「真央、どうしたの?」
腕の中に奈津実を抱えながら、
市ノ瀬先輩と付き合い始めたきっかけを思い出していた。
市ノ瀬先輩に誘われた直後の奈津実の報告。
それは、私の忍耐の限界を越えてしまった。
・・・もしかしたら、先輩に何も言われていなければ、
私はいつも通り、振舞えたかもしれない。
が、私の頭の中には先輩の声が離れることはなかった。
「あなたは私を求める。必ず」
それがハッタリとわかっていたとしても、
私の足が自然と生徒会室に向かうのを止めるだけの
理由にはならなかった。
「・・・奈津実に悪いことをしたと思って」
「なぜ?悪いこと・・・したの?」
きょとんとしたような顔で私のほうをみている。
「気付いてあげられなかった」
背中に回した腕に、力をこめる。
「市ノ瀬先輩と付き合うきっかけって、私でしょ?」
気まずそうな小さな声。
「・・・・・・」
「だって、私が真央の気持ちをなんとなく察していたのに、
相談を持ちかけていたからじゃないの?」
顔を上に上げると、すがるような目で私を見る。
まるで、捨てられた子犬のような目・・・。
片手を奈津実の頭に載せると、軽くなでた。
「確かに、最初のきっかけは・・・奈津実の相談だったかもしれない。
でもね、市ノ瀬先輩と私、お互いに自分を保つ為に必要だったんだ」
「どういうこと?」
「先輩は私を必要とした。そして私も先輩を必要とした。
・・・恋人としてではなくてね」
まだ訳がわからず、そのまま私を見詰めている奈津実の
頭をもう一度、優しくなでると、力をこめて思いっきり抱きしめた。
「しっかりと話しておいた方がいいね。私と、市ノ瀬先輩の関係を・・・」
そう、私達は付き合うことにはなったが、
ある約束を交わしていたのだった。
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