじゃないですか?」
これから話すことを考え、青ざめた顔をしている私を見て、
友華は、私の体を心配してくれた。
「大丈夫よ。それより、中に入って」
「はい」
そこはつい3日前にイノと関係を結んだ場所だった。
ここで話すのが一番、相応しい気がして、ここを選んだのだった。
友華を長いすに座らせる。私は立ったまま、話し始めた。
「友華、私はもうあなたを愛する資格を無くしてしまったの」
「えっ、先輩、どういうことですか?」
「私はもう、友華とは付き合えない。別れて欲しい」
「な、何を言っているんですか?悪い冗談はやめましょうよ」
「こんなことを冗談でいえない。私が本当に友華を愛せなくなったから」
「愛せない…って、どういうことですか!?」
「私は、ここで、イノと3日前に、肉体関係を持ったの」
「肉体関係…えっ!?」
「私はイノの体を求めた。イノも、私を受け入れてくれた」
「先輩、やめてください!」
「二人でお互いの体を愛し合って、ともに果てをみた」
「や、やめて。聞きたくない!」
両手で耳を覆う友華。すでに目からは涙がにじんでいる。
「聞いて!」
そういって、私は無理矢理、友華の手を耳から引き剥がす。
「私は、自分の欲望に負けたの。あなたに『時』が来るまでなんて、
かっこいい台詞を言っておきながら、言った本人が、
その時を待てなかった。友華以外の人を求めてしまった」
友華の顔は信じられないという表情をしていた。
「こんな感じに…」
私は、友華に強引にキスをする。それだけじゃない。
制服の上から、友華の胸を掴む。
「いや!!」
力の限り、私から逃げる友華。
その目に、怯えの色がうかがえる。
「私はこれだけの人間よ。
快楽のために誰かの体があればいいのよ。
友華、あなたじゃなくたってね…」
その台詞を聞いて、部室を飛び出そうとする友華。
腕をつかみ、外に出るのを阻止する。
「その真っ赤な目で外に行くつもり?
何があったかと他の人が思うでしょ?
私がでていく。それと、みんなが変に思うといけないから、
話し掛ける必要はないけど、部活にはでて。いいね」
それだけ言うと、さっさと部室からでる。
私は、この3日間で、涙を枯らした。
が、友華は、これからだ。一人にさせて、
思いっきり泣かせた方が、
踏ん切りがつくのが早くなるはず。
友華、あなたにだけ苦しい思いはさせない。
もう、誰も愛さない。それが、私があなたにできる謝罪の形…。
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